漆ワ『井戸女』
都会の学校から林間学習で自然豊かな
隣の県に訪れている。
小学5年生の
林間学習1日めの夜
旅館の方で農園で採れた野菜や
フルーツ等美味しい夕食を食べ終えて
から1時間後キャンプ場で
キャンプファイヤーをした。
皆んなで燃える薪の周りに集まり
一定の距離を置いて座る。
そしてひたすら燃え続ける薪を
見ていた。
地味と言えば地味なんだけど妙に
落ち着く。
担任が腕時計を見て話す。
担任「そろそろ時間だな」
灯はもう旅館に帰る時間かなと
思い立ち上がり、ズボンについた砂を
払う。
担任「じゃあ、これから肝試しを始める」
生徒達は口々に『やだ〜』、
『さんせ〜い』等と言って盛り上がって
いた。その様子を見た担任は
今日イチの笑顔を見せる。
担任「まずは
◇肝試しルール◇
2人1組になってこのキャンプ場から
出発する。
自然施設館の横を通って小屋に行き
段ボール中にある、ガチャガチャ程
の手に収まるカプセルを取り、旅館の
大広間に帰ってくる。この時決して
カプセルの中身を見てはいけない。
ルールは簡単だ。
それにキャンプ場から旅館まで一道
よほどの方向音痴で無い限り迷子に
なることは無い。
それに通過する場所には人数確認の
為担任以外の教員が待って居てくれる
らしい。
灯の班は
昼食での出来事は思い出さないよう灯は
首を左右横に振る。
それよりも肝試しがあるなんて
聞いてない。😖
灯は誰と組もうか悩んでいたら萌香が
灯にわざとぶつかり、猫撫で声で
光貴の腕を掴んだ。
萌香「光貴くぅ〜ん。萌香とぉ組んでぇ❤️萌香、お化け怖いのぉ🥺」
光貴は黙ったままだ。
俺も怖いんだよなんてとても言える訳
なく、チラッと灯の居る方を見ると
卯月と仲良く話していた。
光貴「なんだよ、灯の奴…。幽霊とかお化け屋敷嫌いな癖に…」
萌香「何か言ったぁ?」
光貴「別に…。」
灯は肩を抑えていた。
萌香の奴思いっ切りぶつかて来る
なってぇの!!
卯月「灯ちゃん、大丈夫?」
灯「うん、平気、心配させてごめん」
早速並んだ順に肝試しは始まった。
真ん中くらいに並ぶ光貴達、
その後ろが灯、卯月ペアだ。
担任から懐中電灯を渡され、
暗い夜道を照らす。
灯「真っ暗〜」
卯月「そうだね。でも空を見てごらん」
卯月は見上げながら空を指差した。
都会と違って星が沢山見える。
今にも手が届きそうなほど近い
距離だ。夜空に感動している間に
施設の横を通ると
灯は怖くなって卯月の手を
ぎゅっと握った。
卯月「灯ちゃん。怖い?」
灯は黙ったまま、首を一回頷いた。
卯月「大丈夫だよ。なにかあったら僕が守るからね」
灯「…うん。」
施設を過ぎると小屋が見えた。
小屋の中に入ると中央には大きいな
段ボールがあり、側面には張り紙が
貼ってがある。
『よくぞ辿り着いた。カプセルを1つだけ手に取るが良い。ただし!決して中身を開けるではない。開けたら最後…』
灯は歯切れの悪い文章だなと
思い思わず笑ってしまった。
灯「最後って何?😅」
卯月「なんだろうね。後は旅館に帰るだけだね」
小屋を出て旅館を目指していると
灯達は井戸を見つける。
灯「こんな所に井戸あるんだね。あたし初めて見た」
興味本位で井戸に近づく灯。
卯月は懐中電灯で井戸の周りを照らす。
すると周辺には沢山の人骨が
散らばっていた。
卯月に突如頭痛が襲う。
あまりの痛さにその場でうずくまり、
卯月「い、痛いっ!?…あ、灯ちゃん。覗いちゃ…」
灯は卯月の声に気づかず、
井戸の底を覗き込んでしまった。
井戸の底は暗く本来なら何も
見えないはずだ。
だけど灯には何かが視えてしまった。
底からじわじわと伸びる腕に灯の体が
持って行かれそうになる。
体が動かない!?
精一杯声を振り絞り、
灯「助けて!!」
灯の叫びは卯月に届き激しく痛む
頭を我慢し、井戸の中に引き込まれ
そうな灯の上半身を思いっ切り
引っ張り井戸から離した。
灯「あ、ありがとう😭」
卯月「休んでいる暇はないよ!灯ちゃん走れる?」
灯「う、うん。」
2人は手を繋ぎ井戸から走った。
息を切らして旅館の大広間に辿り着く
と担任が仁王立ちで待っていた。
担任「遅かったな。お前ら心配したぞ」
担任は灯達の肩をポンっと軽く叩く。
担任が言うには灯達が最後に到着した
そうだ。あまりにも遅ったので
捜索しようとしていたらしい。
心配かけて悪い事をした思いと、
無事に旅館に帰れた安堵で灯は
パタリとその場に倒れた。
翌日の朝、目が覚めると女性教員の
部屋にいた。
女性教員はすでに起きていた。
女性教員「昨日は大変だったね。一本道なのに迷子になって」
卯月が担任に遅くなった理由を
話してくれた。だけど嘘話だ。
あたし達は迷子になっていない。
井戸に行った。井戸の中で白い服を
着た髪の長い女がいた。
本能的に見てはいけないとわかったが、
目を逸らすことが出来なかった。
どうしてあんなとこにいるのだろう。
卯月に聞いても何も答えてくれ
なかった。ただ
『早く忘れた方が良い』
はっきりそれだけ言ってくれた。
終
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