第20話 守れない秘密
――執事ルイスが来た事によって、僕の目の前に広がる異世界での暮らしと勇者の在り方への不勉強さが明確に現れた。それとは別に心がざわざする……。
若い彼は、今までの彼の人生をかけて、とても勉強してきたのだろう、勇者の事と、そのまわりの事を……。
シャルルさんやレンさんの様に勇者にかまけている時間がないほど仕事が忙しいのではなく、ぬいぬいやオリエラの様に今は、自分の生活を中心に動く人でもない。
勇者の執事ルイスによる、勇者のための生活……。
それが始まろうとしている。しかし彼の学んだだろう勇者、その勇者は僕にとっては偶像に過ぎず、僕とは大きな
とりあえずしぜ〜んな感じに、彼の意見も取り入れて、駄目な事は駄目って言わないと……。そして僕の秘密の為、彼について見極めないと。
「では、あなたの勇者像に対し質問させてください」
「ええ、是非、ハヤト様については、勇者について知って貰いたい事がたくさんありますから」
「ありがとうルイス。ところで、ルイスの一族のアルト家について、まず教えて貰ってもいいですか?」
彼を、いや彼をそう育てたアルト家について知りたかった。
「民が困った時、いつの時代にも勇者はどこからともなく現れました。勇者達の多くは、この世界について知らないようで、武芸などにも秀でた我が一族が、勇者とともに旅をする機会が多くあった事が始まりとなっております。数々の勇者と一族の若者が旅をする内に、王家と並び勇者の同行者、先導者という立ち位置なってしまったのが、我々アルトの血筋なのです。具体的な仕事は、異世界から来る
――完全に、巻き込まれ主人公。(やれやれだぜ)それにしても奇想天外……。昔の勇者は、何をしたの?!
この世界について、予想する事の出来る僕でさえ、家事などから日常のあらゆる事には、少しの不便はあるのだから……他の時代の移転者なら、なおのこと勇者パーティーに船頭は必要かもしれない。
これからの話が、僕にとても重要な話だ。僕がこの世界に確実に求めるのが、魔王の部下のフィーナである。と、言う事を思い浮かべ、彼を見極めなくてはならない。
今ではすっかりあやふやになってしまった、僕の異世界での立ち位置。ルイスの存在で、それが強固になり彼女と敵対する事は絶対にしたくなかった。
でも彼が、僕を勇者という事だけでついて来てくれると言うのなら……、僕の悩みは取り越し苦労に変わるのに……。
「ルイス、君はどうやったら僕を勇者と認めてくれるの? 今、王と教会が僕を勇者か審査してくれている。では、君は? 誰の意見をもって僕の為に、歩いてくれるの? 僕は、絶対魔王は倒さないよ」
――彼は真実は、言わないかもしれないかもしれない。それをわかっているから……すべてを話し裏切れも、そんな人物と旅はしたくないから、せいせいするだけだ。
僕の質問に対して、ルイスは、眉1つ動かさず――。
「それはお答え出来ません」
と、笑顔で答えた。
「お前……」
ぬいぬいは、少し
「僕が、魔王を倒さない事についての、君の考えも秘密の?」
「勇者が倒す必要があれば、勇者は必然的に倒す事になるでしょう。そこに私の考えは必要ありません」
「では、僕が悪を行ったら? 人間界を裏切るほどの悪です。悪に対する時、悪が善を誘惑するのは世の常でしょう? それも必然と許してくれますか?」
「もちろん許せませんし、止めるし、罰します。それが私の役目です。運命であっても私には、受け入れきれませんから」
「そうですよね」
僕と彼は笑う。冷たい氷の刃の上で。
「わかりました」
「では、改めてよろしくお願いします ルイス」
「はい、かしこまりました、ハヤト様」
ルイスは、にっこり笑う。
ぬいぬいは、少し成り行きが気に入らないようで……。
「おい、ハヤト少しは考えろ、心の内を話さない者は信用出来ないだろう?」
「すみません。師匠、それは僕も同じなんです。話してない秘密があります。とても大きな……」
「お前はこの世界に来たばかりで、どんな秘密があると言うんだ? それからこんな時だけ師匠と言うのは、卑怯だぞ!?」
彼は大きな声を出し、僕を指差す。顔も赤いし少し怒っている。僕は怒られた犬みたいな顔をしているんだろうきっと……。そして僕は、疲れていた良い人たちを騙す事を。
