第10話 修業への道のりは
山に篭っての修行は、物語の基礎みたいなもの。
主人公は、山から出られずに修行に励む。
「じゃ、行く」かと言う、ぬいぬいの声と共に僕達は部屋から出て、うちの扉の外に一人残っていた兵士のシルスさんに外出の許可をとる。
シルスさんは、「しばらくお待ち下さい」そう言い城の方へと走って行った。
「えっ? 師匠、前もって城の方か、ギルドへ連絡しておいたんじゃないの?」と、言うオリエラに、ぬいぬいは、「いや」と、言葉、少なに返す。
彼は、小さく座り庭の雑草を、手持ち
「師匠……、私の外出許可で、3日は掛かるのに……今まだ、状況の難しいハヤトでは、普通の兵士さんでは決められないよ? もう!」
そう言ったオリエラは怒りに任せて、師匠に負けないっとばかりにうちの雑草をブチブチ抜く。
僕は、少し異世界の子どもの遊びは、これしかないのか? と言う気分になった時に、シルスさんといつもと同じくざっくりとした上着とタイトスカートの彼女がシルスさんの後ろを歩いて現れる。
「シルス、レン、世話を掛けたみたいで悪いな」
「レンさん、お久しぶりです。わざわざお二人ともありがとうございました」と、いう様な事を僕も、オリエラも言った。
僕はともかくとしてオリエラは、ぬいぬいと話す時以外は礼儀正しい自分である様、
「こんにちは みんな、これからみんなで楽しい山の修行へ行くんだって?」
「そうだが、わざわざその許可をする為に、レン、お前はわざわざ来たのか?」
ぬいぬいの問い対して、彼女は、人差し指を上へと伸ばし解答する。
「わざわざ許可をする為に来たって考えは正しい。でも、それだけではハヤト、そしてオリエラを、同時に一緒の外出許可は降りない。彼を制止、彼女を助ける人物が2名が必要になってしまう」
「だから、ギルドマスターのお前が来たのか!? わざわざ!」
「そう、わざわざ来たよ、古い友の為に。……って言ってあげたいけど、私もやはり忙しい身なので、これからの為、前もって彼の資質を調べておこうとまあ思って来たわけだよ。百聞は一見にしかずってやつだね」
「こちらとしては、大変ありがたいが、お前も忙しいと言うのならこういう仕事は他人にふれよ……」
「古い友が、前もって書類を上げてくれたら今度からそうするよ」
「それはどうもなあ……疲れると言うか、しんどい」
「まぁ、そうじゃないと、国のお抱え魔法使い様になって居たよね……君は」
「まぁ、それを言うな。あるると二人気の向くまま、他のパーティーとクエストをこなすのも、それはそれで発見がある。新しい出会いも生まれる」
「まぁ、君がそんな風だから、勇者殿のハヤトを最上級の魔法使いに任すことが出来た、こっちも心得てるから大丈夫さ」
「では、行こうか、準備は出来てる?」
「いや、これから急いでする。すまんまっててくれ」と言うとレンさんの答えも聞かず、玄関の中へぬいぬいは言ってしまった。
「ハヤト、すまないが、ぬいぬいに急いでないからあわてない様にと伝えてくれる?」
「あっ、はい、わかりました」
「ありがとう」
そう言うと彼女は、これから進むだろう後ろの道へと振り返った。
後ろ手を組んで空を見上げ、ゆったりと風の流れを読んでいる様なリラックスさで、彼女はそこに立っている。
――とても不思議な人だ……。僕は、そう思った。
☆
馬車の用意などは、レンさんが勇者の間へ来る前に手配してくれたようで、僕達はスムーズに山へと出発する事が出来た。
「おい、レン昼食はとったか?」
「午前中の会議が終わったと思ったら、兵が来たからね。まだだよ」
「もー師匠は、レンさんにまで迷惑かけて――」
オリエラが、
「だが、あるるのサンドイッチを、食べ事が出来るのだからそっちの方がいいだろ」
「そうだね、あるるさんの料理は、どれも美味しいかなね」
レンは笑顔で同意する。レンさんは、あるるさんとも親しい間柄の様だ。
「そうだろうとも」
いつもは、少し仏頂ずらのぬいぬいは、笑顔でそう言った。
籐のランチボックスを開けると、数々のサンドイッチが、綺麗に詰め込まれている。
あるるさんのサンドイッチは、イチゴジャム、ハムとチーズ、タマゴ、ポテトサラサラダなど中身が豊富で味もとっても美味しそうだ。
