伍ワ『飛び込み癖のサータデェイ人形』
米国で創業し世界で有名なフライド
チキンチェーン店ゴールドフライド
チキン略してDFC。
創設者に似た金色に輝くおじいさんの
姿をした看板人形が、日本の大阪に
ある
怪奇現象が起きる噂話がある。
それは深夜2時から3時の間に起こる
らしい。
バイトAと副店長は店内を掃除中だ。
バイトA「副店長、知ってますか?」
副店長「何が?」
バイトA「俺らがいるこの鈍兎彫店の入口前に飾ってある看板人形ゴールド・サータデェイが、深夜動いてるらしいっスよ」
副店長「人形が動く?そんなわけありえへんわ。商店街におる酔っ払いのおっさんが勝手に動かしてるんやろ。ほんで遠くの方で見た誰かさんが『動いとる〜』って騒いでるだけやで」
バイトA「そうなんすかねぇ〜。」
副店長「そうやって!ほらA君入口の鍵閉めてや。早く帰らんと終電に間に合わんで」
バイトAは入口の鍵を閉めた。
バイトAと副店長は店内の従業員入口
から出てそれぞれの家に着く。
深夜2時過ぎ鈍兎彫店入口前
サータデェイ人形は肩をぐるんぐるん
回している。
サータデェイ「今日も働いた、働いた。疲れた〜。」
一日中立っているだけなのは本当に
疲れる。逆に動いている方が楽では
ないだろうかと思うサータデェイで
あった。
いつもの通り散歩がてら
建っているお菓子メーカーの看板
ポリゴ青年に挨拶しようと
サータデェイは歩きはじめた。
鈍兎彫店から5分圏内にポリゴ青年は
いる。
あの人もずっと両手と片足挙げて
動かないでいるからさぞお疲れ
だろうなぁ。
サータデェイは杖を左手に持ち替え
右手で手を振り、穏やかな口調で
ポリゴに声をかけた。
サータデェイ「お疲れ様です、ポリゴさん。今日は何かありましたか?」
ポリゴ「あ、どうも。お疲れ様です!サータデェイさん。私は毎日鍛えてますので疲れていませんよ!…数時間前の話ですがね、
ポリゴ青年は笑って答えたが、
目が笑っていない。彼は精一杯
笑っているつもりでいるらしい、
だけど恐怖を感じてしまうのは
彼が看板であり表情筋がないから
だろう。
それよりも川に飛び込む行為に
サータデェイは興味が湧いた。
早速、サータデェイは杖を足元に
置き川に飛び込んでみた。
ドボン!!
音と共に橋側に水飛沫が飛ぶ。
サータデェイは生まれて初めて川に
入った。浮くことはなかったが
足がつくので川を歩く。
とても気持ちが良かった。
人間の気持ちが少し解ったような気が
した。
外に毎日いると砂埃やお客さんの
手垢が付く。数ヶ月に1回程度店員が
拭いてくれるが毎日はしてくれない
ので、正直不満だった。
それが川に飛び込むことで解消される
のであれば嬉しいことはない。
この日を境に、サータデェイは毎日
川に飛び込むようになった。
雨の日も風の日も。
ポリゴが人間の気配に気づき止める
よう説得した日でさえ止めることは
なかった。
ある日の夜副店長は顔を真っ青になり
ながらも働いていた。
バイトAは心配になり副店長に
声をかける。
バイトA「副店長、大丈夫っスか?」
副店長「大丈夫やあらへん…。最近な
バイトA「なんかあったんスか?オレで良かったら話聞きますけど」
副店長「ありがとうな。俺な見てもうた!A君がこの前話してくれた噂話、あれ
副店長の言うバージョンアップとは、
どこで身につけたのか知らないが川で
手だけを平泳ぎにして水を掻き
鈍兎彫川を歩くサータデェイ人形の
ことだ。
数分後副店長とバイトAはサータデェイ
人形のある店の入口に向かい人形を
上から下まで舐めるように見た。
最近手入れしていないはずなのに
あまり汚れていない、だが足元が凄く
傷が付いていた。
美しい金色のメッキが剥がれ銀色が
見える。
バイトA「傷だらけですね。この前の台風で倒れたんじゃないですか?」
副店長「
数時間後の深夜2時頃、鎖でグルグル
巻きにされたサータデェイ人形はなんと
鎖を引きちぎり日課の川へ向かった。
とうとう人間に見つかってしまった。
じゃあ、今日は別の場所に行こう。
近くに海老専門の
大きい海老のオブジェのエビス君が
いる場所に向かった。
エビス「おい!サータデェイ。ここは汚ねぇから泳ぐのやめた方がえぇで」
サータデェイ「大丈夫ですよ!汚れてもいつもの川に戻れば綺麗になりますから」
エビス「そう言う意味とちゃうねん……あっ!?」
エビスの忠告も聞かずサータデェイは
ぐんぐん川を歩く。
すると川の深い所で足が何かに
引っ掛かり動けなくなってしまった。
汚れた川はぬるぬるしていて
サータデェイは転んでしまい
元の川に戻る事が出来なくなって
しまった。
翌日の朝出勤した鈍兎彫店の店長は
サータデェイ人形が居なくなったと
警察に連絡した。前日の夜遅くまで
残っていたバイトAと副店長は
容疑者として疑われ警察に事情聴取
されていた。
鎖で固定したのは事実ある。
しかし捨てる行為はしていないと
何度も訴えたが、聞き入れられず2人は
業務妨害の罪で捕まり仕事を
クビになった。
サータデェイ人形が店から居なくなり
24年の月日が流れた。
今現在もサータデェイ人形は
見つかっていないそうだ。
終
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