10話「お困りのようですね?」

「A組の羽生はにゅうさんでしょうか?」


そう言って話しかけてきたのは背が小さく目がクリクリで茶髪のボブの子だった。

まるでリスのような‥


「だ、れですかね?」


やはり見知らぬ人と話すのは緊張するもんだ。


「あの、私、C組の白岡しらおかといいます、あの、杏奈あんなの!いや、新座にいざさんについてちょっと話が‥」


杏奈あんなの友達?」


「は、はい、友達と私が思ってるだけかもしれませんが。」


「そんな事ないと思うけど、それで俺に何か用?」


「その、杏奈あんなと最近仲が良いと本人から聞いたんですけど、その‥クラスで浮いてたりとか色々心配で‥」


「俺も杏奈の事で色々聞きたいんだけど、放課後って空いてる?」


「は、はい!」


「とりあえずLINE交換しとくか。」


「はい‥」


「あ!ごめん!こんな得体の知れない奴と連絡先交換するなんてキモイよね‥」


「い、いえ!こういうの初めてでちょっと緊張しちゃって‥」


杏奈の事だから自然な流れで連絡先を聞いてしまった。


「そ、そっか!とりあえず放課後連絡するよ!」


.


.


.


___放課後


「陸、帰りましょ?」


「ごめん!ちょっと今日放課後残らなきゃいけなくて‥その、1人で帰っててくれるかな?ほんとごめん!」


「そ、そう!じゃあまた明日!」


「おう」


ごめん、杏奈、どうしてもやらなきゃいけないんだ。


[あの、ここに来て貰えますか?]


白岡しらおかさんからLINEがきた。


.


.


.


そして向かったのが‥


「何故に文芸部の部室?」


「まあ私1人なんでもう、同好会なんですけどねぇ」


どうやら白岡さんだけの部室らしい。


「あのさ、いきなりで悪いんだけど杏奈の事で話があるって‥」


「はい、実は私、杏奈の友達でして一年の頃クラスが同じだった事で仲良くなったんですよ!でも私人見知りなので中々クラスの人と打ち解けられなくて、そんな時に話しかけてくれました。」


そうだったのか、今の杏奈あんなからは想像できないな。


「その‥杏奈あんなって一年の頃は明るかったのか?」


「そこなんですよね、私が相談したかった事って‥二学期の文化祭の準備頃から杏奈あんなの笑顔が減っちゃって‥」


「それは何か原因があったのか?」


「その‥ごめんなさい、私も知らないんですけどその時杏奈あんなは文化祭実行委員をやってたんですよね、その時に何か衝突があったのかもしれません。」


「そうだったのか‥ありがとう話してくれて。でもなんで俺にその話を?」


杏奈あんなから他人の名前が出る事って滅多に無いんですよね、それに高2になってからの数日は私の所に来て一緒にご飯食べてたんですけど、でもあなたのおかげで前よりも笑顔が増えて嬉しかったんです!だから羽生はにゅうさんなら杏奈あんなにまた昔みたいな笑顔の多い子にできるんじゃ無いかと思って。」


「分かった、俺が絶対なんとかするよ。」


「本当ですか!ありがとうございます!」


その時、白岡しらおかさんの緊張していた顔も安堵していた。


「あ、あの!それで、この事はできば杏奈あんなには内密に‥」


「分かってるよ、あいつはああ見えて嫉妬深いらしいからな〜」


その後は少しだけ他愛もない話をして解散した。


「あの、本当にありがとうございます。」


「全部、これからだよ。お互い頑張ろう!」


「はい!」


と言っても問題は山積みである。

本当は吉川よしかわさんや、他の生徒に原因を問いただしたい所だが、俺は杏奈あんなからの言葉を待つ事を選んだ。

だからその間に少しでもこの問題を解決して、吉川よしかわさんや鶴ヶ島つるがしまも校外学習を気兼ねなく楽しんでもらいたい‥


「随分とお困りのようですね?」


「あぁ‥」


聞き覚えのある声がしたのですんなりと返事してしまった。





って!!!


「お前、りょーなのか‥」


「はい、りょーこと、才玉高校三年の朝霞亮あさかりょうです、ついに会えましたね、羽生陸はにゅうりくさん。」


身長は高く多分180cmぐらいはあるだろう、そして少しタレ目でミルクティーのような髪色をしたマッシュヘアだった。

というか‥


「この学校の生徒の上に先輩だったのか‥」


「はい〜これからはりょー先輩って呼んでくれても構いませんよ〜!」


ここまで俺の行動をずっと監視できてるから勝手に同じクラスの誰かだと思っていたのだが‥


「こんなにイケメンが俺のサポートしてくれてるとは‥」


羽生はにゅうさんはやっぱり男も好きなんですか?」


「やっぱりってなんだよ!」


「ハハッ、やっぱり直接会うのも良いもんですね〜」


「てか、随分とすんなり会えるもんなんだな。」


「本当は夏休み頃まで姿を見せる予定は無かったんですけど、私達の想像以上に良い動きをしてくれるのでね、いや〜関心関心。」


「褒めてるのか?」


「もちろんですとも、そろそろお金を選んだ事を後悔してるんじゃ無いかと思って。」


「それは無いね、俺は別にこれで良いんだよ、杏奈あんなは友達とも仲良くなって‥」


「まだ、CCの事をあまり理解できてないみたいですね?」


「どういう事だ?」


「ま、どちらにせよ、今日会いに来たのはあなたの””記憶””を消しに来たんですよ。」






なに??、俺はどこで失敗したんだ‥



ー続くー

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