第20話 思いがけない再会
僕はエルフの女性へカティア様に連れられて、迷いの森を進んだ。
へカティア様はエルフの国の守護者であり偉い人らしい。
僕は、ラヴィーネがへカティア様の身内と聞いて驚いていた。
エルフは長寿で見た目は当てにならないと聞いたことがあるが...ではラヴィーネはいったいいくつなのだろうか?
それよりもエルフのへカティア様の身内ということはラヴィーネってエルフの血が流れているということ?
その疑問についてはもったいぶって教えてくれなかった。
途中、今までのことを全てへカティア様に打ち明けていた。
「それでは君は、ラヴィーネに見捨てられて、王国を追放されたと?」
「はい...」
僕の答えにへカティア様は笑った。
「フフッ、それは無いわ!
あの子があなたを見放していたら、あなたがここにいる訳無いじゃない。
あの子の加護があるからあなたはこの森に導かれたのよ?」
「そうなのですか...?」
僕は何か心が救われる暖かい感じがした。
そんな話をしているうちに僕たちの前には巨大な大木の麓に築かれた街が見えてきた。
「あれが聖都ユグドラシルよ。」
幻想的な街だ。
「何か言いたいことがあるなら直接ラヴィーネ本人に聞きなさい。」
小高い丘の上に、腕を組んで仁王立ちした長い黒髪の美女がこちらを睨んでいた。
「あまり心配かけさせないでよ!」
懐かしい再会に僕は目頭が熱くなった。
「ごめんラヴィーネ、僕は...」
「もういいわ。いろいろあったのは分かっているから。」
ラヴィーネはそう言うと僕を優しく抱きしめてくれた。
横で見ていたへカティア様が言った。
「ほら何か聞きたいことがあったんじゃないの?」
追放のこととかはもうどうでも良かった。
いろいろと行き違いがあったと思うけど誤解だと思うから。
「あっ、一つだけ聞きたいことがあった。
ラヴィーネ、君の歳はいくつなの?」
僕が聞くと、ラヴィーネの抱きしめていた腕の力が強くなった。
というより、これは首を締められている...
「女性に歳を聞くのは失礼よ。
あなたは何を今まで学んできたの?
私は20歳から歳をとっていない。だからあなたの三つ上。そう理解しなさい。」
「わ、か、っ、た・-・・」
「それより、あなたに合わせたい人がいるわ。着いてきなさい。」
そう言ってラヴィーネは僕の首を締めながら引きずっていった。
僕たちが招かれたのは、ラヴィーネの姉、王女キルケの館。
へカティア様は地位が高いお方だと言っていたが、まさか女王様だったとはね。
ということはラヴィーネも...
ここに来ていろいろ驚かされたよ。
そう思っているとさらに驚くことが。
僕が通された部屋には、そこにいるはずがない男、
国王フリードリヒ=ローゼンブルグがいた。
僕は身構えたが、今の僕は丸腰だ。武器は?
警戒して周りを見回してみたが、なぜかその場に殺気が無感じられなかった。
僕が落ち着いて王を見ると、王は床に膝を付き頭を下げた。
「フリューよ。ワシは君に取り返しのつかないことをしてしまった。申し訳無かった。」
僕には何が起きたのか分からず呆然としていたところ、そこへラヴィーネが助け舟を出した。
「国王も私と同じ、まんまと宰相サイロスにいっぱい食わされたのよ。」
ラヴィーネのその言葉を王は否定する。
「それは理由にならん。ワシは我が弟サイロスを身内として信用しきってしまっていた。
王としては許されることではない。
騙されたとは言え、君に辛い思いをさせたのはワシの責任だ。」
僕の心に怒りは無かったが、心残りがあった。
「頭を上げてください。
エレナやラヴィーネと会って誤解だったことは分かりました。
僕自身が宰相に騙されていたので、、、
もう責任を問うつもりはありません。」
僕がそういうと王は頭を上げた。
僕は王の目を見て言った。
「しかし、今も勇者アイリスは苦しんでいるはずです。
なんとか救ってあげることはできませんか?」
僕のお願いに王は苦しそうに言った。
「恥ずかしながら、ワシも息子アーサーとサイロスに殺されかけたところをラヴィーネに救ってもらい、逃げ出してきたのだよ。
もうワシには何の力もない。
すまんがワシに出来ることなどもう何も残ってないのだ。」
王はうなだれながらそう言った。
その話を横で黙って聞いていた王女キルケはフリードリヒ王を叱責した。
「フリッツ!
あなたずいぶん諦めがよくなったわね。私たちが旅していた頃はこれ以上に困難なんてよくあったでしょ?
しっかりなさい!」
フリードリヒ王は、キルケの叱責に言い訳をした。
「そういうが、王国軍は全てアーサーとサイロスの手中にある。
それに相手には勇者がいるのだぞ。
お前がワシに何をしろというのだ。」
「いいフリッツよく聞きなさい。
この迷いの森の入り口に先ほど王国の騎士団が到着したわ。あなたの近衛騎士団達があなたを待っている。
それに、ここには王国最強の魔術師が2人もいる。伝説の大魔導士よ。
そして今、魔王をも倒した英雄が加わった。
これだけの戦力がいてあなたは怖気付くの?」
キルケのその言葉にフリードリヒ王は顔をあげ言った。
「お前たちワシを助けしてくれるのか?」
キルケは当たり前のように言った。
「当たり前でしょ?私はあなたの導き手なんだから。」
僕は考えた。
今までのこと、そしてこれからの事を。
「このまま追われる身ではエレナもリンも自由はありません。
ラヴィーネだって。
僕自身と仲間たちがもっと自由に生きるにはこのままじゃダメなんです。
僕は僕のできることをします。
それに僕はアイリスも助けたい。
すれ違ったままじゃいやだから。」
「よく言ったわフリュー、さすが私の英雄ね。
私はフリューの導き手になるわ。フリューが王に力を貸すなら当然私も力を貸すわよ。」
フリードリヒ王は、もう何十年ぶりに感情が昂るのを感じた。
「いいだろう、ワシも腹を決めた。
みんなワシに付いてきてくれるか?
弟と息子の失態はワシが決着をつけよう。」
そう言ってフリードリヒ王は立ち上がった。
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