第3話(2)
俺が怪訝な顔をしていると、リーダー格はいきなり、声を出した。
「あっ、テメェまさか……、妖怪じゃないなんて言うんじゃないだろうなァ?」
は? 何を言ってるんだ、コイツは?
「俺は、普通の人間だ!」
俺がそう叫んだ瞬間、リーダー格がとても驚く。
「人間だと!? 確かに、妖気なんて感じられねェし、耳だって丸いなァ」
リーダー格はしばらく考えたのち、口を開いた。あの、気持ち悪いニヤニヤ笑いを添えて。
「だが、人間だってんなら、普通に売るよりも高く売れるぜェ! なんたって、人間だ。妖怪の貴族連中にはさぞかしおいしいだろうなァ」
それを聞いたとき、絶望に顔が歪むのが分かった。ああ、言わなきゃよかった、と思ってしまう。
そのとき、扉から誰かが入ってきた。
「へい、お頭ァ! 上客が帰ってきましたぜ!」
「やっとか、よし! 子分供ォ! こいつを連れてけ!」
大ピンチである。どうしようか考える暇もなく、あっという間に子分達に連れて行かれてしまう。
後ろで両手を縛られているため、歩くたびにズキズキと痛む。
これまでに見た扉とは違い、立派な扉が目の前に飛び込んできた。その立派さに、圧倒される。
扉が開き、目に飛び込んできたのは、眩い光。部屋は金ピカに飾られていて、趣味が悪い。その真ん中に大きなソファがあり、人物が座っている。
思わず、顔をしかめる。その人物もまた、気持ち悪いニヤニヤ笑いを浮かべているからだ。
俺を連れている子分が、急かすように背中を押す。
しぶしぶ、俺は足を動かす。ソファへ一定の距離をとって、頭を抑えられる。背中や首が痛む。
「ふむ、なるほど〜。確かに、人間じゃな〜。あい分かった、こいつを買おう。金はこれで足りるじゃろう?」
何かが頭に当たり、思わずうめき声が漏れる。
「では、こいつを連れて行くとしよう〜、着いてくるがよい〜!」
俺、このまま奴隷になってしまうのか? 奴隷になることを受け入れるのか?
そんなの、イヤだ! 抵抗してやる!
俺は立ち上がり、目の前の人物に向かって、回し蹴りを放つ。ちょうど顎にヒットして、そのまま後ろに倒れる。
「テメェ! 大事な上客を、よくもォ!」
子分供と、リーダー格が向かってくる。
やばい、もう、限界だ……。
意識がかすれ、倒れてしまう。
ううっ……、風邪だな……。
体が熱くなってきた。動けない。
ああ……、どうか起きたときに何もありませんように……。
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