6話「当たり前の事。」


[おはようございます、羽生はにゅうさん]


毎日のようにりょーから連絡がくる。


[おはよー]


[思った以上に順調ですね。]


[俺だってやればできるんだよ!]


そう、最近は学校内でも普通に杏奈あんなと話す事が多い。


というのも妹に重い腰をあげればできると言われた通り、人と話すってのは割と簡単だった。


そもそも、学校内で俺がぼっちだろうが女子と話してようが全く関係がないのだった。

結局のところ誰も他人の事なんて見てないのである。


でも気になる事があった。


[12月26日以降記憶が消えたとして俺と新座にいざさん以外の記憶はどうなるんだ?]


[それはご心配なく、関わった周りの人の記憶が上手い事消えるようになってますので。]


それは良かった。

俺と杏奈あんなが仮に目立ったとして他の人が覚えてたらそれこそ後々大変な事になるに違いないし‥


[それより、普段みたいに杏奈あんなって呼べば良いじゃないですか?]


こいつめ‥


[俺は別にお金のためにやってるだけだ。]


[まあどちらにせよ、最後は記憶が消えてしまいますからね。]


[だから何でも良いんだよ。]


よくはない事は俺だって分かっている。

それでも俺はもう人は簡単には信じないって決めてるんだ。


.


.


.


「おはよ、杏奈あんな


「おはよう」


「てかさ、一ついいか?」


「なんでしょう?」


「もしかして‥名前で呼ぶの恥ずかしがってねぇ?」


「‥‥私、委員会の仕事がありますので」


逃げられてしまった。


意外と杏奈あんなはウブなのかもしれない。

そんな事を思っていた。


.


.


.


放課後特にやることもないし今日は杏奈あんなも予定があるらしい。


「よし帰るかなぁ‥」


何で独り言を言っていたら


「陸くん!ちょっといいかな〜」


「え?」


茶髪で少しチャラそうな男に話しかけられた。

制服は着崩しており、俺と合わなそうなタイプだと思った。


「俺の事わかる?」


咄嗟に思った‥

こいつ、CCのりょーなんじゃないかと。


しかし、こんな堂々と話しかけてくるような性格じゃない気もした。


「いや、分からない‥です。」


「ショックだぜ〜俺、同じクラスの鶴ヶ島洋太つるがしまようただよ!」


知らなかった。ちょっと距離感バグっててウザいな‥


「ああ、よろしく、俺になんか用?」


「お前さ‥新座にいざさんの事狙ってるの?」


意外な質問だった。


「別に狙ってる訳じゃないよ?」


「嘘つけ〜この鶴ヶ島EYEがそう言ってるぜ?」


何なんだこいつ‥


「いや、本当に」


「でも、急に仲良くなって学校で杏奈あんなって呼んでるのもおかしくね?」


バカそうで意外と鋭い‥


「いや、本当に狙ってるとかじゃなくて、ただ‥」


「ただ‥」


ふと今の俺たちの関係に疑問を持った。


CCで出会ったとは言えそこまで進展もなく友達というのか恋人とはまだ程遠いし、何というか‥


「顔見知り?最近仲良くなっただけで友達と呼べるかも怪しい的な?」


「何その独特な距離!ウケる!!」


ウケるところあったか?


「ま、まあそんな所だからさ〜話はそれだけ?」


「いや!ここからが本題よ!どうやって、新座にいざさんと仲良くなった訳?」


どうやって‥

かなり困る質問だ。


「いやさ、新座にいざさんって基本無口だし、あんまり人と関わるタイプじゃないじゃん?それになんか怖いしさ〜」


周りからはそう見えてるのか‥

まあ確かに前に吉川よしかわさんもあいつの事は嫌いとか言ってたな‥


「そ、そうかな?話してみると割といい奴っていうか‥」


「俺なんて話しかけたら、はいそうですか。で終わりだったぞ?」


お前がウザいからなんじゃと言おうとしたがやめた。


「でも無理に関わらなくても‥」


はなから聞いてたけどりくは本当にクラスの人の事興味ないのな!俺こう見えて学級委員だぜ?」


「え、そうなの?てかはなって誰?」


「ちょい、ちょい!りくほんと面白い奴だな〜」


今の所に面白い要素があったのだろうか‥


吉川華よしかわはなだよ!陸と同じ委員会の!あいつ、仲良いとか言ってたぞ?」


「あ、あぁ吉川よしかわさんね‥」


「で、話戻すけど、どうやったら新座にいざさんと仲良くなれるのかね‥」


確かに今って何となくCCで選ばれて仲良くなろうとしてるだけの大して進展のない俺らだな‥

そんな俺がアドバイス出来るのだろうか‥


「よし、とりあえず、俺がもっと仲良くなって鶴ヶ島に杏奈あんなの事紹介するよ。」


自分でも何言ってるのかよく分かってなかった。


「マジ?委員会とか気まずいからなる早で頼むわ!」


俺も何となくで過ごしてきたけど別に好き相手でもないのに結ばれたいと思う人間はいないよな。

まずは相手を知る事だ。


「頑張ってみるよ。」


その言葉にどれほど本気だったかはその時の俺は分かってなかったのかもしれない。


「サンキューな、じゃまた明日〜」


「うん。」


「あとよ、陸は好きでぼっちやってる訳じゃないだろ?」


「え?」


「いやだから俺の鶴ヶ島EYEがそう言ってるよ、なんか訳あるのかもしれないけどいつでも俺に話しかけてくれよな〜」


そう言って彼は教室を後にした。


少しウザいとか思ったけど‥意外と侮れない奴だな‥


ー続くー

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