第2話 アメリカ側 ①

アリシア・ジョンソンはコートの中央で肩を回しながら、相手の動きを鋭く観察していた。スコアは10-10、両チームにとって一瞬の気の緩みも許されない状況だ。彼女の額には汗が光り、心臓の鼓動が速まるのを感じた。視線の先には、日本のエーススパイカー、宮崎梨花の姿があった。


「エミリー、次のサーブは慎重にね。」アリシアがセッターのエミリー・スミスに声をかける。


エミリーは冷静な表情で頷いた。「任せて、アリシア。ここで一気に流れを変えよう。」


アメリカチームの選手たちは互いに目を合わせ、短い言葉で励まし合った。コートサイドで控えている選手たちも、応援の声を上げている。アリシアはその一体感に心を強くし、再び相手の動きに集中した。


エミリーはボールを手に持ち、サーブラインに立った。彼女の手が緊張で少し震えているのがわかったが、その目には揺るぎない決意が宿っていた。エミリーは深呼吸をし、心を落ち着けると、力強くボールを放った。


サーブがネットを越え、日本のコートに突き刺さる。宮崎梨花が素早く反応し、レシーブでボールを上げた。ボールは日本のセッター、佐々木涼子の手に渡り、高くトスされる。


「次が勝負だ!」アリシアは自分に言い聞かせ、スパイクの準備をした。涼子のトスが上がり、梨花が全力で跳び上がる。その瞬間、アリシアも全力でブロックに跳び上がった。


梨花のスパイクは強烈で、アリシアの指先をかすめてアウトとなった。審判の笛が鳴り、得点は日本に。しかし、アリシアはすぐにブロックアウトを主張し、ビデオ判定を要求した。


アメリカの選手たちは固唾を飲んでビデオ判定の結果を待った。大画面にスローモーション映像が映し出される。アリシアの心臓はますます速くなり、周囲の音が遠ざかるような気がした。


映像には、ボールがブロッカーの指先をかすめた瞬間がはっきりと映っていた。審判の判定が下される。


「判定は……インです!ポイントは日本!」審判が手を挙げて宣告する。


アリシアは一瞬息を詰めたが、すぐに仲間たちを励ます。「大丈夫、次がある。まだ試合は終わってない!」


エミリーがアリシアの肩を叩いた。「そう、次こそは決めるわ。」


アメリカチームの選手たちは再び気持ちを切り替え、次のプレーに向けて集中を高めた。試合はまだ終わっていない。彼女たちの目には、強い意志と闘志が宿っていた。

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