勇者パーティの受難 その6
道の端でメラキを待つ。
「…あ、あの人じゃないかな?」
さっき声を掛けた人の予想通り、彼は数分で戻ってきた。
兎の耳に、ほんの少しウェーブ掛かった髪。
…下手したら女子より可愛いかもしれないその姿は、前と何も変わりなかった。
「メラキ」
「…あれ?ハルモニア?…どうかしたの?」
私の声を聞き、彼が寄ってくる。
そしてイロアスとエルピーダを見て首を傾げた。
「…ハルモニア、もしかして結婚の報告?」
「そんなわけないでしょ。あなたに提案があったから来ただけだよ」
謎の結論を出すメラキに反論する。
そして、今も尚首を傾げる彼に溜息をついた。
…先が思いやられるな。
◇◇◇
「なるほどね、つまり君達はハルモニアの旅仲間ってことだ。それで…人数が足りないから、僕を誘ってる。…合ってるよね?」
「合ってる。…これはメラキの実力を見込んでの事だけど、嫌だったら断ってくれていいよ」
先程軽い自己紹介を終え、事情を説明した。
再会の時の反応からして…説明が大変になるかと思っていたけど、そんなことはなく。
あっさり現状を理解した彼は、家でお茶を振る舞ってくれていた。
「…そこの君が、ハルモニアに一撃入れたという勇者君で…隣の君が、例の聖職者君かな?失礼なことを聞くけど、君達は魔王を倒す程の実力があるの?」
椅子に座りながら、二人に質問するメラキ。
質問された二人はその視線に一瞬怯んだけれど、すぐに返答した。
「今、その力があるかと言われたらわかりません。…けれど、僕は絶対に魔王を倒します」
「…僕は後から誘われた側だけど、魔王にはうんざりしてるんだ。絶対に倒してみせるよ」
その返答を聞き、メラキの目が変わる。
…なんとなく先が読めてしまった。
「そうだね…。…うん。決めた」
私に向き直るメラキ。
その目に宿るのは…うん。
「ハルモニア、君の誘いに乗るよ。…どのくらいの期間かわからないけど、これからよろしくね」
やっぱり、光だった。
…そうだよね。
メラキ、こういう真っ直ぐな人好きだもんね。
「…え、今ので良かったんですか…?」
「うん。僕が見たかったものは見れたからね」
イロアスの言葉にそう返し、メラキは笑った。
どうやらメラキが見たかったものはしっかり見れたらしい。
先程の緊張感は消え、部屋には和やかな空気が戻ってきていた。
これが本来のメラキだから、私達は旅をしたらきっとこの雰囲気になるのだろう。
…割と居心地いいな。
気付かないうちに雑談を始めていた三人を眺める。
何故か結構話が弾んでいるし、この様子ならあと数日もすれば完全に打ち解けるはず。
彼らのコミュニケーション能力は普通の人達の3倍くらいあるからね…。
仲良くなったら絶対うるさいよ。
全員お喋りだから、絶対騒がしい。
そこまで考えると、やはりこの先の光景が浮かんでくる。
…そしてそれに溜息をついた。
私達はきっと、史上もっとも騒がしいパーティになるだろう。
そして、史上もっとも仲が良いパーティにもね。
楽しそうな三人の様子で、その考えが確信に変わっていくのを感じた。
「とりあえず皆お疲れ様〜!メラキくんも来てくれたことだし、これでやっと、勇者パーティ結成って言えるんじゃない?」
「…あ、確かにそうだね。…それじゃあ、イロアス」
「うん。…行くよ?」
「いいよ」
「おっけー!」
「どうぞ!」
「――勇者パーティ、ここに結成!!」
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