第30話 コイタルの街と、王族

 コイタルの観衆から歓喜を持って迎えられた俺たち。

 コイタルの街はラーケンの街よりも歴史を感じた。

 まず、大きい。

 ラーケンの街も大きいと思っていたが、更に大きい。

 残念ながら俺たちの馬車は外で待機になった。


 街の人々に感謝されながら用意された馬車に乗せられた。

 兵士や冒険者に連れられながらこの街を治めている領主へ謁見することになった。


「大きい街……」


「すごーいすごーい」


 ローザたちもはしゃいでいる。

 俺もこの街の大きさには驚いている。

 もしこの街がゴブリン達に襲われていたら、どれほどの被害が出たか……

 間に合ってよかった。


「ジンゲンは領主様にあったこと有るの?」


「はい、一度だけ魔獣討伐で勲章を頂きました」


「いや、ほんとにジンゲンうちに入ってていいの?」


「もちろんです。むしろ今回の戦いで儂の選択は間違いではないと確信しました!」


「そう言ってもらえるのは嬉しいね。

 ところで、領主様ってどんな人?」


「コイタルの領主様は現メディアス王の甥に当たる方で……

 王族ではあるものの非常に気さくで、なんというか、破天荒?

 いや、規格外? 王族はこういう人だとは思わないほうがいいと思いますので……」


「なるほど……」


「お会いになれば直ぐに理解するかと……」





「おー!! ジンゲン!! 久しぶりだな!

 カサラ達のことは残念だったな! お前ならすぐにでも隊長格で雇ってやったんだが……

 いやいや、俺も上から見てたぞ、凄いな!

 数もそうだが、魔法を使うスライム!!

 それに、まるで人間の兵のように武具を扱って、最後の戦いには胸が熱くなった!!

 しかも、お主本人も見事な働き、魔獣使いが従魔と混じって戦うとは、いやはや珍しい物を見せてもらった。

 そして、そちらの美しい女性もまた見事な矢の腕前、感服した!

 おっと、興奮しすぎたな。

 何より、街を救ってくれて、大切な住人を助けてくれてありがとう……」


 すっごい勢いで話したと思ったら、急に真面目になって頭を下げられた。

 なんというか、頭を下げている姿なのに、オーラがある。

 裏表のない気持ちの良い人物なんだということが直ぐに理解できた。

 仕立てのいい服の下は鍛え上げられた肉体。

 目の中に炎でも宿しているかのようなギラギラとした眼差し。

 顔は、一言で言えば濃い。

 めっちゃイケメンなんだけど、濃い!

 王族がこんなに日焼けしていいのかと疑問が浮かぶ。


「恐縮であります」


「いい、いい、そんな堅苦しいことはいい。

 今日は祭だ! 俺も街に出るぞ!!」


「いけませんリョウザ様! 被害報告の処理など仕事は山積みですぞ!」


「ぐぬぬ、被害を受けたものは早く対処してやらんとな……

 仕方ない……、ギルドに金を回してやれ、兵も冒険者にもねぎらいが必要だろ!」


「わかりました。逃しませんからねリョウザ様!」


「ははは、爺の目を盗むのが今から楽しみだ!!」


 それから褒美などを頂いて、ゴブリンの素材などはギルドと話し合うことになって、嵐のように会見が終わった。


「お会いになったらわかりましたでしょう?」


「はい、すごくわかりました」


「美しいって言われちゃいましたー!」


「まぁ、ローザは美人だからね」


「なっ! /// 」


「次は冒険者ギルドだね」


「カゲテルはきっと将来苦労するな。

 ……もっと苦労するのはローザだろうが……」


「はぁ……わかります?」


「ああ!」


「何の話?」


「……ばかっ」


 いきなり罵倒された……


 ギルドでは今回の討伐で得た物を提出する。

 ゴブリンの身体は役に立たないので、スライムの餌として全てもらった。

 臭いから出さないで欲しいって言われたので丁度いい。


 ゴブリン達の魔石×3287、

 ホブゴブリンの魔石×1085、

 ゴブリンジェネラルの魔石×127、

 ゴブリンヒーローの魔石×1、

 ゴブリンキングの魔石×1


 それと装備はろくなものがなかったので、全て分解、再精錬してインゴットと革に直したのでとても感謝された。

 ホブゴブリンの魔石半分、ジェネラルの魔石半分、ヒーローとキングの魔石をもらって、残りはギルド扱いとしてもらった。

 死者やけが人も多く出ている。

 ほぼ全てを提示されたけど、辞退して復興に利用してもらうようにお願いした。


「ギルドとしては、カゲテル殿、ローザ殿にはCクラスに昇格させてもらいます」


 スライムと合わせればAクラスでもなんの問題も無いそうだ。

 流石に辞退した。


 そして、それらの手続きを終えて外に出ると、街はお祭り騒ぎだった。

 外で待機していた人たちに担ぎ上げられた。


「スライムマスターカゲテル! コイタルの街を救った救世主!

 そのパーティ、麗弓姫 ローザ!!

 なんとあの破岩不動のジンゲン!!

 それに小さな勇者のマシューとネイサンだー!!」


 俺たちを中心に大騒ぎになってしまった。

 スライムに触れようとたくさんの人が集まってくるので、適度に分裂させて各場所でマスコット役を買って出てもらう。

 全員にもスライムをつけて迷子とか、良からぬ事を考える輩を警戒してもらいながら、まつりを思いっきり楽しんでみようと思う。


 ジンゲンに聞いている。

 コイタルの街は、広大な平地での農作物、それに南の海からの魚介類が豊富だと……

 当初の予定にはなかったが、祭りでコイタルの街を食べ尽くす!


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