4話「ファーストコンタクト」
「あ、あの‥初めまして‥俺、
あまりの緊張に声が裏返ってしまった。
「フフッ、私は何度か羽生さんと話してたつもりなんだけど?」
そうだったのか‥
てか
「ごめんなさい‥俺、ちょっと人の顔覚えるのが苦手で〜ハハハ〜‥」
「まあこれから仲良くなれるんだから私はそれで良いけどね?」
黒髪で三つ編み、眼鏡をかけていて真面目というか地味というか‥
初めてちゃんと顔を見て話したけどなんというか笑ったらすごく可愛いタイプというか‥
ドキッとしたのはここだけの話。
「てか俺、今日一日話しかけようと思って、でも顔も名前もよく分かってなくて、教室で大声で名前呼んで振り向いた人と話そうとか色々考えてたんですけど‥」
「それはそれで見たかったな〜」
「え!」
「嘘だよ。なんかそんな感じだと思ってたし私もどう声かければ良いか分からなくて一日中ドキドキしてたよ?」
「そ、そうなんですね‥」
「てか、敬語やめない?同い年なんだし?」
完全に押されている。
誰がどう見たってチキンの俺に手を差し伸べてくれている‥
きっとこんな可愛い子なら恋愛経験も豊富なんだろうな、とか思ってしまった。
「そうだよね‥」
緊張して何話せば良いかわからない‥
「あのさ、せっかくだし一緒に帰らない?」
「え‥」
ん?俺今なんて言った?
「あ!嘘!なんていうの間違えたっていうか!」
「なんだ‥間違えたんだ‥」
「いや!間違えてないけど‥」
「どっちなの?」
「え?」
「だから、帰るの帰らないの?」
.
.
.
高校生になって初めて誰かと下校する事になった。
「羽生さんは好きな食べ物とかあるの?」
「俺はホッケとか‥」
「へ〜魚好きなんだ?」
「魚っていうかホッケが好きで‥」
中学時代はあんなに簡単に女子と話せたのに一年も人と関わるのをやめたらこうも惨めになるのか俺は‥
「へ〜美味しいよね、ホッケ!私はね‥これ!」
そう言って彼女が指を刺したのはたこ焼きだった。
「え、意外‥」
思わず口に出してしまった‥
「思っててもそういうのは言わない方がいいんじゃないかな‥」
「で、ですよね‥」
「でも良かった〜」
「なにが?」
「いやさ、羽生さんって意外と話しやすいんだな〜って!」
「あ、ありがとう‥」
なんというか、意外なのは俺の方だった。
なんとなく真面目そうとかなんとなく電話の感じとかでもっと話しにくい人なのかと思っていたからである。
「あ、あの!」
「どうしたの?」
「これから、よろしく‥‥お願いします。」
「こちらこそ!」
夕焼け、少しまだ肌寒い春、こうして俺のコールミー、コールユーは始まったんだと思う。
「て事で!たこ焼き食べて帰りますか〜」
「うん。」
「あ、後、吉川さんと仲良さそうだけど私こう見えて嫉妬深いんだからね?」
「あ、ご、ごめん‥」
この時の俺はまだこれからどんどん辛くなる事を知るよしも無かった。
.
.
.
ー帰宅後
「まぁなんとかやれただろ‥」
「おかえり、お兄ちゃん!今日は遅かったね?」
そういえば毎日早帰りの俺には珍しく遅かったかもしれない。
「あ、ちょっと友達とな‥」
「え!お兄ちゃん友達できたの??」
「なんだその反応?お、俺にだって友達ぐらい‥」
「ふ〜ん、まあ私からすれば嬉しい事だよ〜もしかして彼女とか出来ちゃったり??」
「彼女は絶対ない!!」
「そ、そうだよね。」
「あ、ごめん‥」
ついつい棘のある言い方をしてしまった。
妹相手に過去のトラウマなんか関係ないっていうのかな‥
逃げるように自分の部屋に来てしまった。
ブブ!
通知が来た、もしかして
[お疲れ様です〜CCサポートのりょーです]
こいつか‥
[今日のご活躍拝見させていただきましたが、やはりコミュ障全開でしたね〜]
ー5分後ー
[ちょっと〜無視は良くないですよ〜部屋でくつろいでるくせに〜]
うるさいチャットだ‥
[コミュ障で悪かったな。]
[吉川さんとイチャイチャしてた所を見られちゃいましたね?]
[どこまで知ってるんだ??]
[監視も仕事の内なので〜]
[てかイチャイチャしてないし!]
[冗談ですよ〜まあ第一段階はひとまずクリアって事で、明日からしっかりとサポートさせていただきますので!]
どこか棘のある奴だか何故か憎めない‥
[ありがとう。]
ブブ!
まだりょーからなにか話があるのか‥
[今日はありがとう。]
なんと
[あ、あと自分から連絡してあげてくださいよ!男らしく!!]
りょーよ、少し遅い‥
[
[あ、あと文章の最後に。で終わるの愛想ないし今流行りの”マルハラ”っぽいからやめた方がいいですよ!]
りょーよ、少し遅い‥
[楽しかった!]
[なんで2回も送ってきたの?笑]
[いや、なんか文章がそっけない感じがして‥]
[気にする事ないよ!また明日こそは学校で話そうね?]
[もちろん!]
何となく返してしまったが、冷静に考えて校内で女子と喋るとかハードルが‥
「高くねぇか!!!!!」
ー続くー
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