第27話 再出発
『別に興味がありませんでしたら、無理にお聞きにならずともこちらで勝手に運用いたします』
コウメイが報告を聞く素振りを見せなかったせいで、すねた。
「す、済まなかった。
いやーあの遺跡の謎の装置が解析できたならすごい力が手に入ったんだろうなー」
『ところが、残念ながらあの罠の奥には一部屋しかありませんでした。
どうやらあの施設はゴーレムによる前哨基地のようなもので、大規模な遺跡ではありませんでした』
「そうか……じゃあ、あまり成果は無いのかな?」
『いくつかの魔道具、なによりゴーレムスライムの加入が大きいですね。
それと、魔力を貯めることが出来る装置、そしてその魔力を利用した攻撃装置を回収できました』
「凄いことだよね?」
『はい、これによってマスターの膨大な魔力と回復力を利用して、大量の魔力を溜めておけます。
さらにそれを利用した兵器を使えば……ふっふっふ……いろんな事を考えています』
「た、楽しみにしておくよ」
『おまかせください』
なんとか機嫌が戻ってくれた。
なんというか、こだわると周りが見えなくなって夢中になってしまうのは誰に似たんだか……
「おはようカゲテル」
「おはようございますカゲテル様」
リビングに来ると、四つん這いになったジンゲンにマシューとネイサンが乗っている。
どういう状況だろう……
「ジンゲンさんが二人の世話を見てくれて、朝食できてますよみなさんもどうぞ」
ジンゲンさん、真面目ないい人なんだな。
「マークさん達はラーケン方面ですか?」
「ええ、おかげさまで馬も馬車も積荷まで……被害もありましたが、まずはあちらで荷をさばいて建て直さなければいけません」
「いずれ最高の酒商人になって再び会いましょう!」
熱く語りすぎたか、すっかり酒・スパイス商人が目指す夢に成ってしまったようだ……
周囲に魔物の気配もないし、ラーケンの街まで無事に着くことを祈っている。
「さて、俺たちも出発しようか」
「しかし、このような場所に家が……家が……無くなって……」
「ははは、最初はびっくりしますよね。
すぐ慣れますよ……」
「カゲのスライムはすげーんだぜ!」
うむうむ、俺のスライムはすげーんだ!
なんの指示もなく走る馬車、揺れない心地よい車内、警戒せずともいい環境。
ジンゲンさんにはカルチャーショックなようだ。
「ただ、たまに丁度いい魔物がいれば倒しますって……丁度いいマウントモンキーがいるので、こちらに呼びますね。戦いの準備を」
「は、はぁ……」
マウントモンキーは群れで統率した動きをしたり、石を投げたりと魔物の中では知恵を使ってくる。数が多いと結構苦戦する。
「ローザ、今回はジンゲンさんの実力を見せてもらおう」
「はい」
「わかりました。カゲテル様にお役に立つところを見ていただきます!」
ジンゲンが使うのは槍と斧を合わせたハルバードという武器だ。
ジンゲンさんの巨体で扱う特注品で、3m位あるが、それを軽々と振るう。
「うおりゃあああぁぁぁぁ!!」
戦闘スタイルは豪快だ。
敵の攻撃をびくともせずに斧を振り、槍でつく。
さすがBクラス、雑魚であるモンキーでは相手にならない。
あっという間に蹴散らしてしまった。
俺、ものすごく運がいいのかもしれない。
「ジンゲンさん凄い凄い! Bクラスの冒険者の戦いなんて初めてみました!」
「いや、強いですねジンゲンさん」
「お二方とも、我が主と奥様なんですからジンゲンと呼び捨ててもらって結構」
「いやいやいや、奥様とかじゃないから!」
「……そんなに強く否定しなくても……」
「ん?」
「なんでもありません!」
「そうだったのですか、儂はすっかりそういうものかと……」
「と、とにかく。頼もしい仲間ができてよかったよ。
本当に良いの?」
「もちろん、男に二言はございません!」
「わ、わかった。これからよろしくねジンゲン。
それと、俺はスライムマスターってことで、スライムしか仲間にできない魔獣使いなんだけど、この子は特別で……」
「コウメイと申します。以後よろしくお願いいたします」
なんか、外向けって感じのカチッとした話し方……
「おお、流石はカゲテル様の従魔、まさかスライムが話すとは……」
「まぁ、この子は特に特殊だけど、それ以外にもスライムの常識を覆すのがたくさんいるから、まぁ驚かないでね」
「流石は天職……」
「そうそう、全部天職のせいってことで」
「でも、カゲテル自身も、凄い強いのよ」
「ほう……」
「いや、その、スライムマスターの天職的なあれでね、従魔のおかげで力が強くなるっていうかね」
余計なことを、こういうキャラにそういう発言をすればどうなるか……
「ならば是非、手合わせをお願いしたい!
守るべき主の実力も知っておかねば!」
「見たいみたいー!」
「にーちゃんやっちゃえー!」
やっぱりこうなった……
でも……
スライムが使えない状態でどれだけ戦えるか、知るいい機会かもしれない。
「よし、最近楽しすぎてたし、ご指導お願いします!」
「専門はコレですが、武具全般は扱えます。
及ばずながら、ご助力いたす」
本当にこんな人がうちのパーティにいて良いのか?
疑問に思ったけど、これ以上ジンゲンに言っても無駄なことはわかっているので、ありがたくその力を活用させてもらう。
こうして、俺とジンゲンの模擬戦を行うことになった。
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