僕は、勇者なのかもしれない。しかしタロットカードの様に、そのカード逆を向いてるかもしれないのだ。
それなのに今まで以上に、新たに親しい人を作り、結果的に騙す事になる可能性にもう耐えられなくなっていた。
僕の恋は誰かを裏切るものではないと、誰かに証明してもらいたかった。
「ぬいぬい、すみません。後で、僕の部屋で話しをしましょう。今まで、言えなかった秘密を聞いてください」
もしぬいぬいに罵られても、僕はそれだけの事をしたのだ……。
「いえ、この場で話してください。先程の問いに答えましょう。貴方の話す話しによってはあなたを勇者と認めてもいいです」
ルイスは、ひざとひざの間に手を結び、少しだけ背筋を折り曲げて僕を見ていた。
だから僕は、話した。
背筋が伸び、視線が正しくあった彼が、そこに気を使えないほどには僕の話しに聞いてくれた思ったのと、今までの彼の返事に好感を持ったから。
この春に僕の前に現れた彼女の事を、魔王の相談の事は話さなかったけれど、フィーナと魔王のおにぎりについては、おにぎりの味についても話た。
よしのさんの事は重要ではないし、もと勇者の彼を僕はそっとしておいてあげたかった。
そして最後、僕をこちらに落とした彼、アポストロフィ。「どうやって来た?」 問われと、僕は立ち上がり周りを見た。彼の視線を感じたからだ。そして崩れ落ちる様に座り込み、「覚えていません……」と、言った。
ぬいぬいと、ルイスは、顔を見合わせてそれ以上は聞いて来なかった。
「魔王は、そんなに遊び呆けているのか?」
「僕の世界の便利な道具も持ってました。この世界にないものです。向こうには、本も山ほどあります。だから遊んで居る様に見えるだけかもしれません」
二人は魔王の事は、聞くのに僕の可愛い彼女の事は聞かない。
「結局、お前はどうしたいんだ?」
「彼女の故郷へ一度帰って、お墓参りや彼女の複雑な家庭を必要なら正します。そして彼女が望む場所で暮らします」
「そうか……。俺にもそんな時期はあったが、お前ほど無鉄砲じゃなかった」
「でも、あるるさんと一緒に里から出て、一緒のパーティーで、結婚してるじゃないですか? かわりせんよ」
「それはあるるが!?」って言ったきり黙り込んでしまった。
「ルイスさんはどうですか? あなたの勇者に僕はふさわしいでしょうか?」
「そうですね……思った以上に、大きな秘密でそれについて話してくれた事については、マイナスかプラスになったかと言うとプラスですが、勇者はそれだけでは足りないって言うのが今の感想でしょうか」
「そうなんですか……。では、今後頑張ります」
――ルイスの話をそのまま受け取ると、彼は勇者について甘々判定って事がわかった。敵の国王と通じていたら重要職から普通排除する。だからプラスの僕は、彼に認められる可能性はあるようだった。
「俺については、俺はレンにお前について魔法を見てやってくれとしか言われていない。だから俺はこのままお前に魔法を教える。しかしレンにだけは、この事を報告する。レンがどう判断するかはわからない。しかし今のお前には、付け入る隙がおおいにあることは、レンも知っているのでこのままだろう」
「ぬいぬい……、僕はそんなに隙だらけなんですか?」
「違うのか?」
「えぇ……どうでしょうか?」
自分の事は、案外わからないものだ。僕は彼女以外いらないと思うよう、これまで生活して来たのに。
「とりあえずお前に事情があり、話せない部分がまだあるだろ事はわかった。そしてお前の執事も癖が強そうなのもな」
そう言うぬいぬいは、僕らの顔を見てニヤリと笑う。
「旅については、お互い思うところがあるかもしれません。ですが、今、私に依頼されておりますあなた方のサポートについては、仕事ですので、手を抜く事はないとお約束します。これから宜しくお願いします。ぬいぬい様、そしてハヤト」
そう言って彼は、妖艶に笑った。ここで僕の事を、ちゃんと様抜きで、呼ぶところとか、抜け目なさすぎて太刀打ち出来なさそうである。
続く
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