【完結】空へと跳べ!
湊 マチ
第1話 日本側 ①
「2-2セットカウント、最終第5セット10-10、両チーム一歩も譲らない緊迫した展開です!」
アナウンサーの声が会場に響く。
宮崎梨花はコートの端で膝に手を当て、息を整えていた。試合は最終セットの中盤に差し掛かり、両チームのスコアは並んでいる。観客席からは日本とアメリカの応援が入り混じり、スタジアム全体が熱気に包まれていた。この試合に勝利すれば、日本はパリオリンピックへの出場権を獲得することができる。
「リカ、集中して!」キャプテンの佐々木涼子が力強く声をかける。
涼子の冷静な声が、梨花の緊張を少し和らげた。彼女は深呼吸をし、心を静めた。これまでの厳しい練習の日々、チームメイトとの絆、そして自分の努力が全てこの一瞬にかかっている。目の前には、アメリカの強力なブロッカーが立ちはだかっている。
梨花は目を閉じて、心の中で強く決意した。「次は私が決める!」
「リカ、頼んだよ!」同じくサイドスパイカーの鈴木香織が応援の声をかける。「いつものスパイクで決めて!」
梨花は力強く頷き、コート中央に向かって駆け出した。彼女の目は、ボールと相手のブロッカーだけに集中している。涼子のトスが高く上がると、梨花は全力で跳び上がった。空中で一瞬、時間が止まったかのような感覚に包まれる。彼女はスパイクの瞬間に全身の力を込めた。
ボールはアメリカのコートへと一直線に飛び、相手のブロッカーの指先をかすめてアウトとなった。審判の笛が鳴り、得点は日本に。観客席からは歓声が沸き起こり、日本のベンチも一気に盛り上がった。
しかし、アメリカの選手たちはブロックアウトを主張し、ビデオ判定を要求した。
「ビデオ判定が求められました。今のプレーの行方が試合の行方を左右します。」アナウンサーの声が会場に響く。
コート上の大画面に、スローモーション映像が映し出される。観客は息を呑み、選手たちは固唾を飲んで見守る。映像には、ボールがブロッカーの指先をかすめた瞬間がはっきりと映っていた。
梨花は息を止めて画面を見つめる。「頼む、インであってくれ……」
涼子がそっと肩に手を置いた。「大丈夫、リカ。自信を持って。」
「判定は……インです!ポイントは日本!」審判が手を挙げて宣告する。
日本チームのベンチが歓声に包まれる。梨花は涼子とハイタッチを交わし、次のプレーに向けて意気込む。スコアは11-10、日本リード。
「よし、次のポイントも集中していこう!」涼子がチーム全体に呼びかける。
梨花は再び深呼吸をし、コート中央に戻った。彼女の心には、次のプレーに向けた強い決意が宿っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます