勇者パーティの受難 その2


「お探しの方は今はいらっしゃらないですね…」

「そうですか…。ありがとうございます!」


「…あ、イロアス。どうだった?」

「いないって。次のとこ行こっか」

「わかった。えっと、次は…」

初めの教会に探し人は居なかった。

から、次の教会を目指す。

次の神殿はここから数十キロメートル…と言いたいところだけど。

「…どこがいい?」

「…どこでもいいよ」

目の前に陳列する無数の教会達。

…ここは教会の養殖場ですか?

見渡す限りの教会に溜息をつく。

まさかここまで世界が変わってるなんて思わなかった。

こんな大量の教会の中から、例の人をどうやって探そうか。

「イロアス、その人の特徴とかなんかない?」

「うーん…そうだなぁ…」

私の問いかけに頭を悩ませるイロアス。

そんなに特徴がないのかと思いきや、

「中性的な見た目で、背は割と低め。一応聖職者なんだけど、各地を旅しているから旅人でもいいかも。髪に白い羽をつけていて…あ、それで、闇系統の魔法が得意だよ」

普通に特徴を挙げてきた。

うん、こんだけ特徴があれば魔法で探し出せる。

捜索用の魔法どれだっけな…。

…ん?

「聖職者なのに闇魔法が得意なの?」

「そうらしいよ。珍しいよね」

聖職者という称号を持つ者は原則二種類に分けられる。

一つは、神に仕えている…いわゆるシスターさんとか神官とかの神職と呼ばれる者。

もう一つは聖魔法を使える者。

神職者の多くは教会から離れることがない。

よって、旅先とかで誰かの治療を行うのは、神職者ではない聖魔法を使える者。

聖魔法を使える者と言っても、一定の基準を満たしていなければ聖職者として認定はされない。

普通の人間は一つの魔法に特化していることが多く、聖職者になった人は聖魔法しか使えないはずなんだけど…。

もしかして、旅をするタイプの神職者なのかな?

でもそれだったらイロアスは神職者と呼ぶ気がする。

ということは、聖魔法を使える者ってこと?

それだと相当な魔力が必要になるけど。

聖職者になるための基準値はとても高く、数十年生きた者であっても到達できなかったりする。

例え聖魔法が得意だったとしても、だ。

「ん?ルニアー?」

イロアスの言うその人は、闇魔法が得意なんだよね?

闇魔法って聖魔法の反対にあるようなもので、発現したら聖魔法の発現は不可能に近いのに。

もしかしたら長命種かもしれない。

人間以外の種族だったら、あり得なくはないかも。

あり得るとしたら少なくとも百年は生きていて、

「おーい。どうしたのー?」

…いや百年じゃダメだ。

あと数十年、数百年は必要かな。

いやもっと必要かもしれない。

それこそ――あと数千年、

「ルニアー!大丈夫ー?」

「…あっ…」

肩を揺さぶられ、我に返る。

目の前には心配そうな顔。

…今考えなくてもいっか。

「大丈夫。行こう…じゃなくて」

「え?」

今やるべき事は一つ。

『闇魔法が得意な聖職者』の捜索をする事だ。

「――『人物探知』」

魔法を使う。

すると、周りに精霊達が集まってきた。

この子達はこの世界の全てのエネルギーの元となっているから、すぐに見つけ出してくれる。

まあ死んでたら無理だけど。

「ねえ、ルニア。この子達が例の精霊さん達?」

「そうだよ。皆、私と契約してくれてるの」

「…改めて聞くと凄い事言ってるね」

そんな事を言いながら、精霊と戯れるイロアス。

うん、なんか仲良くなれそうで良かった。

精霊達は変わり者が多いから、人の好き嫌いも激しいんだけど…。

やっぱり、私達に勝った相手だから気になってるのかも。

精霊達に特徴を通達しながら、そう思って微笑んだ。

そもそも人間で精霊が見れるのが凄いことなんだけどな。

ま、言わなくていっか。

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