第7話 入学式②



中世の城壁の様な壮大な校門の前には、わたしと同じ新入生らしき生徒達で溢れ返っている。


校門の上からは、"入学おめでとう"と書かれた横断幕が吊るされていた。


校門をバックに写真を記念撮影をする生徒、猫背で黙々と歩いているメガネぼっち、携帯端末をいじるフリをしながら周りの観察している小太りぼっち。

そして……ほほぉ……あれは……。


染めたばかりであろう少し明るめの茶髪に軽くあてたおしゃれパーマ、一件、見た目は陽キャに見えるが……。


あれれ〜 おかしいぞ〜。


ーーわたしの中の陰キャレーダーが反応した!


陽キャにしては挙動がぎこちないし、お昇り感が出ている!クンクン………これは隠しきれない陰の匂いがしますねぇ……高校デビューですかなぁ? ニチャア。


ーー陰キャ同士は惹かれ合う。


陰キャは同族に対しての嗅覚が強く、ついつい目に付いてしまうのだ。

おまけに自分の事は棚に上げ、俺はあいつとは違うんだ!という同族嫌悪アレルギーに陥る事が、ごく稀に、時たま、めちゃんこある。

とても悲しい習性であり、この習性を古来のことわざで"棚から愚かぼっち"と略して"棚ぼち"いう。

民明書房、孤独の美学より抜粋(カス嘘)。


わたし?私は違いますよ〜(笑)

他の陰キャとは全然違うんで!(棚ぼち)。


なんかボッチ紹介&解説コーナーになっちゃいましたね!犬はワンって鳴くし、ボッチもオンリーワン!

これが本当の今日のワンコつってね。(激ウマギャグ)、う〜ん…我ながらワンダフル!(激ウマギャグⅡ)


ボッチ同士で徒党を組めば脱ボッチなんて簡単では?と思ったそこのあなた!はい、甘〜い!考えが甘過ぎます!!


川のように穏やかに流れされて生きている我々は、基本受け身なので声を掛けて貰う必要があるのです。

自分から声を掛けるなんて無理無理かたつむりなので

特異点こえをかけてるくれるひとを待ち続けるしかないのです。


ワンチャン(ワンコだけに)、朽ちるまで一生待ち続けるまであります。マジで忠犬じゃんボッチ!泣けるわぁ……まぁ……勝手に待ってるだけなんですけどね(真理)。



勝手に理解者ヅラをして解説をしていると、スマホをいじったフリをしていたぼっちが足をくじき、盛大にズッコケた!


手に持っていた携帯端末が弧を描き、空中に放り出される。それは地面に落ちるとガシャン!と音を立て、周囲の目を引いている。



あ、あれは恥ずかしい!!……。


陰キャは意外と承認欲求に飢えているので自分は本気を出せば凄い!とてつもないポテンシャルを秘めている!何か一芸に秀でて目立ちたい! と常日頃脳内で妄想をしているのですが、この目立ち方はナンセンスです!ただただ悪目立ちしているだけなのではずかちぃ!


は、はわわっ!ど、どうなってしまうんだろう!と慌てていると、高校デビューボッチと猫背ボッチが、スマホボッチに近づいていった。



「き、君……大丈夫?」

デビューボッチが手を差し伸べる



「デュフッ……あ、ありがとう」

手を取り立ち上がるボッチ。



「こ、これ……落ちてたござるよ」

落ちていた端末を差し出し、興奮した様子で語り始める猫背ボッチ。


「このキーホルダーって劇場版、超級魔法武闘伝プリティー♡コスモの初回放送記念キャンペーンで抽選で3名にしか配布されていないと言われている、伝説のコスモ‪☆キーホルダーでござるよね!?(早口オタク)」



「デュフッ…テレビで人目見た時に思わず応募してたんだ。ネット記事で100万人は応募したって聞いていたから、当選した時は、人生の運を全て使い切ったと思ったよ〜」



「そ、そのキーホルダー、拙者も持っているでござる!!」



ウ○トラマンの変身ポーズの様にキーホルダーが付いた端末を空高く掲げる猫背オタク。



「デュフッ!?…本当!?コスモ‪☆キーホルダーを持っている人がこんなに近くにいたなんて!?

