冷花(タイトル未定)

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第1話 前編 森で生まれた少女

 ささやかな風に木の葉が靡き。天からは煌びやかな光が差し込む。

 辺りは花で満たされる自然感溢れた森を一人の少女が歩いていた。

 その容貌からして4歳前後であろうか。

 少女は森の中でも一際綺麗な道を歩きどこかを目指しているようだった。

 綺麗な道は、少女が歩いていこうとする方向に続いていく。形成されていく。


 まるで森全体が少女をかのように。

 少女が目的地に着くと、そこには大きな大きな樹木が育っていた。


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 トントントン、

誰かがドアをノックしているようだ。

『んあ゛?』

ドアを開けて返事をすれば、そこに現れた若人が朝っぱらからこれでもかと大きな声を荒げて言う。

「お!!人住んでんだ!!ちょっと爺さん、この子預かってくんない?そこの森で見

 つけてさ~」

見るところノックしてきた輩は右手に籠を持っておりそれを儂に預けようとしているようだ。はっきり言って迷惑だ。帰ってほしい。

『預かるって、なんだ。その森の中にでも入るつもりか?であればやめた方が良い。あの森は危険じゃぞ。』

「それがさぁ、入ろうと思ったら人間の女の子が出てきて、いやそりゃぁ、ほっとけないじゃん!!ちょうど近くに家があったから助けを求めに来たの――。まぁまぁともかく、この子をよろしく頼むよっ!!ほんっとこんな山奥じゃ病院にも連れてけやしないんだから~~」


 若人はそう言うとそそくさと家から出て行った。なんという傍迷惑なのだろう。任された籠を見ると、少女がちょこんと入っておりこちらを見ているようだった。いや、正確には睨みつけられていた。

『きみ、家族はどこなんだい。』

返答はない。睨みつけてくるばかりで何もしてこない。

(見たところ5,6歳といった所だろうか...)

『とりあえず家に入ろうな。』

そういって手を差し伸べた途端...

『イダッ何噛んでるのやべてよっ!!』

家に変な子が来てしまったようだ。


 為す術もなく儂だけ家に入ってしまった。。まあ放置していても籠から逃げ出していくことはないだろうと信じスープを作ることにした。

 言うまでもなくを家の外においていて人に見つかりでもしたら、儂は確実に変質者となる。第一奴は(何故か)裸だ。儂が捕まる未来も無くはない。

いや、捕まることはない、か──


 あの少女も、さっきの変な若人も、何故人気のないこんな場所に何の用があって来たのだろう。人が来ないからこの場所に住んでいるのだ。儂の家に訪れる客なども生涯いるはずもないと思っていた。。

 まぁ良い、そんなことは。食事中に無駄事なんてもってのほかだ。早速今日のスープを食べようではないか。スプーンをよぼよぼな右手で持ち一口目に向かおうとするとき。扉の向こうで音が鳴った。ぐぅぅぅぅ。


『ふは、なんだきみ、腹が減ってるんじゃないか。』

 どうやら少女は恥ずかしがっているようだった。さっきから無表情だった顔が、次第に赤らめる。

『一緒に食べよう。ところできみ、お母さんはほんとにどこなんだい。』

【・・・】

 どうやら家族のことを話すという以前に、儂の質問に口答えすらしてくれないらしい。なんにも答えてくれやしない。しかし──

ゴクッ

じっくり煮込まれた儂特製のスープを飲んだ顔は笑っているように見えた。

『なにか名前で呼んでみよう、反応があるかもしれない。』

 そういって改めてじっくり身体を見てみることにした。よく見るとその少女の胸元には、青い花のようなものがついている。

『それは...』

その言葉を耳にし不思議に思ったのか少女がこちらを見つめてくる。

『い、いや、なんでもない。冷花なんてどうじゃ。ぴったりじゃないか。』

 冷花、という名前を聞いた途端に、少女はくしゃっとしたような笑顔を見せた。

世で動物に名前を付けるのは、こういった感覚だったのだろうか。

『冷花、冷花。なかなか聞かなくて良い名前じゃないか。ちょいとナンセンスかもしれんけどのぉ』


もう大分歳をとってきたが、もう少しだけ、やらなきゃいけない事が増えたみたいじゃなぁ、、                        〔第一話前編 完〕

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