TS陰キャは静かに暮らしたい
ありが糖
序章
第1話 覚醒
「オラァ!!起きんかい!!海に沈めたるど〜!!」
「オラァ!!起きんかい!!海に沈めたるど〜!!」
「オラァ!!起きんかい!!海に沈めたるど〜!!」
ーー暗い部屋の中でけたたましい怒声が鳴り響く。
じゃかあしいわい……。
わたし、
布団から顔を出し、細目で見つめると
眉間に深い皺を寄せ、ドスを持ったマグロのぬいぐるみが鎮座している。
ーー任侠アニマルズ
陸、海、空を守護する為に
天界から舞い降りた義の守護獣……というコンセプトのキャラクターである。
その内の一体である
海の守護者、マグロ大王こと
キムさんのDX ぬいぐるみ目覚まし定価9800円(税抜き)がわたしを叩き起こそうと鳴り響いていた。
こんな脳内独り言に想いを馳せるくらいには頭が覚醒してきているのだが
睡眠というのはね、誰にも邪魔されず自由で
なんというか救われてなきゃあダメなんだ。
独りで静かで豊かで……(早口)。
布団を被り、自分の世界に没入し音を遮る。
あ、これならまだ眠れそう……。
お布団しゃんもう離さない♡
おやすみ世界!!ばいばいき~ん。
そうしてわたしは意識を手放し……
ーードン!
勢いよく扉が開かれ何者かが部屋に侵入してきた。
「おねぇちゃん!!!起きて〜!!
早く起きないと入学式遅刻しちゃうよ!!」
侵入者の正体はどうやら妹らしい。
彼女の名は
銀色の髪にハーフアップ。
出る所は出て、引っ込むところ引っ込んでいる
彫刻の黄金比率の様なナイスバディ。
翡翠色をした大きなタレ目に涙ボクロ。
偏差値が高いの顔面だけにあしからず
文武両道、品行方正、おまけに家事も出来る。
ご家族は、さぞ鼻が高いだろうねぇ……。
まぁ、わたしの身内なんですけどへへへへへ。
取り敢えず妹から顔を背けるわたし。
「あ、あ、……後3年…寝かして下さい(小声)」
「3年も寝てたらもう卒業しちゃうでしょ!
変な事言ってないで早く支度して〜!」
抵抗虚しくお布団しゃんを剥ぎ取られ胸元に抱えるマイシスター。あぁ…お布団しゃん、これが流行りのNTRか。妹に手を取られながら洗面所に向かい
髪を梳いてもらう。
以前は自分で適当にやっていたのだが
その現場を抑えられてからは、わたしの身だしなみを整えるのは妹の仕事となった。
うぅ……この歳にして職を奪われちゃったのら……。
「……これでよしっと!
おねぇちゃんは今日もかわいいね〜」
妹がわたしの肩をポンっと叩くので鏡の前の自分を見つめる。そこには、妹に負けず劣らずの美少女が映っていた。
艶のある黒い長髪に、妹以上に大きい胸。
目が隠れる程の前髪からチラ見えするのは
妹と同じタレ目だが、瞳の色は青と緑。
厨二病を拗らせた訳でもなくオッドアイというやつだ。
両目に黒目のカラコンを付けて微笑むと
鏡の中の美少女の口角がニチャァと上がり目がピクピクと引き攣っている。
うそ!?これが……わたし!?
せっかくの美人が台無しである。
鏡から逃げる様に玄関へ向かい家に外に出る。
「いってきます!!」「い、いってきます(小声)」
まさか、自分が美少女になって2度目の学校生活を送るだなんて思いもしなかったよなぁ〜。
……え?、2度目の学校生活?
言ってませんでしたっけ?
わたし、人生2回目っす!!
今流行りの転生者って奴です!オマケに元男です!
なんで2回目の人生を送っているのかというと
そこには海より深〜い理由がある訳なんですね、はい。では、聞いてください。
新曲ーー「転生」
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