第6話
『あんなに魔法の勉強したのになぁ』
ルーズは田舎で一人頑張って魔法を覚えた。
大人になって、リーベの街の魔商ギルドの支部で働けるようになっても頑張った。
頑張って本部である先ほどまでいたギルドで働けるようになったばかりだった。
この国の人は大なり小なり皆魔力を持って生まれ、親から使い方を教わる。
魔力は魔法具の動力となったり、魔法を使うのに必要な力だ。魔法は水や風、火が出せるため生活には欠かせない。
大抵の子どもは親と同じくらいの魔力量なため、親が指導すれば困ることはない。が、たまーに覚醒遺伝だったりで親や祖父母より多量の魔力を持った子が生まれる。
魔力量の違いは排出のコントロール練習に違いが出てしまうため親子で差がある場合うまくいかない。
蛇口を捻るように出す両親と違い、爆発寸前の魔力を常に抱えている子どもとなると勝手が違って教えることができない。
一旦蛇口を捻ると勢いづいて閉まらなくなり長時間垂れ流し状態が続く。周囲の影響と本人への負担が大きくかかってしまう。
強制的に息を吐き続けされるような苦しさに幼い子どもは耐えられず衰弱することもあった。
そのようなことがないように、親子で魔力量の差が出た場合の対処法が村や町で共有されている。
都会であれば、そのような子は学校に行き魔力の多い教師から学ぶ。
少しコツがあり蛇口ではなくスイッチのオンオフの感覚を掴む必要がある。
最初は魔力が多い教師が子供の中にあるスイッチを見つけ出して、体内で強制的に切り替えをさせて体に覚えてもらう。
そうやって学べば一ヶ月ほどで自力でコントロールが出来るようになっていくものだ。
それが出来ればあとは、他の子供と同じように学べば、生活魔法も問題ない。さらに魔法学科に進学すれば魔法士や法具開発者などになることもできる。
逆に田舎にそんな子が生まれた場合、教えてくれる人がおらずコントロールが出来ないまま適度に魔力を爆発させ空にさせる方法を取る。
体内から魔力が溢れ出る前に全力で吐き出すように叫ぶと蛇口から一気に放出されて少し苦しいが短時間で済む。
田舎の子は肺活量が多く一気に吐き出せるのではないかとう調査が残されている。
スッキリ出し切ればあとは家に帰って日常を送りまた溜まり出したら叫ぶ。
それをある程度成長するまで繰り返しながら、なんとなく出し入れの仕方が分かるようになり大人になれば器が出来上がり魔力が爆発することもなくなるというが、田舎のやり方である。
小さい頃は爆発しそうな子を山に連れて行き、ほらここで出しな〜と親は呑気なもので、土地が空いているので土を抉ろうが木を薙ぎ倒そうが問題ない。
ついでに開墾するくらいの勢いである。
大人になる頃には落ち着くのが皆分かっているので、たまにいる多量の魔力を持つ子どもだからといって恐れられたりもなく普通の子どもとして扱われる。
ただ、魔力のコントロールを学ばなければ人より細かい放出が出来ないので必要以上の水を出して家の中は水浸し、火力が強くて炭のような食事が多々あり大人になっても本人が困ることが人より多い。
ルーズは、ひいひいお婆さんが没落貴族の末裔だったとかで、隔世により魔力量が多く生まれた子だった。
貴族は魔力量が平民より断然多い。その昔戦争や国中が飢饉に瀕した時に魔力量が多いものが活躍し貴族になったものが多く、今でも平民と貴族では魔力量の差が歴然とある。
ルーズのように覚醒遺伝の場合や血筋関係なく魔力量が多くなることもある。
稀に魔力が少ない両親から魔力が多い子が生まれるという一般常識的な認識である。
ただ、ルーズは魔力量が多いだけではなく不思議な力が使える子どもだった。
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