第2話 転生①
ーーとある夏の早朝。
「あら、山田さんこんにちわ〜」
すれ違い様に挨拶をしてきたご近所の鈴木婦人に頭を垂れた深いお辞儀をする。
角度はしっかり90度、我ながら惚れ惚れしちゃうね!
べ、別にコミュ障だから顔を見るのが恥ずかしくて
お辞儀をしてるんだからね!勘違いしないでよね!
え?あ、はいすみません。
俺、山田
日課である清掃をこなす為、近所にある社へ向かっていた。
日課の清掃と言うとさぞ高尚な思想をお持ちかと思うかもしれないがあいにくそんな高尚な理由ではない。
端的に言うと押し付けられたのだ。
我が家の大黒柱である父が、地域の組合で掃除当番に任命されそれから1月が経過。任期が終わった………
かと思いきや、その当番が変わる事はなく
1日100円の高待遇に釣られた5歳の俺へとその仕事は引き継がれ30年もの間、俺が毎日掃除をしている。
当番なら次の人に代わって貰えばいい?
ばかぁ言ってるんじゃあないよ。
残念ながら、我々無キャにNoの選択肢はないし、誰かに抗議をしようなどという鋼の意思はない。
低いコミュ力と意志の弱さを持つ父からその
「今日も無駄に眩しいし暑いなぁ……」
じりじりと焼き付けるような日差しに思わず愚痴をこぼしてしまう。
ーー太陽は苦手だ。
太い陽と書くので器が大きく暖かく包み込む様な
イメージがあるが実際は違う。
あれは監視である。
多くの人間が活動する日中に堂々とお空の特等席に鎮座し生のエネルギーを送り込み馬車馬の如く働く様を眺める。不信感という名の言い掛かりを胸の内に思えどもDNAに刻み込まれた習性には抗えず毎日を過ごしているのだ。
そんな下らない陰謀論(陰キャだけに)を脳裏に浮かべながら歩いていると2分弱で目的地に着いた。
この通い安さも掃除当番の白羽の矢が突き刺さった理由の一つである。
石の屋根の中には、直径60cm程の木で出来た社がある。1枚扉を開けると中には幼女の姿をした仏像が入っている。仏像にはお高そうなミニチュアサイズの着物が着せられており、髪には百合を模した装飾が
至る所に散りばめられている。
首元には一際目立つ蒼玉の首飾りー月の
ーー
この仏像のモデルとなった神様である。
瘴気が蔓延し、作物が実らなかった時代に
瘴気を鎮める為に1人の少女が立ち上がった。
少女は三日三晩、舞を奉納した。
少女の舞と命を引き替えに瘴気は鎮まり
大地に再び生命が宿った。
その後、少女の魂は月へ昇華し
星の神様となって我々をお空から見守っているとの事らしい。(W○kipedia先生調べ)
いやぁ……泣けるお話だねぇ…およよよよ。
コホンっ…気持ちを切り替えまして
は・み・が・き、上手かなぁ〜!?
山田 太郎(35歳)。
じゃあ、
痒いところはありませんか〜?
おじたんがピカピカにしちゃいますからね〜♡
脳内茶番を繰り広げながら歯ブラシとスポンジで丁寧に仏像を磨きあげる。
20分程、ブラッシュアップすると
そこには、ピカピカになった社と仏像があった。
うん!我ながら、いい仕事をしたね。
バケツの水を水道に捨てスポンジと歯ブラシを放り込むと、ゴロゴロ…と雷鳴の音が聴こえた。
これは近くに落ちたねぇ。
まぁ、雷に打たれる確率なんて宝くじに当たる位低いんだから大丈夫でしょ!
産まれてこの方当たった事ないし余裕余裕!
早く家に帰って惰眠を貪ろう!
そう言い、屋根の外に出ると
ーーガガーン!!!!!!!
目の前が真っ白に光り、俺は意識を手放したのであった。
あの〜フラグ回収早すぎませんか?
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