時々シッポ④ 〜仔犬、来たる
私も主人も団地っ子でした。団地はペット禁止です。
結婚して、公営団地から戸建てに引っ越したとき、犬を飼うのが憧れでした。
でも、共働きで昼間は不在の我家です。犬と暮らすのは、将来、時間があるようになったら(退職後とか)と思っていました。
「犬を飼いたいんですよね」
あるとき、職場で何かの話の折に、ぽろっと私が先輩Yさんにこぼしたこの言葉が、この先どんなことを招くことになるのか、このときは知る由もありませんでした。
それはある休日のこと、外出から戻ると、留守電にY先輩からのメッセージが。
『犬が来ちゃったんだけど! どうする?!』
犬が? 来ちゃった??
ど、どゆこと??
どうするも、こうするもありません、訳がわからず、とにかくY先輩に連絡をとりました。
事の顛末はこういうことでした。
Y先輩の元同級生Aさん(定期的に通院されていたので、私も顔は知っていた)のご近所宅で仔犬が生まれた。飼ってくれる人を探している。そのうちの一匹を、犬を飼いたい人(私のこと)がいるから貰い受けて、Aさんが預かっている。
えええええー!!!
いや、今すぐ犬が飼いたいという話に、いつのまにか、なっとるー!
そんな、今まで犬を飼ったことなんて、ないんですけどっ! アワアワ。
Y先輩がAさんの連絡先を教えてくれました。
Aさん曰く、両親とも雑種だし、きっと丈夫で飼いやすいと思う。Aさん宅には老シーズーがおり、仔犬のエネルギーにはついていけないらしい。でもとても可愛いから、このまま情が移って、僕が飼おうかな、とも言ってました。
Aさんから送られた仔犬の写真を見たとき
うっ。か、可愛い……。
シロクマの子供のように真っ白で、まだちっさなタレ耳の先だけが茶色、ムクムクした短い手足、黒いつぶらな目。
もう一発でやられました。
このコをウチにお迎えしたい!
皆様、仔犬のあの圧倒的な可愛いらしさに、決してだまされてはいけません。仔犬は悪魔です(この話の詳細はまた今度)。
一週間だけAさん宅で預かってもらい、その間に必要な物を準備しました。
Aさんがわざわざ車で、家まで仔犬を連れて来て下さいました。
「はい、どうぞ」
渡された仔犬を膝の上に抱いたとき、その温もりと生命の尊さを感じました。それは、この生命をこれから守っていかなければならないという、責任の重さでもありました。
当時、単身赴任中で週末だけ帰宅していた主人と、フルタイムで仕事をしていた私、特に仔犬を飼うには留守番の時間が長すぎて、最初から飼い主としては失格です。今でも申し訳ないことだったと思っています。
こうして、何の知識も経験も覚悟もなく、突然、勢いで仔犬を迎えることとなり、ほぼワンオペ育犬の日々が始まりました。
大げさではなく、犬を飼うことで人生が変わった、と思っています。
ナポと名づけられる仔犬との出会いは、こういう御縁で、このあと15年余りを一緒に過ごすことになるのです。
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