第22話 国王軍始動

 迷いの森から現れた国王フリードリヒ一行の前に、近衛騎士団が集まっていた。


「待たせたな、オクト。」


「おまちしておりましたフリードリヒ陛下、近衛騎士団総勢104騎、一人も欠けることなく集合しております。」

 と報告し、オクト騎士団長は国王に対して敬礼を行った。


「ところで後ろの方がたは?

侍医ボッタス様は存じ上げておりますが...」


 オクトは国王の背後にいる者を見まわした。

 12人のエルフの弓兵はいずれも美しい女性だった。

 さらに美しさが際立っている魔導士の服をきたエメラルド色の髪のエルフの女性がいた。


「紹介がまだだったな。彼女は我が妻キルケだ。」

と王はエメラルド色の髪の女性を紹介した。


「あのキルケ様でしたか、あのキルケ様が陛下のお妃と...」


 さすがのオクトも驚きを隠せなかったが、魔女のという表現はかろうじて堪えた。


 良くも悪くも魔女キルケの名前は賢者ラヴィーネと並ぶ著名な魔法使いであった。


「フリッツ、雑な紹介ね。

 私は聖都ユグドラシルの第一王女キルケ、私とここにいる12人の戦士が聖都ユグドラシルの代表としてフリードリヒ王を支援するわ。

 ここにいる一人一人が魔法戦士よ。あてにしてもらって良いわ。」


 魔法戦士、文字通り武器も魔法も操れる戦闘のスペシャリストであり、王都にも片手で数えるほどはいないという稀有の存在であった。


「魔法戦士が12人と伝説の魔法使いですか。

私の騎士団の倍は活躍しそうですな。」


オクトはその事実に呆れていた。


「まだ我々には奥の手が残っておるが、それは置いておこう。

 さてここから我らは王都を取り戻す訳だが...

ここにいる騎士300人分の兵力では、数万を超える王国軍にはまだ及ばん。

 一旦、ブルーム辺境伯領にて体制を整える必要がある。

 共に戦ってくれる兵が集まるまでは籠城戦となる、容易くはないぞ。」


「かしこまりました陛下、王の信頼がおける古参の貴族たちにも王の無事を知らせましょう。

 さて古参諸侯が最低でも中立を決めてくれれば、相手は宰相の息がかかった騎士団のみ。

 あとはこちらにどれだけ集められるかですが。」


「それについては我の信頼をおけるものがどうにかする。っと言っておった。」


その王の言葉にオクトは言葉が詰まった。


「それは陛下、その発言はいささか不安ですが。」


「ワシもそう思う。不安だ。

だが信頼はしておる。

 大船に乗ったつもりで任せてくれ。と言っておったわ。ワハハ!」


その王の言葉にもオクトは言葉が詰まった。


「分かりました、、、とりあえずブルーム辺境伯領へ向かいましょう。」


 近衛騎士団とエルフの戦士からなる新生国王軍は、ブルーム辺境伯領に向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーー


私エレナは、リンと共に王都に向かっている。


 発端は、宿屋の女将グリンダさんから聞いた話だった。


「いやね、町の顔役から聞いた話なんだけど、どうやら王子がクーデターを起こして王様が行方をくらましたってい話あったろ?

 どうやら王様側についた反乱の勢力が集まってるって噂でね。

 王都では国王派借狩りみたいなことが起きてるらしいよ。」


 私はその話を聞いて不安になった。

王都の教会は国王を支えていた親派であり、

私の育ての親であるオーランド神官長は反宰相といっても良い存在だった。


 私がフリューを追って王都を飛び出してしまって父様には迷惑をかけてしまったけど、今の状況はその頃とは次元が異なっている。


お父様が危険だ。

フリューの時みたいに後悔はしたくない。


私は、お父様を救出する道を選んだ。


私はリンに経緯を説明した。


「私はお父様を、王都にいるオーランド神官長を助けに行かねばならないの。

 リンはここに残ってフリューを待ちなさい。

 お願いよ。」


私がそういうと、リンは答えた。


「何を言ってるんですか?

 姉さんは王都に潜入してお父さんを救うんでしょ?

 今回の姉さんの作戦に私ほどの適任はいないじゃないですか。

 私はフリュー兄さん愛弟子の斥候スカウトですよ?

 もちろんついていきますよ。」


 リンは、さも当然のようにそう言ってくれた。

 フリューだったらリンを連れて行くかしら?

 私もフリューに置いて行かれて悲しかったから。


「ありがとうリン、それが仲間ってものよね。じゃあ私はリンを頼らせてもらうわよ。」


「任せて姉さん!」


そして私とリンは急遽ゴモラを出発した。



 私とリンは、私の愛馬『ブランシュ』で深夜に王都目指して駆けている。


「姉さん!」


「え、何?」


 全速で走る馬上のため、自然と大声での会話となった。


「深夜に、馬に強化魔法をかけて急ぐのは良い考えだと思うんですよ!」


「それで?」


「でもー、この馬が光輝くのはどうにかなりませんか?」


「仕方ないでしょ!神聖魔法はこういうものなの!

 それにね、、、光輝く方が信者のウケがいいの!」



その日、付近の村々では街道を疾走する馬の亡霊の目撃情報が多数確認された。



私たちは王都にたどり着き、秘密の抜け道を使って王都内に潜入した。


「ほらね、私を連れてきて正解でしょ。」


 この抜け道は暗部機関が街を出入りする際に使用するものらしく入り口は巧妙に偽装されていたがその偽装された扉を開くと馬車でも通れる地下通路につながっていた。


 私たちは深夜の街を馬を走らせ、郊外に向かった。

 お父様のいる教会は、街の外れにある小高い丘に建っていた。


 私たちがそこにたどり着いた時には、教会は王都の正規兵に包囲された状態で、教会の神官騎士が教会内に籠城しており一触即発の状態であり、物影に隠れて様子を窺った。


「姉さん、ぎりぎり何とか間に合ったみたいですね。」


 リンは気を使ってそう言ってくれたが、とても安心できる状態ではない。


 相手の兵力は、神官騎士の軽く5倍はいる。

 いかに士気が高い神官騎士であろうとも覆せる差ではなかった。


「またアレをするしかないか...

リン、馬に乗りなさい。」


そう言って私たちは騎乗すると、私は愛馬へ強化魔法と、私たち全体を囲むように、防御魔法をかけた。


「リン、しっかり私に掴まって、舌を噛まないようにね!突っ切るわよ!」


「ええええええ!!」


リンは、目を見開き驚愕していた。


私たちを載せた白馬は、光り輝きながら、全速力で王国兵の中に突入した。

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