第8話たまねぎ

 やはり、たまねぎは主役を張るより脇役を演じた方が輝くと思う。私はバーベキューで炎にさらされてしゅうしゅう甘ったるいにおいを放つ輪切りより、どろどろに溶けている薄いのや、若干の食感を残して風味を生み出すのに全力を尽くすみじん切りの方が好感が持てるのである。つまるところ何が言いたいのかというと、今日の夕飯のシチューは美味かった。


 たまねぎといえば、昔は母親が料っているのを見てよく涙をこぼしたものだ。なぜか今は自分で刻んでいても滅多に泣かなくなったが。

 さて連想ゲームを続けるが、最近涙を吞んだことがある。つい最近最終選考に進む作品が発表されたカクヨム甲子園と、一般の中高生の小説公募に落選した。かなり悔しい。たいそう、誠に、大分、滅法、素晴らしく悔しい。私は(それで増長するつもりは毛頭ないが)公開している己の全ての作品に自信を持っている。愛情を注いでいる。青春を懸けている。私が書く小説は、鈍く光る私の青春そのものだ。この悔しさを動力にして、これからも書いていきたい。いや書く。書くとも。


 少し、いやかなり言い過ぎた。もう既に悔しさからくるエネルギーがこぼれているのだろうか。なんだか自分に酔っている気がする。これだから私は。

 戒めついでにもう一つ、自分に発破をかけておくか。先程カクヨム甲子園で見事予選を勝ち抜いた作品を一つ拝読してきたが、読後感爽快で面白かった。僭越ながら私も似たようなものを書いているので、その作品を参考に自分の反省をしてみる。どうも最近の私のショートショートは、暗い。敬愛する星新一大先生のような魅力的な暗さならいいのだが、なんというか、ただ暗い。読み終えた後の爽快さが足りない気がする。このことから私は、ショートショートという本来愉快な小説にしたいはずの物語の中にメッセージを詰め込み過ぎたのではないかと予想する。「読者を楽しませたい」という娯楽作家気取りの自分と、「俺の言いたいことを今から言うから聞いとけ、いいか、世の中はクソだ!」という純文学作家気取りの自分が、ないまぜになって筆の取り合いをしている。そんな感じだ。これからは、ショートショートはもう一度初志を思い出して皆が楽しめる小説にしていこうと思う。その他若者の主張は別作品に納品。よし、とりあえずはこれでいこう。


 と、まあ一作だけ考察してみたが、正直これ以上はくだらないプライドが砕かれたせいで読めそうにない。キャパオーバーだ。なんなら前述した一般公募通過作品はまだ一文字も読めていない。悔しい。ああ悔しい。どうせ全部面白いんだろうな、私のより!!


 そういえば日記を書いているんだった。カレンダーとパソコン、交互に首を突き合わせて直近一週間ほどの出来事を記録していく。

 まず英検だな。準一級を受けた。当然難しかった。特に今年度だか昨年度だかから追加された要約問題。あれが難関だった。文章の解釈を間違えていたら詰む。頼むから合っていてくれ。……神頼みはよくない気がする。よし、放置だ。なるようになるさ。

 続いて中間試験が終わった。いくつかは既に採点済みのものが手元にあるが、やはり数学でこけなかったのは大きい。いつも足を引っ張る奴が割とすんなり歩いている。おかげで比較的高い偏差値を叩き出す自信がある。我が家の小遣いは試験結果が判断基準なので嬉しい限りである。

 あとはまあ、ここ三日、四日にはなるが読書量が増加している。昨日なんか(300頁に満たない文庫本ではあれど)一昨日開いた小説を読破した。もしかしたら落選でストレスが溜まっていたのかもしれない。小説には小説を、である。ハンムラビ王にぶん殴られるぞ。


 コンテスト二つ程度でそこそこ精神力の消耗が激しい。が、めげずに書くことが大切だと思うのでこの赤茄子草子も新作も、がりがり進めていきたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

赤茄子草子 鳩原 @hi-jack

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