捌ワ『学校のプール』
学校のプールには様々な都市伝説や
噂話が今なお語り継がれている。
こんな話を聞いた事はあるだろうか…。
『プールで泳いでいたら足を掴まれた』
『プールの排水溝にお化け潜んでる』
などあげるとキリがないだろう(多分)。
これから語る物語は、他とは異なる
とある学校で語り継がれた話である。
夏休み連日朝から夕方まで多くの
生徒がプールで泳いでいた。
ある日の昼、学校の近所に住む
PTA役員から学校に連絡があった。
PTA「プールは夜遅くまで開放しているのですか?
教師「え?開放していませんけど。調べますので、何時くらいか教えて頂けますか?」
PTA「嘘おっしゃい!?早くなんとかして頂戴!!」
電話はプツリと切れてしまった。
教師「なんだよ、あのおばさん自分の用件だけ言ってさっと切るか普通」
教師は仕方なく夜遅くまで学校に
残った。
深夜0時を過ぎた頃プールを覗きに行く
とバシャっ、バシャっと水が跳ねる
音がする。
音を立てずにプールサイドに近づくと
教師「だ、誰もいねぇ…っ?!」
プールの1コースめの中央に何かが
浮いている。
高密度ポリエチレン等の素材で非常に
軽く先が少し長い楕円形になった
ビート板が落ち、いや浮いていた。
教員「ったく、誰かが片付けるの忘れたのか?」
ビート板を拾うと脳に直接声が
聞こえて来た。
ビート板『ま、待って!!💦』
教師「な、なんだ!?」
ビート板『ごめんさい、ごめんなさい。あと少しなんだ!あと少しで…25m泳げそうなんだ!!』
教師「は?え?…何?およ…ぐ?」
教師は混乱していた。
ビート板が泳ぐ?いやいやいや、
何言ってるんだよ。
ずっと浮いてる物がどうやって
泳ぐんだ!?
それ以前に物が意志を持ってることが
おかしいだろ!?
とにかく用具入れに片付けようとした
瞬間再び声が聞こえた。
ビート板『待ってよ!お願いだからもう少しだけ、泳がして!!』
ビート板の必死のお願いに、
教師は応えた。
教師「わ〜かった。じゃ見てやるから泳いでみろ」
教師はビート板を1コースめに浮かした。
ビート板は
勢いよくプールの上を
バシャッ、バシャッ。
教師はこの音でPTAのおばさんが
連絡して来たんだと合点がいった。
しかし、泳ぐと言うより飛んでるん
だよなこれ。
教師はビート板に話を聞いてみた。
教師「ビート板、お前はどうして25m泳ぎたいんだ?」
ビート板『ボクは…人間の役に立ちたい!ただ浮くだけの存在になりたくないんだ!』
教師は鳩が豆鉄砲くらったような
顔をしている。
は?いや、お前の仕事は人間が水泳で
キックの練習する為に作られた
道具だろ。
なにか?モータ付けて人を乗せたい
ってか。
それもうビート板じゃねぇし、
危ねぇわ!!
教師「そ、そうか。けどよお前が浮いてるおかげで人間が沈まないんじゃないのか。」
ビート板『役に立ってる?』
教師「あぁ。立ってるぞ!俺も子供の頃全く泳げなくてな。ずいぶんお前に助けてもらったもんだ。ありがとな!」
教師は一瞬、ビート板が嬉し涙を
流したように見えた。
ビート板は用具入れに帰って行く。
教師「いいのか?25m泳ぐ練習しなくて」
ビート板『うん。ボクはこのまま浮くだけの存在になるよ。役に立ってると言ってくれてありがとう。…先生』
あの日、教師がビート板と会話した
以降。夜、学校のプールから水飛沫の
音が突然しなくなったと近所で噂が
流れたのである。
終
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