弐拾参ワ『A団地』

  19XX年日本の人口が爆発的に増加

  した時代。

  各都道府県に多くの団地が建設され、

  一部の地方では『団地町だんちまち』と呼ばれた

  地域もある。


  これから語るのはその団地町にある

  A団地の3号棟に住む4人家族の話。


  404号室この部屋で『一家心中』が

  起きたらしい。

  そう警察に通報したのはA団地の管理人

  さんだ。

  詳しく事情を聞こうとすると…


管理人「私は発見者では有りません、2号棟の住民から詳しく聞いて下さい。A団地の3号棟まで来て調べてもらえませんか?」


  管理人は用件を言い電話を切った。


  3号棟に着くと管理人と発見者だと言う

  2号棟の女性住民が待っていた。

  事件の部屋に行く前に当時の状況を

  教えて欲しいと言うと、

  2号棟の住民は俯き弱々しく答えた。


2号棟住民「朝ベランダで洗濯物を干していると向かえ…えっと、3号棟のベランダで大きな逆てるてる坊主があるなって思ったんです。よく見ると子供だったので、危ない遊びしてるなぁくらいしか最初思ってなくて…。夕方仕事から帰って、洗濯物を取り込む時にベランダに出てみると、朝見た状態から変わってなくて、流石に違和感を感じ…目を凝らして中の部屋の様子を見たら、大人の足元が2足宙に浮いていました。首つりだと瞬時に分かったんですが、直接、部屋に入る事が出来ないので管理人さんに連絡しました」


  管理人は無表情だった。

  警察の私が来るまでに話を聞いて

  いたようだ。

  管理人は事件の部屋の玄関の鍵を

  差し回してみると…


管理人「閉まった?…と言うことは開いていた。不用心ですね」


  再度鍵を差し回して玄関を開けると

  部屋中に血生臭い匂いがした。

  壁や床、家具にまでにべっとりと血が

  飛び散っている。

  ベランダを目指して部屋の奥へ進むと

  住民が発見した通り、男女の大人2人が

  首を吊っている。

  次にベランダへ行くと案の定子供の方

  も姉妹だろか2人首を吊っていたというか

  吊るされていた。


  私は証拠の写真を何枚か撮影後、

  残りの調査は我々警察に任せて

  下さいと言い、

  一旦部屋を出て管理人と2号棟の住民を

  帰らせた。


  後日死亡した住民について調べると

  複雑な家庭だったであると同時に男の

  方はDV行為を何度もしていたようだ。

  児童相談所に一度連絡あったらしい

  が、男の名前を聞くと職員は怯え何も

  対処しなかった。

  何故なら男が極悪で有名な極道ヤクザの組員

  だというではないか。

  心中する前夜男の属する三井みつい組と敵対

  する大黒おおぐろ組の抗争があったそうだ。


  この話を上司から聞いた私は一家心中

  で片付けてはならない事件だと思った。

  だが、上司の一言で私は恐ろしさを

  感じる事になる。


上司「A団地この街は警察と極道が裏で繋がっている。余計へたな事したら俺ら警察側があの世逝きさ気をつけろ」


  この事実、私は誰に言えばあの家族を

  救えるのだろうか。


  終

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