第21話 精霊の祠
僕はこの聖都の中央にそびえ立つ大樹の中にいた。
「...ここが樹の中?」
そこは花が咲き光苔によって照らされ、中央には滝が落ちる幻想的な光景だった。
「よくきましたねフリュー、そこの切り株に座って。さあ、お茶でも飲みましょう。」
切り株で作った椅子、切り株で作ったテーブルで作られたテーブルセットがあった。
僕はその椅子に座り、女王へカティア様が自ら入れてくれたお茶に口を付けた。
「美味しい」
僕が今まで飲んだことがない味だ。
「嬉しいわ。このお茶はここでしか咲かない花で作った特別な薬草茶なの。
このお茶を一口飲めば100年長生きするわ。」
ブブッ!僕が吹き出すと、ヘカティア様は
「うそよ」
と言ってとても楽しそうにしていた。
「ここに招いた男性は何百年ぶりかしらね。あなたには私たち種族のことを知ってもらいたかったの。」
へカティア様はそう言って話を始めた。
「この聖都には女しかいないことは気づいたかしら。」
「それは当然分かりました。エルフ族には女性しかいないのですか?」
「そうね。正確には私たち太古のエルフ族ね。私たちは他の生物とは違って精霊に近い存在なのよ。普通の生物の理の外に生きている。
長寿の私たちが他の生物のように繁殖したら、世の中エルフ族だらけになっちゃうでしょ?」
へカティア様がおどけで言う言葉に僕は納得した。
「なるほど、今までエルフ族のことを考えたことは無かったけど、言われればそうですね。」
「私たちは緩やかに衰退する定めなのよ。もっとも、私たちの寿命からすればこの先何百年、何千年かかるか分からないけどね。
で、ここからが本題。
私たちは人の暮らしに紛れ、人族との男性にお願いし、その男性との間に子をなすの。
そこで男の子が生まれれば人族、女の子が生まれればエルフ族の血が受け継がれるわ。
いずれにしてもこの都で育てられるのだけど、男の子の一生は人族と同じだから短いわ。
だからこの都は女ばかりってこと。
ここまでいいかしら?」
「はい、続けてお願いします。」
「良いでしょう。ここからは王国の秘密に関わることなので注意してね。
私たち王族は、より強者の血を求めて、王や勇者、そして英雄の導く手となっていたの。
フリードリヒ王とキルケの間にも男の子がいて、今は王国の辺境貴族の養子として立派に家督を継いでいるわ。
あなたへのお願いはあの子の力になって欲しいの。」
僕でも気がついた。
王とキルケ様が共に生活をしたのは30年前までということは、王の子は30歳以上。
アーサー王子の兄に当たり、王位継承権の上位にいる、ということか。
「わかりました。僕に出来ることなら力になります。」
僕はそう答えた。
「お願いするわ。離れているとはいえ、私の孫ですもの。
で、2つ目のお願いね。」
そういうとヘカティア様はニヤニヤして言った。
「ここまで言えば分かるわよね?」
「え、何のことですか?」
「...鈍い子ね。はっきり言わないと分からないの?
導き手は子種を欲しているの!
ラヴィーネ、私の次女メーデイアのこと!
あの子があなたの導き手になるというのは、私たち種族では求婚と思ってもらって構わないわ。
私たちとは生きる世界も違うし、あなたにはあなたの人生もある。
私たちの長い寿命の中では些細な出来事だからあなたの意思は尊重するわ。
でもあなたの一生を見守りたいというあの子の気持ちは尊重して欲しいのよ。母親としてね。」
僕は今までそんなこと考えたこと無かった。
ラヴィーネは歳が離れた姉くらいしか思ってなかったから。
ヘカティア様に言われ改めて意識すると変な気持ちになる。
「僕には今は分かりません。
僕はこんなですから、将来のことは約束できません...
けどラヴィーネは大切な仲間だし、ラヴィーネの気持ちは尊重したいと思います。」
「今はそれでいいの。あの子をよろしくね。
そんな君に女王ヘカティアから託したい物があります。」
ヘカティア様はそう言ってテーブルの下から木箱を取り出した。
それを開けると、中から片刃の
その短剣は、黒曜石の様な刀身に金色の文字が刻まれ、柄にはエメラルドの宝石が嵌め込まれていた。
「これは精霊の剣『
僕はその剣を女王から受け取った。
軽い!
「その剣に今は大した能力は無いわ、何よりも軽く、固く、鋭い。あなたの戦い方にピッタリでしょ。」
「はい、でもこんな高価なもの僕には受け取れませんよ。」
「あげるんじゃない、貸すの。全てが終わったら必ずここに返しに来なさい。
あなたの子供と一緒にね。」
女王ヘカティアはそう言って僕に
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