第22話 永遠のゴーレム

 異世界に来た僕は、毎日が自由であり、修業の連続だ。


 ここ兵士訓練所には、兵士たちが多く仕切られたスペースで、死にものぐるいで練習している。ここの兵士の戦闘には、死の影が寄り添っているのだろう……。


 では、勇者一行には? 僕は当然の答えをまだ誰にも聞けないまま、今日も訓練に明け暮れる。


 城の兵士訓練場へ着くと、入口から中へ入らずに、魔法の練習場側へ外の壁づたいの道を歩いていく。この道と城壁の間には僕が毎日走っている道があるのだが、そこからは見えないように木々が、その間にはうっそう繁って訓練場を覆い隠している。


 しばらく歩いて、訓練場の入口の真逆な位置へと来ただろうか? それくらいの距離に、砂漠の砂か? 大量の砂が、屋根の下に敷き詰められている。


 砂を少しつまみ、力を加えてみると少し指の後が残るが、置くと瞬く間にもとの砂に戻ってしまう。


 今日も僕らの修行に付き合ってくれる、シルスさんと三人でいつものサークルへと、座りぬいぬいの言葉を待った。


「今日の魔法の練習は、地の魔法だ。魔法学校では、初心者は粘土の土を使ったりもするが、ここそんなものはないから頑張ってやれ。以上だ」


 ーー今日のぬいぬいは、とんでもなく説明が大雑把だった。しかしシルスさんは動じた風でもないので、これが一般的なのだろうか?


「ハヤト君、まず砂でゴーレムを、作ってみるのはどうかな?」


 シルスさんが見かねたのか、助言をくれた。今日は、オリエラの代わりに、天才のサポートは彼がしてくれるようだ。正直ありがたい。


「まず砂に触れ合うといいよ。魔法の土の聖霊の在り方を知ることは、とても大切な事だからね」


「そこの砂を移動させると、後の片づけが面倒な事になる……。適当に砂が山になっている所で、やるといい」


 ぬいぬいが、そう言うと「出来たら、砂は中央へと集めるようにして貰っていいかなぁ――。そうしたら助かる」シルスが合わせて発言する。


「そうだ、これを使え」


 そう言うと、ぬいぬいが、タオルを2枚を投げて寄越す。


「それで出来たら顔をおおえ、まず薄い方を顔全体の覆い。2枚目が出来るだけ苦しくない可能な範囲で、口や目などを覆えよ。ここの砂はきめが細かいから、なるだけ吸い込まない方がいい。そして呼吸は意識してしろよ」


 ぬいぬいは、そう言ったので、タオルを巻いてみると、城の花の匂いの洗剤とは違い。ふんわりとした太陽の匂いがした。それ以外は、よろしくない巻ごこちだった。それは僕の世界の洗濯に関する技術が高いだけで、仕方ないことだろう。


 そして土の魔法の修行が始まった。


 とりあず、土の山の中へ手を突っ込み、土で出来た何かを取り出す訓練をする。しかしそれは何度やっても上手くいかない。


 持ち上げとたんに弾け飛ぶように崩れてしまう。


「う……ん」


 僕は砂場で、遊びたての子どもの様に、僕を見守っている二人を見た。


 シルスさんはさすがに兵士なだけあって、見守り対象の僕をしっかりサポートを怠りません! って感じで見ていたが、ぬいぬいは古い手帳にやはりメモを走らせている。パパーー!?


