第16話 木抗≪ぼっくい≫再燃

「火事のことが落ち着くまででいいから、私はあなたを頼りたい。私のことを受け入れてくれないかな」

 

 俺は返事の代わりに、勝手知ったる彼女の親指の付け根近くを押した。


「あっ」

 遥さんが体を震わせ、彼女を包むオーラがぱっと舞った。


 俺はすかさず彼女の手を取って、立ち上がった。

「ここではゆっくり話もできません。遥さんの部屋に行きませんか?」


 動き出したエレベーターで二人きりになると、俺は遥さんを抱きしめ、彼氏彼女だった頃のようなキスをした。彼女も、躊躇なくそれに応じてきた。


 鍵を開けるのももどかしく部屋に入ると、俺たちはベッドに直行した。

 彼女は、スラックスを下着ごと一気に足から引き抜くと、ベッドの外に放り投げた。 俺も彼女に倣い、下半身の衣服を脱ぎ捨てた。

 もはや二人に前技は不要だった。俺たちは、そのまま一つにつながった。


 七年ぶりの愛の交歓の後、冷静さを取り戻した遥さんが慌てた。


「今、そのまま出しちゃったよね。出来ちゃったらどうするのよ!」

「だって遥さん、もう36でしょ。早く子どもを作らないと、間に合わなくなっちゃいますよ」


 俺は下半身裸という間抜けな格好のまま、正座をして遥さんに向き合った。

「遥さん、結婚してください、そして俺の子ども、産んでください」


「だって、私、一回りも年上なんだよ」

「それは今に始まったことじゃないでしょ。付き合い始めた時もそうだったじゃないですか」


「おっぱいだって、ほら、垂れ始めちゃってるんだよ」

「それはそれでかわいいですよ」


 そういえば七年前の初めての時もこんな感じだったなと、懐かしくも可笑しくなってしまった。


 次々と自虐ネタを披露し、本心に反して結婚できない理由を列挙する遥さんの口を、俺はキスで塞いだ。

 長いキスの後、ようやく観念した様子の遥さんが、俺と同じ下半身丸出しの格好で三つ指を突いた。

「ふつつかものですが、よろしくお願いします」


「それじゃ、早速子作りの続き、しましょう」

「うん!」

 遥さんが服を脱ぎながら、俺に抱きついてきた。

 

 その夜、俺たちは、七年間の空白を埋めるように、何度も何度も愛し合った。





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