父の病気に思うこと①

 父の通院に付き添ってきました。術後三ヶ月、採血の結果は腫瘍マーカーの値も問題なくて、まずはひと安心しました。


 高齢の父が手術を受けること。


 それが最善の治療方法で、手術しないという選択肢の他はなく、転移も見られずに切除できたことは良かったです。

 でも、それでも、長い目で見たときに、手術して良かったと言い切れるのかどうかはまだわからない気がします。高齢なので、身体への負担はやはり大きくて、ひとまわり以上も小さくなってしまった父の様子を見て、少し気持ちが揺らぎます。


 今の病院のシステムは、高齢者には優しくないなぁと思っています。

 父は年齢の割にはとても元気です。足腰もしっかりしているし、頭もハッキリしています。携帯でメールもLINEもします。

 その父でも診療のスピードには、あまりついていけないようでした。ゆっくりと理解したくても、その前に次々と物事が進んでいってしまう。その場ですぐに何も言わなければ、聞かなければ、そのままです。

 検査、入院、手術という流れの中で、父は頭では必要だとわかっても、本当に全て納得していたのかどうか、私は父の気持ちに寄り添うことができていたのか、心もとない気がします。


 医療知識があって、病院勤務の経験がある私にとっては、ごくあたりまえのこと……術前の検査の流れ、病気のこと、手術の内容なども、

 一般の患者さん、特に高齢の方達には、もう少しゆっくりとわかりやすいように説明しないと、おそらくこれは理解できていないだろうなぁと感じることが多くありました。実際に、父もいろいろなことを一度に聞かされて、途中から適当に聞き流していたみたいです。

(本人曰く、説明の途中からはただ、はい、はいと返事していただけ。それじゃ、まずいでしょ、お父さん……)

 ああ、それは思い違いをしているということには、あとでもう一度説明しました。


 病院側の事情もよくわかるのです。あらゆるスタッフが少なすぎて、余裕がなくて、忙しすぎます。やりたくてもできない。だから、より高いこころざしのある人ほど辞めていくし、仕事が早い人ほど仕事量が更に増えて疲弊していく。悪循環の繰り返しです。それは私も以前の職場で、経験済です。


 その中でも、決して、流れ作業的で対応が冷たいということではありませんし、頑張っておられる職員の皆様、特に入院中にお世話になった看護師さん達には、父は本当に感謝してました。


 再発率は10%といわれても、定期的に経過を見ていかなければならないし、父は高齢なので今後、他の問題が出てくることもあるでしょう。

 医療者側の立場を知っていて、介護職の経験があったとしても、近しい家族の大きな病気は私にとって初めてのことで、身内だから冷静でいられない、お互いの甘え、そして感謝の気持ち……と、いろいろ思うことがありました。


 ある日突然、病気が見つかって診断されること、それは誰にでも起こりうることで、決してその人が、あるいは誰かが悪いわけではありません。

 焦らず、慌てず、諦めずにいられたらいいなぁと思います。そして、少しでも何か支えになれたなら、そう思っています。

 

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