第47話 王都侵入

 僕らは、紙飛行機のように空中を漂っていた。

 そう紙飛行機のように、風に流されるまま、勝手に右へ左へと流されている。


「ラヴィーネ、これって行き先はコントロール出来てるんだろうね。」


「今のところだいたい大丈夫よ。

 おっとっと、、もうちょっと右ね!

 今集中してるからあまり話しかけないでちょうだい。」

ラヴィーネの目は真剣だった。


「このままだと壁に激突するんじゃない?」


「大丈夫!任せなさい」


「あああああ!」

一旦目が覚めたウルが、壁に向かって行くのを見てまた気絶をした。


 僕らは、そのまま王城の壁に激突した、、、かのように見えて壁をすり抜けた。


ドコォドコォドコォ!!

僕らは壊れた窓から部屋転げ込んだ。


「はい到着、ご苦労様」

ラヴィーネは冷や汗をかいてそう言った。


「ここは?」

僕が聞くとラヴィーネが答えた。

「フリードリヒの寝室よ。

 魔法で外側から窓が見えないようになってるいるし、ドアにも結界が張ってあるわ。」


リンが気絶したエレナとウルを必死に起こしていた。



「さて、この後の作戦について話すわね。」

ラヴィーネが話し始めるも、エレナはむくれていた。

「もうここから飛び降りるとか言わないでしょうね?」


「言わないわよ。 

 あなたにはね。」


その言葉にウルがドキッとした。


「ここから先、魔女の討伐は、フリュー、エレナ、ウルにお願いする。

 騎士たちは、アウグストたちが引き付けているけど、ここにはヴァンパイアが多数いるはずよ。簡単じゃないわ気を引き締めてね。」


「わかった。」

僕がそう言い、エレナとウルはうなづいた。


「リンは援軍の進入路を確保して欲しいの、あなたが一番詳しいはずだから頼むわよ。

 敵を倒してもここを制圧しなければ何もならないんだから。」


「分かりました。任せてください。」


「それであなたは何をするの?ラヴィーネ」


エレナの質問にラヴィーネが答えた。

「私はここまで送り届けた後は、別にやらなければならない事があるから、別行動させてもらうわ。

 それじゃあ、あとはよろしく頼むわよ。

 大丈夫絶対うまく行くわ。」


 そういうと、ラヴィーネは入ってきた窓から飛び立って行った。


「本当に秘密主義ね。

 どうせ一番危険な場所に向かったんでしょ。」

エレナは呆れながらもラヴィーネのことは信頼していた。



その時、


ドッカーン!!!

城壁の方から爆発音が聞こえた。


「キルケ様と宮廷魔術師団の攻撃が始まったみたいだね。 僕たちも動こうか。

 リン、ここからは別行動だ、無理はしないで気を付けるんだよ。」


「はい。

 私が暗部機関に連れてこられのは不幸だったけど、最近は辛い訓練は無駄じゃなかったと思うんです。兄さんと一緒にきて良かった。

 兄さんたちも気をつけてください。私が必ず援軍を連れてきます。」


そうして僕らは、フリードリヒ国王の寝室を出た。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


王都西側の丘陵に、キルケが率いる、魔術師たちが集結していた。


「派手に攻撃して騎士団を引きつけるのよ。

 戦いは数じゃ無いわ。

 私たちエルフの魔術師と王国の宮廷魔術師団が、集まって負けるわけがないでしょ。」


 キルケの呼びかけに魔術師一同がそれぞれ杖や剣を掲げて無言で答えた。

「王都の生活区には絶対に当てないのよ。

 慎重にね。

 狙いは城壁よ!、、、放て!!」


ドドドッン!

北側の城壁に火の手が上がった。



 王都東側、連合軍の本陣では、アウグストを筆頭に出撃準備が整っていた。

「さあ俺たちも行くぞ! これが終われば良い酒が飲めるぞ!」


「「「「「おおおお!!」」」」

アウグストの号令で、連合軍騎士団が前進を開始した。



さらに、北方の大森林には別の一団が集合していた。

「さあ。先代魔王さまの仇、ヴァンパイアどもに一矢報いるチャンスがきました。

 我々魔王軍の力はまだ健在です!

 さあ行きましょうか?」


王都北側から魔王軍の進軍が開始された。



ーーーーーーーーーーー


 その時、軍議を開いていた王城内会議室に騎士団付きの文官が駆け込んできた。


「急ぎご報告があります!

 王都西側より、魔法による城壁への攻撃がありました。

 被害については、城壁の一部が崩壊したとの模様、ただいま第四騎士団を持って崩壊した城壁の守りについています。」


「続いて報告があります。東側及び北側より敵軍が王都に進軍が開始されたとのことです。

 さらに北側から進行する部隊にあっては、先日報告のあった魔王軍と思われます。」


「アウグスト王子らと足並みを揃えてきているということか? 構わん、それぞれ敵側の倍の兵力をあてろ」


 サイロスがそう指示を出すも報告に来た文官は言い淀んでいた。

「言いたいことがあるなら早く申せ。」


「それが、敵側の戦力が予想よりも多く、同数以上の兵を当てた場合、この城の守りが疎かになると思われますが、、、」


「なんだと、うーむ、、、」


サイロスが悩んでいたところ、離れた場所で話を聞いていた、エルゼベエトが言った。


「城内の守りは、私の手勢の者に任せなさい。

 それに、援軍をこちらに向かわせていて、まもなくつきます。

 それまでの間を全軍で持ち堪えなさい。

 私は王の間にて全軍掌握に集中します。」


そう言って、部屋を出て行こうとしたところで振り返った


「そういえばサイロス、城内にネズミが入り込んだわ。

 私の手勢の者を付けるから始末しなさい。」


そう言って部屋を出て行った。

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