8話「手を繋ごう。」


「よし、決めますか〜」


放課後ファミレスにて俺を含め鶴ヶ島つるがしま吉川よしかわさん、杏奈あんなの四人で周る校外学習の作戦会議?が行われた。


しかし、吉川よしかわさんと杏奈あんなは空気が悪い。


俺こういう空気苦手なんだよな‥


「陸はどっか行きたい所ある?」


「今回は東京でしょ、別に普段から行こうと思えば行けるしな〜」


「へ〜羽生って東京とか行くんだ〜意外!」


「意外って‥」


「私てっきりず〜っと家こもってるのかと思った。」


まあ当たってるけど‥


「いやいや、陸はもしかしたら夜な夜なクラブとか行ったり、チーム作ってブイブイ言わせてるかもだぜ?」


「どんなイメージだよ!」


「もしくは年上のお姉さんと〜」


「あの、早く決めません?」


空気読めないというか、まあ当たり前だが、杏奈あんなが釘を刺した。


「‥‥そうだな〜みんなの行きたい所を〜」


俺はどうせまだ、誰にも好かれても嫌われてもないし‥


「あ、あのさ‥」


「どうした、りく?」


「つかぬことをお聞きしますが‥どうして杏奈あんな吉川よしかわさんは仲良くないって言うか、毛嫌いしてるんだ?」


場が凍りついたのが俺でも分かった。


「てか、そもそもそんな関係なの知ってた上で鶴ヶ島つるがしまもこの班を決めたんでしょ?この微妙な空気でどっか行ってもぶつかるだけな気がする〜んですけどね〜」


あまりの空気感に思わず敬語を使ってしまった。


「別に私は吉川よしかわさんの事嫌いでもなんでも‥」


「嘘つけ、あなたの事はよく知ってる。悪い噂も沢山!それにみんなが楽しくやろうとしてるのに釘刺す感じもイラつくんだけど?」


「そう言うつもりじゃ‥」


「そもそも私は洋平ようへいが居るからいいけどこの班で回りたくないって思って‥」


「はいはい、そこまで。りく、俺が誘っといて悪いけど今日の作戦会議中止!とりあえず、りく新座にいざさん、何となく行きたい所、考えといて〜本当ごめん!」


そう言って解散する事になった。


.


.


.


帰り道


「ごめん、杏奈あんな‥無神経だった。」


男と違って気合いで何とかなるものじゃないのは分かってた。


「い、良いんだよ‥むしろ私こそごめん、気付いてたんだね‥私が吉川よしかわさんに嫌われてる事。」


「気付いたってより、初めてちゃんと話した日あっただろ?あの時さ吉川よしかわさんに新座にいざさんの顔が分からなくて聞こうと思ったんだよね、そしたら二度とその名前出さないでって言われてさ、でも話してみたら杏奈あんなは良い奴なのに何で嫌われてるのか分からなくて‥」


「そうだったんだね、そもそも何で鶴ヶ島さんと仲良くなったの?」


「それはだな‥」


杏奈あんなと仲良くなりたいからって言おうと思ったが、仲良くなったら紹介するって言った手前やめた。


「何だか懐かれちゃってな〜」


「そうなんだ‥」


その後は沈黙が続いた。


そして数分後‥


「あのさ、もし‥もしだよ?私が嫌われる様な事をして吉川よしかわさんに嫌われてたら、陸も私の事嫌いに‥」


「なるわけないだろ?」


「え?」


「俺は杏奈あんなを信じてるし、そんな簡単に、はいそうですかって言うわけないだろ?」


「本当に?」


「うん、だからさ大丈夫だし、その‥さっき言ってた一年の頃にあった?いざこざみたいなのも話したくなったらで良いからな。」


お金の為なら何とでも言える自分に正直、悲しくもなった。


でも良いんだ、それでこそCCを始めた意味があるから。


「あのさ‥陸?」


「どうした?」


「ずっと人付き合いが苦手ですぐ迷うし、すぐ逃げ出したくなるのね本当はさ、それで私がもしそうなったら助けてくれる‥かな?」


「そん時は手でも胸ぐらでも掴んで離さないよ。」


ギュッ


「絶対だよ?」


杏奈あんなに手を握られてしまった。


「わ、分かったよ。」


手を繋ぐ事がこんなにも照れ臭くてこんなにもドキドキするもんだなんて思いもしなかった。


「ありがとう。」


小声で申し訳なさそうに、それでもはっきりと感謝の言葉を伝えてくれた。


.


.


.


プルプル‥


「もしもし〜」


「おう、俺だけど。」


「オレオレ詐欺ですか〜?」


「相変わらずの調子だな‥」


家に帰ってから俺はりょーに電話していた。


「何か用ですか?」


「お前、分かってて聞いてるだろ?」


新座杏奈にいざあんなさんが困ってて校外学習が割と大変な事以外は何も知りませんが‥」


「バカにしてるのか‥」


「冗談ですよ〜」


「なぁサポート役なら何で杏奈あんなが嫌われてるのか知ってるよな?」


「もちろんですよ」


「じゃあ‥」


「でも、それは教えられないんですよ〜」


「なんで!」


「そういうのを解決してくのがCCの醍醐味なのでね、私達は問題の答えを教えるのでなく、問題の解き方を教える事しか出来ないんですよ。」


「そ、そうだよな‥」


ー続くー

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