勇者パーティの受難
勇者パーティの受難 その1
「勇者パーティ結成!」
なんて言って彼は意気揚々と村を飛び出した。
のは、いいものの。
想像以上に世間は厳しかったみたいで。
「転生者様じゃない人は、4人でのパーティ登録をお願いしています」
受付嬢に追い返された。
まさか、転生者じゃないだけでここまでの差別を受けるなんて。
まあ、当たり前か。
転生者は『勇者さま』だもんね。
…流石に冒険者として登録すらさせてくれないのはどうかと思うけど。
「どうしよっか。あと2人、探さないとだよね」
「あ、それなんだけど…一人当てがあって」
ちょっとだけついてきてくれる?と言われたので、素直に頷いた。
あてがあるって、誰のことだろう。
もし魔法使いとかだったら、役割分担がちょっと面倒かも。
まあ彼に限って魔法使いを連れてくるとかないだろうな。
だって、私を引き入れるために十年を使った人だもの。
絶対、魔法使いではない。
うん。
「…もしかして、ちょっと心配してる?」
「ううん。全く。心配してるわけないじゃん」
返しながら、不意にあることを思い出す。
…私にも、あてがあるかも。
「その、ええと…き、君…?がさ…」
「…僕はイロアスって名前だよ。それで、どうしたの?」
「えっと…イロアスが言っている人って、ここから遠いとこにいるの?」
私の問いに、イロアスは少し考えるような素振りを見せ。
分からない。と答えた。
…分からないって、何だろう…。
「なんていうかね…教会に行けば、会えるかもしれない…って感じだから」
「そうなんだ…じゃあ、早く教会回ろ」
「うん…え、なんで?」
イロアスを無視して歩き出す。
この辺りの教会って、何個くらいあったっけ。
私の記憶だと四つなんだけど…流石に増えてるよね。
片っ端から回っていけば、その人に会えるかな。
その人を探しつつ、獣人の住む森の方に行きたいな。
私の方は獣人の村に住んでいる人のことだから。
「それでいい?」
「何が!?」
◇◇◇
「なるほど、獣人の村に行きたかったんだね」
「うん。そこに、私の知人がいるからさ」
「そうなんだ。まさか、ルニアに獣人の知り合いが居るとは思わなかった」
ハルモニアを略してルニア。
うん、なかなかいい響きだね。
イロアスの付けてくれたあだ名を心のなかで褒めておきつつ、返事を返す。
「エルフっていうのは長生きだから。同じく長生きな獣人族とは深い関係を築いているんだよ」
「確かに、獣人族も長命種だったね。…ということは、ルニアの知り合いって見た目の2倍以上の年齢になるってこと?」
首を傾げるイロアス。
獣人族は相当長生きだから、正確には2倍なんかじゃないんだけど。
まあ…言わなくてもいいか。
エルフに比べたらとても短い事に変わりないし。
「…あ、教会見えてきたよ」
「ルニアってたまに脳内で話を終わらせちゃうよね」
「そう?そんな事ないと思うけど…」
苦笑いをされる。
私、そんなに話してないっけ?
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