第4話
本文
暴れるのをやめ『分かりました』一言そう言うと周りは、やっと終わったとばかりに忌々しそうな顔で一瞥したあと仕事に戻って行った。
あちこちと痛む体を無理やり動かし、未だ残る邪魔な観客どもの前を素通りする。
部屋の隅にある箱から袋をがさっと掴み拝借する。
急な片付けになり袋なんて持参していないためギルドの備品の袋をかっぱらった。
部長は平民の私がギルドの備品を使うのを極端に嫌がっていたが知らない。最後だ好き勝手使ってやる。
自分の机の引き出しや棚から私物を取り出し袋に次々と入れていく。
要らないものはそのまま放置。
''残っているものは捨てておけ"
走り書きのメモを置いておくなくても勝手に捨てるだろうがあった方が捨てやすいだろう。
私物はそれほど多くないが自分で買った資料や魔法具の扱いに頭を悩ませた。この先仕事を辞めたルーズが使うかどうか分からないものだから。
早く出て行かなきゃだし、どうしよっかなぁ。
常識的な退職なら欲しい人に譲るなりできるが、なんせクビなので。
とりあえず速さ重視で、持っていくもの、捨てるもの、不明なものにどんどん分けていくと机の中に一枚だけしまってあった彼とデートで撮った写真を見つけた。
瞬間破り捨てそうになったが、触れることすら嫌悪して結局そのままにした。
こんな写真まで撮って、一方的な付き纏い…笑える。
まだ交際してから一ヶ月ほどだったため、友達よりも近いが親密というほどではない初々しい2人の写真に、喉の奥から黒い呪いを吐き出しそうになるのを抑える。
あらやだ、うっかり呪ってしまうところだったわ。
危ない危ない。
その後もさっさと片付けを進めていった。
移動してから三ヶ月という短い期間だったおかげもあり迅速に作業を終わらせることができた。
結局資料やら魔法具もそのまま残すことにした。
勝手に持ち出すな、といちゃもんをつけられる可能性が高いからだ。
ルーズが自分で買ったり作ったものだが、あの部長は何を言うかわからない。安全第一で逃げることにしたのだった。
さっさと帰れと、さきほど言われたので荷物が片付いてすぐに飛び出す。
引き継ぎなんか知らない、勝手に困ればいいんだ。
資料はバラバラの順番で机と棚にしまった。
魔法具は全て魔力を空にしておいた。
外に飛び出た瞬間、明るい青空に迎えられ禍々しい気持ちから解放された。
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