拾陸ワ『落武者』
運送会社で大型トラックドライバー
として働く
大阪にあるA社で夕方、翌日納品の
荷物を宵積みしていた。
そこに同じ運送会社で働く50代の男性
淀川「
美菜萌「
淀川「俺は大阪市内。
淀川は不意に自分が運転する
中型トラックの運転席に戻り、
何かを探している。数分後手には
札のような小物を持って戻って来た。
そしてその札を美菜萌に手渡す。
美菜萌「お守り?、しかも身代わり守り?交通安全ではなく?」
理由を聞いてみると…。
淀川「美菜ちゃんが明日納品する会社な、俺ら同業者の間では出るっていう有名な噂があんねん。だから持てって損はないでぇ、貸したるわ🖐️」
その
ささっと帰って行った。
美菜萌「何が出るの?」
そう呟いた美菜萌に、N通会社で働く
40代くらいの茶髪の男性トラック
ドライバーが美菜萌に声を掛けた。
N通男性「さっきの話聞こえたんやけど、あれ
美菜萌「は、はあ。お疲れ様です」
気のない返事をする美菜萌、
今日は家に帰らず近くの
サービスエリアまでトラックを
走らせる。
一般道路しかない田舎町を走る事
2時間、ようやく目的地のサービス
エリアに着いた。高速道路が深夜料金に
入るまでしばらくここで休憩を取る。
トラックから降りて体を伸ばし、肩や
腰を回す軽いストレッチをした。
眠気覚しにブラックコーヒを買って
いると、2時間前に会ったN通男性が
偶然居たので美菜萌は声を掛けた。
美菜萌「お疲れ様です。休憩ですか?」
N通男性「まぁね。予定より早く宵積み出来たから深夜になるまで時間潰しやわ」
美菜萌「私もです。あの同僚が言ってたのですが豊野明に何か出るんですか?」
N通男性は少し躊躇したが話してくれた。
N通男性「落武者やで。有名な桶狭間の戦いで
美菜萌のモヤモヤしていた気持ちが
やっと晴れた。
淀川さんは私の身を心配してお守りを
貸してくれたのか。
あの場ではっきり言ってくれば
良いのに…。
N通男性の話を聞いた美菜萌は少女に
戻ったような目をして輝かせていた。
美菜萌は幽霊や妖怪等が出てくる
怪談話が大好きなのだ。
携帯で時間を見ると深夜0時前。
すでに高速道路は深夜料金の時間帯だ。
N通男性に、出発する事を告げ、
自分の大型トラックへ戻る。
トラックは高速道路を通り愛知県に
入る。しばらく走らせ豊野明市内に
到着したのは深夜2時頃、納品会社の
近くに邪魔にならない距離で
トラックを停める。
しばらく車中で周辺の様子を伺うが、
何も起こらない。
美菜萌は来るのが遅かったかなと少し
落胆した。
そしてアクセルを踏まないように運転
席をゆっくり後ろへ倒し仰向けに
なった時、納品会社の入口付近にある
1本の街灯がブーン…バチバチ!!と
なり、その影からすーと現代には
似つかわしくない甲冑を着た男、
いや落武者が立って
『織〜田〜!!』
叫び声なのか判別出来ない声?が
聞こえる。
美菜萌はキターー!?とテンションが
上がり後ろへ倒した運転席を元の位置に
戻し、トラックから降り落武者へ獣に
遭遇したかの様にゆっくり歩み寄る。
ゆっくりと街灯に向かって歩いている
滑稽な姿である。
落武者まであと数センチ来た所でふっ
と消えてしまった。
美菜萌「惜しいっ!?もうちょっとだったのに😞」
携帯で時間を確認すると、明朝4時だ。
流石にもう出て来ないと諦めトラック
の運転席に戻り再び後ろへ倒し
仮眠を取る。
午前7時頃納品会社の門が開いた、
眠い目を擦り納品会社に荷物を届ける。
会社を後にした数分後、勤務している
運送会社から無線が入った。
無線相手「お疲れ様。帰りさ、滋賀県寄ってくれる?詳細はメール入れるね。よろしくお願いします!」
美菜萌「お疲れ様です。了解しました」
無線を切り、美菜萌は独り言を呟く。
美菜萌「今度、いつ行けるかなぁ。楽しみが増えたわ。あっ!?、淀川さんに会ったら報告しておこう。他にも怪奇現象ある場所知ってるだろうし😏」
終
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