「師匠は、何を手伝ったの?」
オリエラは、美味しそうにサンドイッチをほおばりながら、ぬいぬいに聞く。
「イチゴジャムのとポテトサラダを手伝ったんだが……あれじゃないか? ポテトを蒸かして、柔らかくして、他の材料を入れる工程で……魔法の配合について考えるだよなぁ……何故か」
「まぁ、あるるも慣れたもので、すぐ魔法の事考えていたでしょう? って最近は言うんだが……」
「水に火を混ぜると水蒸気になるけれど、植物系の魔法で、じゃがいもをこうやりつつと、考えていると、目の前に卵が飛び込んでくる。それはまず生卵なんだが、卵が調理の仕方で、味が変わるように魔法の素材も調合の仕方によっては、1つの効果ではない物がまだ無限に眠っているかもしれない。それを何か攻撃に使うなり、サポートの活かせばそこでも新しい効果を再現させる。例えばマヨネーズと卵サンドの関係と言うか、ゆで卵と温泉卵の関係でもいい。」
ぬいぬいは、ポテトサラダのサンドイッチを片手でつまみ上げ、目の前にかかげながら方向を何度も変えながら観察したのちに、かぶりついた。
「師匠その話は、何度も聞いたけど……師匠は、戦場の土壇場で実験するタイプだから怖いよ」
と、オリエラの呟く声が聞こえた。
レンさんも美味しそうに食べてはいたが、時々物思いにふけっている。
「会議と言うのは、僕についてですか?」
「まぁそうだよ、ハヤト」
「君を、どう有効利用するべきかについて話されている」
「いままで魔王が攻めて来る事がなく、そこで安心するのは浅はかだが……」
「下手に魔王を刺激したくないって言うのが、だいたいの意見だ」
「でだ、君の意見を聞きたい。」
「まぁご期待にはそえないと思うが、噛み合う部分もあるだろう」
僕はどこまで話すべきか迷った。すべてを話すのは、僕や魔王にとって良い事ではないだろう。
出来たら、こちらの世界の魔界と人間界の関係については、あまり関わりたくないのが正直な僕の本心だった。
しかしここにいる人たちは僕の為に、
そしてたぶんこれからもそれは変わらないだろう。では、僕はどうすればいいか? 僕はこのまま彼女に会う事だけを求め、そしてすべてを内緒にする事は出来るだろうか?
ずるをすれば彼女に聞きたい、どんな僕が好きですか? しかし本当は聞かずともその答えはもう出ている様な気がした。
しかし未だ人間界に対して沈黙貫く魔王。
そして異世界の人間達は、魔王によっての侵略を恐れている。
そんな彼らは、他の世界の人間界に興味を持ち、人間界の暮らしを満喫している魔王をどう思うだろうか?
私の事が好きで、いつか壁ドンされて迫られたらどうするべきか悩む美少女に、彼は隣のクラスのギャルとデートしていたよ、って言えない気持ちのただの同級生が、たぶん今の僕なのだ。
ぬいぬいがそんな僕に見かねて、助け舟を出した。
「こいつは、この世界に来たばかりの赤子と同然だ。まだ、その質問は早くないか? 」
「だが、ハヤトもここへ勇者としているわけだから、この問題にいずれ直面する事になるから、他の世界を知る彼はどう考えるか聞くのも悪くないだろ?」
――それはそう、悪くない。僕の答えは彼女達より見えているものがある分、正解に近い答えを出しやすい。しかしその理由を問われ、なんか魔王、めっちゃうちの世界が気に入って、住民としての身分まで、手に入れてましたよ。なんて言えやしない。なので、結局、当たり障りの言葉を伝える。
「『僕の世界に寝る子は起こすな』と、言う言葉があります。下手に魔王を刺激するより、ギルドにて技術、そして人材の研磨をする方が先ではないでしようか? もちろん魔界に、一度足を運びその様子を確認したのち、パーティー内で検討し、時には友好関係を築く事も考えるべきかと検討もします」
「ハヤトの意見も、城の
そう言ったレンさんは、僕の意見について検討する為か黙った。
僕は出来事を簡単に考える為に、クラスの美少女に、ギャルと付き合う男の子の事をどう伝えるべきか考える。
やはり僕は、もっと彼女と親しくなるべきだろう。友人と言われる位には……。
続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます