第24話 戦闘訓練! 魔法使いのぬいぬいと盾職のシルスさんの戦い方
目を開けると僕の目の前に砂の山があった。僕の体の下には布、そして僕の
「まるで、魔法だな」
そう僕は一人つぶやく。日常の料理や浴槽などで使う魔法道具。今まで魔法の質量の調整も難しく、その部分を執事のシャルルさんに全て管理してもらった部分が多く、魔法製品について稼働している様子をここまでじっくりと見た事は無かったが、こう間近で見るとさすがに凄い。
でも、誰にでも使えないって所が欠点だよな……、僕はまだそんな人を見た事は無いが。
しかし魔法の道具ばかりに気をとられても仕方ない。僕は僕のまわりの道具を片付け、二人を探す事にした。傘を閉じた時、雪の結晶が空へ帰って行ったので、もしかするとあれは雪の精霊だったかもしれない。
そして最終的に残った問題は、僕のゴーレム。持ち上げようにも凄く重く、持ち上げようにも、持ち上がらない。
これは本当に旅の間には、そしてそのまま魔界にでも住む事になれば、何百年後かに『草薙ハヤトの』の名前でゴーレムが残されていれば、物議を呼びそうで面白いかも知れない。まあ、さすがにそれは不義理か。
さすがに重いゴーレムはそのまま置き去りにし、荷物を持って二人を探しにその場を後にした。
念のため練習場の受付の兵士の人には、ゴーレムの話をしようとしたら、僕の事は話は通っていたが……ゴーレムの話をすると、なぜゴーレムについて、そんな物をあの場所に作ったのですか? と、いう顔はされてしまった。
受付の兵士さんの話から、二人の居る場所を聞きそこへ向かう。
辿り着いたそこは戦闘コロシアムのような練習場。そこで二人は戦っているようだった。
盾を構えたシルスさんと灰色のタンクトップに黒の袴に杖を持つぬいぬい。
やはり魔法使いの上着と帽子は、イメージ的にも大事なようだ。
戦闘の方はと言うと、ぬいぬいの動きがいつもより断然早い。強化魔法でも使い、素質を底上げしているのだろうか?
シルスさんも盾を前かかげ、打って出ようとしているのだろう。しかし素早い動きのぬいぬいが隙をついて動き、シルスさんの体へと杖を打ち付ける。
シルスさんの苦悩が、戦いから少し離れた位置にいる僕にもわかった。
それでもぬいぬいは「ほら、ここの魔法が薄いぞ。どうした? ここも!、ここも!」と、杖を打ち込んでいく。
僕の訓練時ではまだ絶対に飛ばない、強い言葉がそこにはあった。
シルスさんは、ぬいぬいを力で制しようとするが、それは今の軽快な足さばきをしているぬいぬいには余計悪手にまわっているようだ。
「じゃー最後に俺との実戦の戦闘訓練に移るか。どうやらあいつも目が覚めたようだしな」そう言って僕を杖を示す。
そのぬいぬいの言葉に対して、シルスさんは、剣を見つめそのグリップを握り、手に力を込めた。
「胸をお借りします」
「ああ、どんと来い」
初手、ぬいぬいが杖を床に押し当て詠唱を唱えると、魔法陣が描かれる。すぐさまその瞬きは消え。そして再びシルスさんの前に歩きだし、ふたたび詠唱を2回繰り返し、彼の足元の魔法陣は2回、瞬く。
その後、ひと呼吸置いて、ぬいぬいの杖から放たれた数発の雪の塊がシルスさんの盾で守られていない横腹へも大きくカーブを描き飛んでくる。
彼がそれを剣で払う。しか今度は何回に一回逆側の横腹へも雪玉飛んでくる様になる。それを左右に逃げ切るのだが――。
それで時間を稼いだのだろう。ぬいぬいの少し長い詠唱を唱えた!
その魔法はシリスさんの上半身を包み込む様に、全方向からの雪玉が飛んでくる、それを火の魔法として喰らえば実践であれば動けない程の威力はあるはず、彼はこれをすべて盾で防いでもたぶん負けだ。どうする!?
