『言いたかったこと』
「じゃあね、更紗、梨奈!二人に会えて良かった!」
手を振りながらそういう彼女に、私は曖昧な微笑みしか返せなかった。
彼女の消えた神社はまた静けさに包まれ、
私は彼女に言いたかったことを抱えながら立っている。
「…更紗、仕方ないわよ」
横で同じように立ち尽くす梨奈は、私に向けてそう言った。
そう。
これは、仕方がなかったこと。
――神である彼女と人間の私が同じ立場に立てることなんて一生無いのだ
自分の不甲斐なさに嫌気が差す。
もし、少しの勇気があったなら。
私に自信があったなら。
あのとき彼女に、頼ってほしいと。
そう言えたのかもしれない。
「これじゃあ突き放しているみたいよね」
友達だと思っているはずなのに。
いざ『友達』として振る舞おうとすると、不安が足を引っ張ってくる。
望んでなかったとしても彼女は神で、
望んでいたとしても私は人間だから。
せめて少しでもその差が目立たないように振る舞えたなら。
どれだけ楽にしてあげられたのかなって。
過去の後悔が頭を支配していた。
あの日みたいな惨劇はもう見たくないのに。
彼女が泣かないように支えてあげられたなら良かったのに。
「戻りましょう。…あのね、更紗。あなたが気に病むことなんて無いのよ」
「…梨奈に言われてもそう思えないわ」
この神社の巫女である時点で、
私にはそれができないのだ。
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