拾弐ワ『犬の散歩』
両親「
誕生日、冬也は念願だった子犬を
プレゼントして貰い、嬉しくて
はしゃいでいた。
父親の友達が柴犬のブリーダーの為
友達価格で値引きしてくれた。
ブリーダーは柴犬に似合う、黄色い
首輪とリードそして子犬用
ペットフードを誕生日プレゼントに
くれた。因みに首輪は成犬になっても
使えるらしい。
母「冬也、子犬に名前を付けなあかんなぁ。
冬也は子犬をじっと見つめ…
冬也「まろ
まろ助「わぁん!」
子犬の高い声が店内に響く。
まろ助は喜んでいるのか短い、
くるんと内巻きになった尻尾を
振っている。
名前の由来は黒毛の体毛に、目の上に
ある白い毛が平安貴族の眉毛に
見えた為、冬也はそう名付けた。
因みに性別はオスである。
子犬を飼ってから2年月日が流れた。
冬也は12歳、まろ助は2歳。
犬を人間で言うと23歳になるので
冬也より遥かに年上になって
しまった。それでも冬也にとって
まろ助は弟のような存在である。
とある金曜日の夕方、冬也はまろ助と
いつものコースを散歩していた。
近所の公園目指して近道しようと、
違う道を進み高架下に入った瞬間、
まろ助が立ち止まる。
全く動こうとしないまろ助に冬也は
声を掛けた。
冬也「どうしたん?まろ。早よ行こうや!」
ぐいっとリードをひっぱても
1ミリも動かない。それどころか来た
道を戻ろうと反対方向に
向いてしまった。
まろ助「くう〜ん。くぅ〜。くわぁん。」
まろ助の尻尾と耳は下がり、
怯えた声を出し、抵抗している。
こんな事をするのは初めてだった、
よほど高架下を通りたくないのだろう。
冬也は高架下を諦めいつものコースに
戻ると、まろ助の尻尾と耳はピンっと
上に向きなり機嫌良く歩いている。
公園に着くとまろ助は休憩無しに
同じ犬種に出会うとお互いのお尻の
匂いを嗅ぎ合い、犬達の
コミニケーションが始まった。
それが終わると再び公園内を散歩する。
するとゴールデンレトリーバーを
連れた飼い主
燿子「こんにちは😃」
冬也「こんにちわぁ。」
燿子「冬也君、帰り道絶っ対高架下通っちゃダメよ!🙅♀️」
高架下…まろ助が嫌がった場所だ。
理由を聞いてみると…。
一昨日高架下で殺人事件が起きた。
被害者は顔が判別出来ない程鼻は折れ
曲がり、目玉が飛び出してぐちゃ
ぐちゃになるまで殴り殺されていた。
犯人は捕まっておらず逃走中。
近所の住民はまだ高架下に潜んでいる
だろうと噂している。
燿子「気をつけて、帰ってね👋🏻」
冬也「はい!お姉さんも👋🏻」
近所でそんな殺人事件が起きていた
なんて知らなかった。
お姉さんが去った後冬也は途端に
怖くなり足がすくむ。
まろ助が冬也に向かって軽く吠える。
まろ助「わん!」
冬也は足に力を入れた。
冬也「!?…い、家に帰ろう」
冬也は早歩きで帰路に向かう。
まろ助のいつもと違う行動、
それはきっと飼い主を守る行動だった
に違いない。
そう思った冬也は家に着くなり、
まろ助の頭をこれでもかと撫で回した
のである。
終
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