第46話 新生英雄パーティの出発
それからのアイリスは、食べる、寝るなど、生活に必要なことは自分で出来、イブリンの指示にはそのまま実行した。
しかし、それ以外の人間的な反応は無く、まるで操り人形のようであった。
これ以上の改善の保証もなく、またこのような状態のアイリスを保護してくれるあてが無かったが、イブリンは自らがアイリスを一緒にいることを申し出てくれ、継続的な心の治療を約束してくれた。
「大丈夫よフリュー、アイリスは私が守るわ。
涙が出るんだもの、まだ良くなる見込みはあると思うのよ。」
「ありがとうイブリンよろしく頼むよ。終わったらすぐに帰ってくるから。」
そう言って僕はイブリンにしばしの別れを告げた。
イブリンの横には、イブリンと手を繋いでアイリスが立っていた。
「じゃあね。アイリスも元気でね。」
僕はアイリスにも別れを告げた。
アイリスからは当然なんの反応も無いが、その人形の様な瞳からは涙がこぼれ落ちた。
それを見てイブリンは言った。
「きっと、良くなるわ。」
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イブリンたちの下を離れ、僕らは連合軍の前線に戻ってきた。
少し見ないうちに、陣営の数も増えており、その後も続々とその数を増やしていた
「アーサー王子が亡くなったことが伝わって、中立を決めていた領地持ちの貴族らが重い腰を上げた見たいね。
このままだとこの王国自体がヤバいってやっと分かったんでしょうね。」
ラヴィーネがそう説明した。
その時、文官が僕らのところに来て報告した。
「宮廷魔術師の方々が、賢者ラヴィーネさまを訪ねてきております。」
「やっと来たみたいね。すぐに行くから待たせておきなさい。」
「はっ、かしこまりました。」
僕らがそこにいくと、24人の魔術師がいた。
その中で代表として仏頂面をした30代半の男が前に出た。
「賢者ラヴィーネ、久しぶりですね。お変わりないようで安心しました。」
その男は、無表情のままそう言った。
「そっちも相変わらずね、エドモンド宮廷魔術師長殿。
私が旅に出る前は魔術師長補佐だったけど、私が旅に出て魔術師長代行、そして今は魔術師長になったんだって? ずいぶん出世したじゃ無い。
私は、宰相サイロスには気をつけろって忠告したわよね。」
ラヴィーネの言葉に、エドモンドはやはり無表情のまま言った。
「嫌味はやめてくれ、大賢者ラヴィーネ。
僕らも苦しい立場だったんだよ。君と違って僕らは皆、家族がいる身だからね。
プラド伯爵らの貴族の一部が、秘密裏に家族を匿ってくれたんだ。その代わりに君たちに手を貸せってね。だからここに来れた。手伝わせてくれ。」
「冗談よエドモンド、私たちは歓迎するわ。
王国軍4万に対して私たちは3万、足りない分は貴方達、宮廷魔術師をあてにしているわよ。」
ラヴィーネとエドモンドは再会の握手を交わした。
「フリュー、これで戦えるコマが揃ったわ。
あとは私たちが魔女を片付ければこの戦いも終わる。
さあ行きましょう!」
魔女エリゼベエトの抹殺のため、僕とラヴィーネ、エレナ、そしてリンが集められた。
そこで魔将ラミアが言った。
「私たち魔王軍からも代表として戦士を一人参加させましょう。さあ入りなさい。」
僕らがいる天幕に、ワーウルフの少年が入ってきた。
「ウルじゃないか。」
「やあフリュー、おいらは借りを返しにきたぜ。」
「フリューたちは顔見知り知りでしたね。
彼はワーウルフ狼人族の戦士のウル。
まだ子供だけど、こう見えて強さは魔王軍随一です。私が保証します。」
「強いのは僕らが最初に会った時に分かりました。
ウル、ありがとう。僕らは君を歓迎するよ。」
ウルは照れて頭を掻いていた。
こうして集められた新生英雄パーティは、連合軍の陣地を出発した。
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王都は、北側に大森林、南側が海、そして西側には山を背負っていた。
僕たちは、大きく迂回し、大森林を抜けて山を登った。
そして、王都を見晴らす、断崖の上に来ていた。
エレナは、ラヴィーネを睨んで言った。
「私はてっきり山から馬で駆け降りて奇襲をかけるとか思ってたけど、なんか嫌な予感がするわ。
そろそろ説明しなさいよラヴィーネ。」
ラヴィーネはにやけながら言った。
「だって言ったらあなた断るでしょ?
この前、船のマストの天辺まで飛ばしてあげたこと今でも根の持ってるじゃない。」
「あなたねぇ。それは言ってるのと同じよ。
つまり、ここから城まで飛んでいこうとか考えてるってことでしょ!
冗談じゃないわ。あんなこと二度とごめんよ!
そんなことするなら、馬で駆け降りた方がマシ!」
エレナはすごい剣幕で抵抗したが。
「ウル、リン、エレナを縛りなさい。」
ラヴィーネの命令でウルとリンは、エレナをロープでぐるぐる巻きにした。
「なんでそんなもの準備してるのよ? あなたたち! さてはグルだったのね?」
「さあ、準備はいいわね? 行くわよ!」
ラヴィーネは満面の笑みを浮かべながら呪文を唱えた。
『ーNeo-aithnichteー』『ーcasg tuiteamー』
僕らはラヴィーネに掴まり、崖から飛び降りた。
僕らはふわふわ浮遊して城の方に飛んで行った。
「ほんとうに大丈夫なんでしょうね!!!!」
エレナは涙目になりながら言うと、ラヴィーネが答えた。
「私は経験済みよ。もっともこの人数では初めてだけどね。」
リンは楽しそうだった。
ウルは目を回して失神していた。
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