シルスさんに目が離せず見ていると。彼は、それを体を倒れこませる様に、スライディングのさまで下へと、なんとか逃げるが、勢い余って横転してしまう。
しかし彼はそこから素早く立ち上がり、魔法を自分にすばやくかけると彼の体が薄く光る。そこからは盾前にそれ以外の防衛を切り捨てウォ――オォ――!!と、掛け声とともに、全力でぬいぬいの前へと走り込む。
そして瞬く間にぬいぬいの目前に迫ったシルスさんが、盾ごとぬいぬいの全身へとタックルをかける。シルスさんの衝撃で、ぬいぬいの姿が歪む!?
盾は確かにぬいぬいを捉えたはず、だが彼は見つからない。呆然と上を見上げるシルス。
だが「後ろ!」と言う掛け声とともに、繰り出された杖による強打によって、シルスは沈んだ。
「いてぇ……」
床で、横腹を押さえるシルスさんに、ぬいぬいは手を貸し彼を立たせる。
「敗因はなんだ?」
「タックルの後に、あってはならない隙ができました。ああいった場合、全方向に注意は向けた方が良かった、もしくは防御魔法をもう一段上げておくべきだったかもしれません」
ぬいぬいの問いに答え、シルスさんは悔しそうに下を向く。
「何でもありの魔法使いとの戦いで、全体に注意を向けたり、強化魔法のレベルを上げるのはいいと思うぞ。後、『後ろ』って言われて素直に後ろを向くなよ、騙された場合は恰好の的だからな。これは一人で戦う時の話しだ……パーティーを組めば俺の小手先の作戦は、お前達に効く事はないだろう。試しにあいつに聞いてみるか?」
「はい」
二人は、僕に視線を移した。
「ハヤト何か、気付いた事は?」
「初手の魔法陣をなぜあんなに唱るのか? とは、思いました。特に1回目の魔法陣。範囲が重要なのに動いてますし、そこからは何か出て来たわけでもない……」
「なんで、お前は魔法の素人なのに、そんな事は知っているんだ?」
ぬいぬいは、呆れた様に言った。
「ははは、魔法世界をベースとした物語やゲーム……えっとテーブルゲームみたいなものは、よく見たり、やったりしたので」
「もしかして俺がタックルしたあなたは、魔法陣で作らた幻ですか? 手ごたえがまるで無かった」今まで、考え込んでいた、シルスさんはそう発言した。
「うんうん、そうだ。では、俺はどこに居たんだ?」
「もしかして……最初の魔法陣に?」
ぬいぬいは、とても嬉しそうに話す。師匠と言う職は、彼の転職なのだろう。しかし弟子にする人間はまわりが厳選せねばいけない気がするが……。
「そうだ! 最初の魔法陣で、敵から見つけられない安全地帯を作って置く。しかし、他のパーティーメンバーや、魔法に少しだけ知識がある人物にはバレバレだ。だから、今回の戦いは魔法使いの参考程度にした方がいい。一番大切なのは魔法でも剣でも、自分活かす戦術をみつける事だ。自分の強みの戦法に、強化魔法がうまく使える様になれば、さっきの様な場面でも相手を出し抜く事が出来る。それはもうお前はほぼ出来ていると言っていい。しかしお前の為にこう言っておこう。お前はまだまだ! もっと精進しろよ!ってな」
やっぱりぬいぬいはワルな顔をして笑う。
「ありがとうございました! 精進いたします!!」
シルスさんの大きな声が僕の耳に刺さる。しかし彼は、いつもの少しお人よしな感じの笑顔で笑った。
「今日の訓練はここまで」
ぬいぬいは、袴についた埃を取るよう、袴をはたく。その時、彼はふと動きを止め僕達を二人の顔を目を止めると、ふと、思いだしたように……。
「ふたりとも念の為、医務室へ行けよ。後、ハヤトは昼飯前に屋敷に戻って風呂に入って来い」
「砂だらけだぞ……」
ぬいぬいは、ぼくを上から下まで見てそういった。
続く
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