第23話 魔法と料理の素敵関係

 城の中の兵士練習場。魔族と戦い、国同士の戦いに赴く戦士たちの為の修練の場。


 そこで僕はタオルを顔に、かぶった状態から笑い過ぎて酸欠になり今、砂の上で目をつぶりなが寝転がっている。


 そのまま言えば、なんとも情けなくもあるが、僕の横にはぬいぬいから僕へと、叡智を届けてくれたゴーレムがあると思えば、誇らしくもあった。


 僕の周りには可能性を秘めた砂が広がり、それは宇宙をも飲み込んでしまうかもしれない。


 僕は、両手の下の砂を掴み、放り投げ目を開けた。砂たちは僕の上で銀河の星々の様に渦を巻き、少しずつ新たな球体を作り、まわり出す。


 それは全て僕の思いのままに、軌道を通って正しい道のりを歩む。僕はそれを見つめ可能性を、強く感じていた。

 

 しかしいつの世も終わりが来るもので、星達は僕の手に帰ってくる定め。


 だから僕はそれかかげた両手で受け止める。


 凝縮された星たち、おかえり星たち。


「お前は何をしている? 体が疲労しているのはもちろんだが、そのうち魔力切れを起こすぞ。それに耐えられるほどお前は修行を積んでないから、酷い事になるぞ。……ほら、それを寄越せ」


「師匠は、生粋な魔法オタクなんですね。弟子の体力も気になるが、成果も気になる」


 僕が腕まくらをして横を向き、ぬいぬいを見つめると、一心不乱に弟子の成果を評価している。そしてそれを終えると上機嫌の顔で―。


「硬さや形状、どれも俺から見て素晴らしい。よくやった」


 そう僕の師匠は、言ってくれたのだった。


「で、何かわかったか?」


「僕は、イメージをするだけではなく、手の動作でそれを補うのもいいのかもしれません」


「魔法使いの杖やステッキは必要か?」


「いえ、そこまででは……手の方が直接的で、イメージを伝えやすい気はします。何事もやってみなければわかりませんが……」


「その方がいいだろう、あれは魔法を強化するためのもので、初心者には必要ない」


「ところでぬいぬいは、杖派?、ステッキ派? 」


「おれは杖派」

 そう言って、どこからともなく杖を取りだすぬいぬい。そして彼は子供の様に笑った。


「なんかずるいなぁ」そこで二人で笑いあう。


「杖なんかなくても、ハヤトさんは凄いですよ。あそこまで統一された土の魔法は、見たの初めてです。俺は、ちょっと感動しました!」


 ぼくとぬいぬいの会話を邪魔しない様に見ていた。シルスさんが少し興奮気味に言う。やはり彼は天性の褒め上手である。


「魔法学校で教える戦い方は、土が身近にある分、贅沢な使い方が出来る。だから土を大きな塊として、物量、数の有利を狙って相手を押しつぶす魔法がメインで、基礎となっている。だから土の魔法で、繊細な動きなど求められない。だが、それは絶対では無い。繊細だからいきる戦い方があるのかも? その気持ちは忘れない方がいい。どの魔法でも言える事だが。」

 

 ぬいぬいの言葉に、シルスさんも――。


「そう言われればそうですね……でも、だからですか? 今回拝見させていただいた魔法の教え方が、僕らが教わる魔法学校から来てくださった先生と違うのは? 彼れらは毎年、城を守る壁の作りを教え、魔力の優れた者たちにのみ、懇切丁寧にゴーレムをパーツに分けて作らせて、最後にそれらをまとめて組み立てさせます。その意味がやっとわかりました。」

 

「まぁ、それも無い事はないが、こいつに魔法学校通りの魔法を教えないのは、面白いからだ。魔法の組み立てを、教える前に炎を、青く染め上げる事は普通はそうない。ここより違う世界の暮らしが、そうさせるのかはわからないが……。魔法の属性のオール型、すべての属性を使える可能性を秘め、魔力量も申し分ない。そんな奴が自由な発想で作る、何かを俺は見て見たかった」


 ぬいぬいは、手の中の砂の球体を大事そうに、その手に包み込む。


「それを俺たち異世界の人間が解析し、一般化する。そうすれば魔法学は、一歩先に進む。例えると料理のレシピと魔法はそうかわらん。偉大な先人が作りだした目玉焼きから、人々はオムライス、プリンを作りだしたのかもしれない、歴史の大きな流れの中で、そうしたオムライスも人々の手で新しく姿をこれからも変えるだろう。偉大な者が作り出した料理を、味を変え、料理方法を変えて最初の先人を超えるよう日夜料理は作られる。だから俺がそれをお前の魔法に求めるもおかしくないだろう?」


「そうなんですか?」


「そうなんですか? では無く、絶対に確実だ。料理だってその道を進んだ。魔法そうなる。料理の勉強を学校で教わってもいないあるるもよく、レシピ教えてって言われいるしな。魔法もそこまで人々に広まれば夢でないだろ? 何せ魔法には、夢より夢がある」


「なるほど、あるるさんの料理は美味しいですもんね。料理の可能性についてはわかります。話しは変わりますが、きっとお母さんも美味しいんでしょうね」


「二人とも魔法の話だと、俺には思いもよらない発想になるんですね」

 

 シリスさんの訴えにぬいぬいは「料理上手の嫁と、結婚すればわかる。料理も見慣れた材料で思いもよらない味、美味しさを作り出されると驚くぞ」とシリスさんの背中を杖で軽く叩く。


 シリスさんはなおもぬいぬいに、料理についてとか、そんな方とどこで会えば……とか訴えてはいたが僕は、別の事を考えていた。


 ――彼女は、料理は得意だろうか……。僕は、好き嫌いはないし、簡単な物なら作れる。だから、きっと一緒に暮らしても大丈夫だろうと……。でも、もっと先に進む事を、考えてもいいかもしれない


「ぬいぬい……僕も簡単な料理なら、あるるさんに教わりたいです」


「お前が教わるのは魔法あだろう」僕の願いを受け、ぬいぬいはそう言ったのだった。


      続く

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