肆ワ『狗鍋』
はじめに
この話は残虐的かつ動物好き、
愛犬家様にとって不愉快になる
可能性があります。
それでもよろしければこのまま下に
お進み下さい。
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
今を遡ること60年以上前の出来事で
ある。
高知県の田舎のとある村に住む少年
祖父と祖母の3人暮らしだ。
両親は居ない。
母は充を産んですぐに亡くなった。
元々体が弱かったらしい。
父は母が亡くなりその悲しみに
耐えきれず、家を出たまま帰って来ない。
生活は裕福では無くどちらかといえば
貧しい方だ。
あの頃、戦後から約15年くらい経った
頃の日本は貧しいなんて
当たり前だった。
学校に通わせて貰っている、
それだけで充は嬉しかった。
勉強は得意ではなかったけど、
教室に行けば友達と会えるから
寂しくなかったのだ。
朝、充は焦げ茶色の布製で作られた
ランドセルを背負ったまま
学校に行く前に家の庭で飼っている
ペットに挨拶するのが日課だ。
充「お早う。
「ワン!」っと軽く充に向かって
吠えた。
『いってらっしゃい』と彼に言った
のだろう、手の代わりに尻尾を
ぶんぶん左右に振っている。
茶々とは犬のことであり、
毛が茶色だったから見たままの名前を
付けた。
近所の山で遊んでいる時、見つけた
野良犬だった。
見つけた時は子犬だったのに、
水で薄めた牛乳と人間の残飯を食べて
すくすく育ち今では立派な成犬だ。
特に躾けしていないが充や祖父母の
言う事を理解するお利口な犬である。
ある冬の寒い日の夕方、祖父母は
牛の世話を終えて農具の手入れを
していた。
祖父「今年の冬は
祖母「そうやき。夕飯鍋にやるが?」
祖父「そうだな。充はまだ学校におるかえ?」
祖母「とっくに学校終わっちゅうはずちゃ、家に帰らき海に行っちゅうやろか?」
充は祖母の予想通り海に行って
海釣りをしていた。
家に帰ったら手伝いで牛と鶏の世話を
させられる。
充は牛が苦手だった。
自分より体の大きい動物が目の前に
いるだけで食べらそうな恐怖感が
あったからだ。
充のお腹が鳴った。1匹も釣れなかった
けど、この寒空の下ずっと居れる
わけがなく家に帰る事にした。
充「ただいま〜」
祖母「おかえり。夕飯出来てるから手を洗って来て、早よぅ食べやー」
充は家の外にある洗い場で手を洗った
その後居間に戻らず庭の犬小屋に
向かった。
いつもは充の匂いを察し小屋から出て
来てお迎えしてくれるのに今日は出て
来なかった。
寒いから小屋から出てくれないのかな
等と考え居間に戻り夕食を食べる。
夕食は鍋だ。『ひやい日は鍋に限る』
なんて言いながら祖父は手作りの
芋焼酎を呑んでいた。
今日の鍋は珍しく肉が入ってある、
なんの肉かは充は解らなかったが
美味しい、美味しいと言いながら
喰べた。
翌朝、祖父母の会話を偶然聞いてしまい
充はショックを受けてしまった。
祖母「充にゃ悪りぃ事をした〜😞」
祖父「仕方がないよ、儂らが生きる
『ああする』つまり茶々(犬)を殺生し
皮を剥いで肉取り鍋の具材にした。
充は茶々の居ない犬小屋の前で誓った、
僕は一生犬を飼うことをしない。
こんな悲しい出来事は二度としたく
ないのだから。
終
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます