勇者パーティの受難 その8

対戦拒否関連の話を説明されたあと、数々の必要な手続きを済ませ…

私達はついに一端の勇者パーティとして活動できるようになった。

勿論、魔王は倒していないので勇者候補でしかないんだけど。

「これでようやく、スタートラインに立てたってことだね」

「あぁ、そっか。目標は魔王討伐だもんね」

手続きが長すぎて忘れてた。と、メラキは続ける。

…確かに手続きは長かった。

魔王のいる『西の国』に関する説明を受けたり、

転生者のパーティとの関わり方についてのルールを説明されたり。

それぞれの使う武器が何なのかとか、どんな経歴があるのかとかを書類に書いたり。

保険?に関する書類もあったっけ…。

とにかく沢山の説明を受け、沢山の書類に必要事項を記入した。

長すぎてもう何にサインしたか覚えてない。

「もう二度とあの作業したくないなぁ…」

「うん、凄い分かる。エルピーダとかメラキ、ルニアは書くこと多そうだったしね」

「そうなんだよ!おかしいよね!?」

あまりの手続きの長さにイロアスたちも苦言を呈している。

その言葉に心のなかで賛同していた。

かつてないほどに。

「あれには僕ももう懲り懲りだな。…そういえば、ハルモニアの書類の数がおかしくなかったっけ。何書いていたの?」

そんな私にメラキから質問が届く。

…書類が多かったのはそうなんだけど、項目ってみんな同じなんじゃないの?

「えっと…普通に皆と同じだと思うけど」

「いやいやいや、明らかに数多かったよ!?」

「そう…?」

そう言われてもう一度項目を思い出そうとしてみる。

確か…

「使える魔法の属性と、契約している精霊たちのプロフィールと、勇者パーティに加入を決めた理由と…あと、」


「好きな食べ物」


「…はい?」


◇◇◇


「ちょ、ごめんもう一回言ってくれる?」

「別にいいよ。…好きな食べ物」

「え?」

イロアスの思考が停止する。

気持ちはわかるけど。

本当に書いてあったんだよ。

好きな食べ物って。

…冷静に考えたらおかしいよね!?

「なんでそんなこと書かされたんだろう…」

「え、今更…?」

「ハルモニア…なんかおかしいと思わなかったの?」

メラキとエルピーダも驚いた顔で聞いてくる。

そう。

あのときの私は何もおかしいと思わなかった。

今は思う。

本当に。

「あのときは思わなかった。今混乱してるとこ」

なぜあんな質問があったのか。

あれはなんの役に立つのか。

気になるけど…今更考えても無駄かな?

…もうどうしようもないしね。

過ぎたことよりこれからのことを考えたほうがいいよね。

例えば、イロアスが勇者になれるのかとか。

エルピーダはどんな魔法を使うのかとか。

メラキの得意技を知ったとき、二人はどんな反応をするのかなとか。

私は結局なんの魔法が使えるのかとか――

…あ。

「魔導書見ないと」

「うん。それは全然いいんだけど経緯は説明しようね?」

「やっぱルニアってちょっと変わってるよね〜」

「そしてメラキはルニアの扱いに慣れてそうだね。僕達も見習わないと」

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終末世界のハルモニア 猫墨海月 @nekosumi

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