勇者パーティの受難 その5

森を目指すこと、早数日。

数々の苦難を経験した――

―わけではないけど。

「ルニアー、遅いよー!」

「エルピーダが早いだけでしょ…」

「ルニア、早くこないと置いていくよー」

「ちょっ…イロアスまで…」

私達はすっかり打ち解けていた。

つい数日前の余所余所しい雰囲気なんて、なかったことになっている。

まあそうだよね。

二人は元々友達だったし、

私も別に人付き合いが苦手なわけじゃないしね。

目線の先ではしゃいでいる二人。

…あんまり遅いと置いていかれるらしいから。

「はぁ…今行くから、二人共ちょっと待ってて!」

そう声をかけて、歩き出す。

この二人ならきっと、私の知人とも仲良くしてくれるだろう。

彼も明るい人だし、何よりこういう付き合い方が好きなはずだから。

三人ではしゃいでいるのが想像つく。

…あ、ちょっと面倒かも。

まあ、これから何十年と旅をするかもしれないしね。

仲いいほうがいいよね。

…面倒なのは嫌だけど。


◇◇◇


「つ、ついたぁぁぁ……」

「長かったね。二人共お疲れ様」

「な、なんでルニアは疲れてないの……?」

「…エルフだから?」

「えぇ…いいなぁ…」


あれから数日。

私達は無事に獣人の村へと辿り着いた。

ここまでの道中、結構な確率で魔物に遭遇したけれど。

おそらく魔法使いの中では最強格の私と、

その私を破ったイロアスと、

何故か闇魔法が得意なエルピーダがいたから何の苦にもならなかった。

ただまあ…本当に遭遇率が高すぎてびっくりしたな。

旅の思い出、綺麗な景色と同じくらい魔物討伐の記憶があるもん。

村につく直前の戦闘なんか、慣れすぎてたせいで一歩も動かずに終わったし。

「魔物の遭遇率って同行するメンバーによって変わるのかな」

「…さあ。あ、せっかく村に着いたんだしルニアの知り合いさんのところ行こうよ〜!」

「そうだったね。えっと、あの人の家は…」

視線をずらし、彼の家を探す。

そして見つからなかった。

原因は前より増えている家達だろう。

仕方ない。

そのへんの人に聞いてみよう。

「ごめん、わかんないからちょっと聞きに行ってくる」

「分かった。ここで待ってるね」

イロアス達にお礼をいい、近くに居た人に駆け寄る。

「あの、すみません。メラキって今どこに居ますか?」

声をかけた人は一瞬目を見開いたけど、すぐに答えてくれた。

「メラキなら今、川に行っていると思います。あと数分したら戻ってくるかと」

「ここで待ってたら会えますか?」

「ええ、多分」

あと数分なら、この辺で待ってよう。

イロアス達の方を見る。

…あの二人なら全然大丈夫そうだね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る