勇者パーティの受難 その3
精霊達に捜索をお願いして数分。
この子達はしっかり任務を成し遂げてくれた。
「イロアス、例の人見つかったよ」
「もう見つかったの!?」
「うん、この子達は捜索のプロだから」
精霊から例の人の位置情報を受け取る。
えっと、ここから二十キロメートル北に進んだところか。
これなら転移魔法を使った方が早いかも。
「ここから二十キロ北だって。転移魔法、使う?」
人間はただでさえ寿命が短いから、さっさと進んだ方がいいだろう。
そう思ったんだけど、
「いや、大丈夫。歩いて行こう?」
「えっ…。うん、分かった」
イロアスは歩きを選択した。
理由を聞くと、道中の景色を楽しみながら行くのも楽しいじゃん?と言われた。
そうなのかな。
人間ってよくわからない。
けどまあ、イロアスがそう言ってるなら従おう。
歩き出した彼の後を追いかける。
普段は見えない小さな花が、私の足元を彩っていた。
◇◇◇
教会までの道中、私達は色々なものを見た。
例えば、道端に咲く可憐な花とか、木の上にできた鳥の巣とか。
ひっそりと流れる透明な小川や、小さな森の中に住む動物たちとか。
丘の上から見れる、綺麗な夕日とか。
どれも普段見るようなものじゃなくて、新鮮だった。
何より、どこへ行っても楽しそうなイロアスを見てるのが面白かった。
転移魔法で行けば一瞬だったのに。
私達はその道のりを八時間掛けて歩き、
目的地についたのは夜の十二時。
流石にもう探し人はいないかな。
なんて思ったけど、探し人は教会で私達を待ってくれていた。
「二人共、長旅お疲れ様。随分と遅かったねー。とりあえず、僕の家で休む?この近くだから!」
凄く疲れていた訳ではないけど、彼の好意に甘えて家に上げてもらうことにした。
彼の家はとても片付いていて、まるで誰かを上げるために準備されていたかのよう。
まあ…聖職者なら予知の一つくらいするか。
そう思ったけど、私の疑問は拭えない。
むしろ出発する前より増えた。
…この人が、聖職者でありながら闇魔法が得意な人?
本当に?
…どう見てもただの人間なのに?
◇◇◇
「さて、落ち着いたことだし…そろそろ、自己紹介してもいいかな?」
「…どうぞ」
私が頷くと、彼は微笑んで続けた。
「僕はイロアスの友人のエルピーダ。一応聖職者という称号を貰っているよ。…君はかの有名なハルモニアさんだよね?よろしく」
エルピーダはそう言って、頭を下げた。
確かに彼は中性的な見た目で、闇魔法の魔力が溢れてる。
だけど、聖魔法の魔力も感じる。
聖職者という称号を持っているのは本当だろう。
だけど、気になることは山積みだ。
まずさ、かの有名なハルモニアさんって何?
私は別に有名じゃないんだけど…。
私はただ、そこら辺にいるエルフの魔法使いだよ。
「よろしく、エルピーダ。…確かに私はハルモニアだけど、有名なんかじゃないよ」
エルピーダにそう返す。
すると、静寂が訪れた。
不思議に思ってエルピーダを見ると、目を見開いて固まっている。
…何かまずいことでも言った?
横にいるイロアスに視線を移す。
…イロアスまで固まっている。
その状態は何故か続き、
数分後にやっと口を開いたのはイロアスだった。
「…いや、ルニアは相当有名だと思うけど…」
「うん…だって原初の魔法使いなんでしょ?」
「…え?なんでそれを……。…あっ」
…今度は私が固まる番だったみたい。
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