 では、ゴーレムの基礎パーツになるだろう、長方体を作る事に専念してみる。砂をある程度手に乗せ、イメージすれば、今回は案外簡単に上手くいった。置くと角がみな欠けてしまうが、先程よりは断然ましであった。


 シルスさんは、うなずいてこちらを見ている。心なしか嬉しそう、褒め上手先輩の再降臨であった。


 角の崩れない長方体をいくつも作り、ゴーレムを作成しょうとする。


 しかしそこから僕の苦戦がふたたび始まった。


 あれだけ固めて作った長方体さえも、いともあっさりと瓦礫かえってしまい、上手く作れなくなる。


 ただの砂の山を眺めていると、すぐ後ろでぬいぬいが立っていた。


 彼は、砂の山に手を突っ込み、横に滑らせるだけで、完璧な長方体を作り出した。


「ハヤト、これは何だ?」


 彼の質問はシンプルである意味答えやすい。でも、たぶん正解は限られている。そんな物語は、何度も見た。


「ゴーレムの足です」


「いや、違うな」


「あっ……」


「何だ? やはり違ったのか?」


「あっ……!!」


 僕は彼が、僕を引っかけていた事がわかった。そんな場合の答えは選択肢の中のどれでもないか、僕の中にしかない。今回は、後者の僕の中にしかないが正解だった。


「これは何だと、聞かれたらこの世界の魔法の答えはお前の中にしかない。俺の前のこの砂の山はなんだ?  これはゴーレムのパーツの山か? いや違うね。ここには、ゴーレムが隠れている。一見強そうなそいつは、お前に魔法のを預けて消える。さぁ、見ていろ!」


 彼は袖をたくしあげ、砂山にザクッと音をたて、手を突っ込む。彼は腕に魔王には劣るが、多くの魔法の粒子がうごき形ずくる。


 彼は本当に、まるで埋められていただろうゴーレムを、両手で脇の下を掴み、掘り起こしてしまった。


 そのゴーレムは歩きだす、そして僕の前まで来ると、右手を挙げ、僕の心臓に残りの魔力を流し込む。


 そして僕がその右手の手に触れる前に、砂へと帰った。


「叡知は、得たか?」


 僕は、それに『はい』と言って答えようとした。


 しかじ不意に、オリエラの言葉を思い出す。


「そっそっ夢や魔法はね、どうしょうと思うとそこで爆散しちゃうの。だから魔法使いの言葉は、いつも強いの」


「僕は、叡智以上のものを、あのゴーレムから貰いました。だから僕は、あのゴーレムを復活させます。それは永遠にです」


 僕はゴーレムの居る山に、手を置きその手を少しずつ持ち上げる。べつに動かなくてもいい。この気持ちを残す為だけに、城の数々の石像の様にその思いを残す。勇者ならそれが許される筈だ。


 そう思い持ちあげる。そこに眠るゴーレムの姿を! 


 僕はそこにあるゴーレムの頭上に手をかざし、ゴーレム浮かび上がろうとする力を利用し、勢いよくゴーレムを地上に登場させた。

 

 いるからこそ、勢いよく。そこにあるからゆっくりなんてする必要はなかった。


 目の前のゴーレムは、永遠を重きに置いてしまったからか、石のゴーレムになってしまったが、やはりそこに居た。


 それを見て僕は笑った。なぜだろう……。世界が思いのままになったような気分で、とても愉快だったからだった気もするし、違うかもしれない。でも、散々笑ったら、死にそうなほどの咳をして。呼吸がしづらくなった。鼻水と涙とまあ……いろいろ出そうになった。


「おい!バカちゃんと呼吸をしろ!」


「早く、こいつのタオルを外せ!」

 ぬいぬいの罵声ばせいがとぶ。


「大丈夫ですか? ハヤトさん」

 シルスの僕を心配する声。


 二人がかりで、タオルを外されてやっと呼吸が楽になる。青い大空を見ながら、僕は空に手を伸ばす。


「本当にちょっとやばかった様で、手足が少し痺れます。」

「お前はもうちょっと寝てろ。落ち着いたら、今日はもう帰るぞ」


「はい……」

 そして僕は目を閉じる。


 修行をするだけで、異世界はこんなに楽しい。


 君にも、こんな人間界の世界を、早く見せてあげたい。


 ギルドクエストを沢山こなし、フィーナ、君にもここへも住む選択が出来る。その権利を君にプレゼント出来るよう、僕は頑張る。


 これは絶対の絶対だ。


 続く

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