月はその姿を映し出す器を選びはしない
夜の
教室の
「お月さまがきれいだねえ、有栖川」
近くの机に座っていた
「なあ、宇佐木」
「うん?」
「なんで俺らは、こんな夜だってえのに、学校なんかにいるんだ?」
宇佐木は足をクロスさせ、腕を組んだあと、人差し指を口もとに当てて、少しだけ考えた。
「うーん、それは……
「んなわけねえだろ! いまは秋だぞ!」
有栖川は机をバシバシと
口の形はくるみ割り人形がくるみをかじるときのそれに
「秋に肝試しをしたら悪いってゆうの?」
「そういうことじゃなくてだな……」
宇佐木がまったく意に
「ねえ、有栖川」
「なんだ?」
「
「知らねえ。悟りなんか知らねえように、そんなもの知らねえ」
有栖川はネズミが
宇佐木はそちらを向いて、窓の
「でもね、有栖川。この教えはすなわち、映し出される水のほうも、自分がどれほどの器か、わきまえてなくちゃならない、ってことだと思うんだ」
「はあ……」
「有栖川……」
宇佐木はやにわに近寄って、机の上に手を置いた。
「君は僕を受け止めるのにふさわしい器なのかな……?」
有栖川の顔をのぞき込みながら、そうたずねた。
「ずん、たっ、たー、っと」
人差し指を突き立て、
カメが
「その――」
「ん?」
「もし、ふさわしい器じゃなかったら、どうする?」
「……」
宇佐木はキョトンとして、目の前の
しばらくして再び背を向けると、後ろに手を組んでリズムを取った。
そいてふいに振り返り、すべてを知る者の視線を、有栖川へ差し出した。
「決まってるでしょ? 探すまでさ。より、ふさわしい器を、ね?」
宇佐木の顔があんまり
「……くだらねえ」
「それは君のことでしょ?」
「……」
有栖川は
満月は何も言わない。
ただ、この
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