世界に3個しかない物が、たまたま同じ場所に2個も集まったんだよ〜!?これは凄い事だよ〜!」



「蒼、いいでござるよね」



「いい……」



お互いのキーホルダーを見せ合いながらキャッキャし合うボッチ2名……否、既にオタク同盟を組みつつある。


そわそわしながら、そんな2人を後ろから眺めるデビューぼっち。


あ…さっきのやりとりであの2人はペアーになった。オタクという生き物は、勝手に運命を感じて勝手に結びつけていくもの、もう2人の間に入る余地はない。

つまり…残された1人は、ぼっち確定という事。


わかるってばよ……。


人(陰キャ)が3人集まった場合、必ず1人はあぶれる。

なぜなら…陰キャは1体1でしか会話出来ないからだ。

会話の主導権を握らない限り、聞き専として自身に意識を誘導するか愛想笑いを浮かべる事しか出来ないのだ。


ーーソースは前世のわたし。

ちな、蚊帳の外から観察していたので間違いない。

人の会話を外から聞いて脳内で会話シュミレーションをするの、みんなやりますよね〜。


え?3人いるなら3人で会話を回せばいい?

そんなスキルがあったらボッチになんてなっていませんが何か!?(半ギレ)、チクチク言葉使うのやめてもらってもいいですかね?


と、とにかく1人は溢れた!!


ふふふ……可哀想だけど、わたしと一緒にソロ活を楽しもうじゃなイカ?

わたしが安堵していると、後ろから眺めているだけだったデビューボッチがオタク達の輪に入っていく。



「じ、実はそれ……俺も持っているんだよね」



照れ臭そうに頬をかきながら、ポケットから取り出したキーホルダーを見せるデビューボッチ。



「き、きちゃ〜!!確変きちゃコレ〜!!でござる!!」



「デュフッ〜!! こんな事ってあるの〜!?」



「ハハハ……流石にびっくりだよね」



周囲の目を気にせず歓喜で湧くオタク同盟。



ーーーーは? なんだぁ?てめェ……。

◇ヒカリ キレた!!


おいおいおいおいそんなの聞いてねぇぞ?誰を差し置いてアオハルをおっぱじめてやがるんだぁ?あぁ?これは主人公わたしの物語だぞ!!!


思わぬ裏切りにわたしが出てしまう位にガチギレしてしまったわたし。

そんな私の心の叫びは通じる事なく、固い握手を交わし視線をぶつけ合う3人。


やめてくれ……その術は、わたしに効く……。



「今更だけど……俺の名前はかける…佐藤 さとうかける、よろしくな!」



「せ、拙者の名は塩原 総悟しおばらそうごでござる!」



「デュフッ!…僕の名前は油江 あぶらえしのぶ!」



「初対面の奴らにこんな事言うのもあれなんだけどさ… 俺らがここで出逢ったのは…何か、そう……運命!そんな気がするんだ!2人が良かったら…なんだけどさ……俺と友達になってくれないか?」



「カッカッカッ!!何を言ってるでござるか?拙者達は既にコスモに導かれし盟友でござるよ!」



「デュフッ…そうだよ! 水臭いこと言わないでよ〜」



塩原しおはらくん、油江あぶらえくん…………」



「苗字じゃなくて、総悟そうご…でいいでござるよ! ね?……かける殿、しのぶ殿」



「そうだね〜他人行儀は少し寂しい…かな? かけるくん、しのぶくん」



「あぁ!! よろしくな!!しのぶ!!、総悟そうご!!」



「デュフッ!!」 「ござる!!」



「よし! しのぶ!!、総悟そうご!!早くクラス表を見に行こうぜ!1番最後に着いた奴がジュース奢りな!」



「あぁ〜!! 言い出しっぺが一番最初に走り始めのはズルいでござる〜!」



「デュフッ! もう!二人とも〜!!待ってよ〜!」



和気あいあいと走っていく3もとぼっち達。

わたしは、輝く青春の残滓を残しながら遠のいていく背中を目で追い縋っていた。


佐藤(砂糖)、塩原(塩)、油江(脂)……ね。


お前ら今日から余分三兄弟な?


顔と名前覚えたから!(ちゃんと覚えられていない)お前らぜってー許さねぇから!!マジ、ぜってー、許さねぇから!!(涙声)。


心の内で見下していた同類ぼっち達に裏切られ、目の前で青春群像劇を繰り広げられたわたしは、ただただ校門の前で立ち尽くす事しか出来なかったのであった……。


ーーごめんねアカリ……。


お姉ちゃん…もう……お家に帰ってもいいかなぁ?






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新キャラの余分三兄弟登場です。

  

果たして今後、彼らに出番はあるのか?

次話でヒカリちゃんは無事に校門を跨げるのか?


そんな次話は6/24(月) 19:00頃、掲載予定!

今後の進展をお待ち頂ければ幸いです!

筆と展開が遅くて本当に申し訳ないです……。


【祝】 現代ファンタジーカテゴリー:163位!!

ご拝読ありがとうございます✨️


少しずつ上がる順位に驚きを隠しきれないです!

これも一重に皆様のお陰です!

これからも誠心誠意頑張りますので

何卒♡と‪☆をよろしくお願いします!







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