第2話 餓死直前のおっさん
村田国芳、只今腹が空き過ぎてダンジョンの植物を食べています。
むしゃむしゃ……ゴホッゴホッ
あー、咽る咽るこんなの食べたら。
結局あの
否、戻れないのだ。
何故かは分からないしかしもしかしたらダンジョン内部の地形が変わってしまったのかもしれない。
幸い必要最低限のものは普段から持ち歩いているため困ることはないのだが長年暮らしてきたあのテントを手放すと思うと少し寂しさを感じた。
「まぁ、今は食料を探すことだな」
必要最低限のものは持ち歩いているものの食料は元々底を尽きてしまっている。
そろそろ何か腹に入れなければ空腹で倒れてしまうかもしれない。最悪の場合餓死で死んでしまう可能性もある。
「不味いから食べないようにしてたがやむを得ないな」
先ほど、その辺で拾った禍々しい色の茸を手に取ると思い切りかぶり付いた。見た目は勿論匂いも酷い。モソモソとした食感で生のままでは最悪だ。
うん……これを食うのはやっぱり無理だ諦めよう。
次に見つけたのは自然界ではあり得ない赤い色に染まった
味の方はというと……。
「す……っっぱ」
とてつもなく酸っぱい。食感は普通のぶどうと然程変わらないのだが、まるでレモンをそのまま噛っているようである。じゃあこっちの青い苺も……。
「にっっっが」
こちらはこちらでとてつもなく苦かった。顔を顰めさせながら何とか飲み込む。
ごほごほっ……どちらも到底人間の食べられるものでは無い。
「はぁ……せめて普通の食べ物でもいいから何かないのか」
ぐぅ〜〜
腹の虫も収まらないまま村田はめげずに歩き出す。
【ダンジョン内部最深部の拡張が終了しました。これよりダンジョン内にマナが注ぎ込まれます】
【警告警告、マナのスタンピードが発生しました。警告警告、最深部にて魔物の異常発生】
「何だこの"声"」
ゴゴゴゴゴ……
「今度は揺れか」
ぐらぐらと地面が揺れる。僅かな振動であったため天井が崩壊すると言った危険な事は無かった。
それにしても『魔物の異常発生』らしい。
よし、狩りに行こう。やっと食料が得られるチャンスだ。
◆◇◆
グワァァ!
ギエェェェ!
耳を
至るところから聞こえる魔獣の咆哮。
(間違いない鳥と熊だ――!)
”肉”まさしくそれが近くにあるという事を知った俺は全速力で魔物の大群の方へと向かう。
「すまないな悠長に倒している暇はないんだ」
グゴォォォォッ!!
突進してくる魔獣を【身体強化Ⅱ】で投げ飛ばす。
文字通り魔獣は宙に投げ飛ばされ地面に叩きつけられた。
――【威力強化Ⅱ】
ランチャーを担ぐと弾丸を連射する。
村田のスキルにより、一つ一つが大きな爆撃となって魔物の軍勢に襲いかかる。
ドンッドガンッ!!
強烈な爆風が生まれ、黒焦げとなった魔物のみがその場に積まれていた。
「お、いい感じに焼けたな」
体長二メートルほどの熊を担ぐと焚き火を作って豪快に焼き上げた。
丸焼きにされた熊肉を食べやすいように大ぶりに切り分けて口の中に放り込む。
「うわぁうめぇなぁ」
ここ数日何も食べていなかったせいか、はたまた変な植物を食べて苦い思いをしたからか……ほろりと涙が溢れてくる。
【報告報告、最深部の魔物の異常発生鎮圧されました】
「そういえばこの”声”何なんだ?おーい誰かいるのか?」
【村田国芳さんは”全てを知るもの”と通じる権利を持っています。権利を執行しますか?】
全てを知るもの?権利?よくわからないが特に悪いものでもないだろう。恐らく情報伝達システムと似た類のものだろうか?
「ああ――権利を使う」
【村田国芳さんが全てを知るものと通じました。個人間でのやり取りが可能になりました】
【はじめまして、”全てを知るもの”です。我々は村田様の疑問にお答えする役割を持っています。気軽にお声がけ下さい】
へぇ〜、グー◯ルの強化バージョン的なものかな?
「あ、えっと村田です。よろしくお願いします」
直接脳に声が聞こえてくるため何処にいるのかわからないがとりあえず頭を下げておく。
このときの俺にはこの”全てを知るもの”が俺の人生を大きく変えるなんてそんなこと微塵も知らなかった。
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