第5話  掃除

 守は今日も事業所へ行った。作業は草取りだ。多くの人が施設外で作業しており、本部には人がいなかった。守は新しく入った若い男性とペアを組み、草取りを始める。


 「ねえ、女性が欲しくないの?」

 「そうだね」

 守の背中は寂しげだった。


 これまで普通の女性に惚れられるような人間になろうと努力してきたが、厳しい現実に直面し、悲しくなることもある。

 しかし、守は臆病であるが、人を思いやる心があるため、悪いことと知りながら、一時的な快楽に身を任せることができない……。


 では、どうすればいいのか?


 守は時々道に迷い、途方に暮れる。その時はいつも寂しい気持ちになる。どうすればいいのか、守にはわからない。心が折れそうになる。


 その感情は人間の本能の一つだが、簡単には乗り越えられないものだった。守は思う、「じっとしていると、死にそうだ!」


 そうなると、守はとりあえず部屋を動き回り、不要なものを捨て始める。頭が混乱していると、部屋も乱雑になるからだ。


 道に迷ったら、守は部屋を整理し、不要なものを捨て、シンプルな空間を作ろうとする。そして、乱れた心を見つめ直す。

 整理したら、今までの資料を分別し、整理する。

 不要なデータは捨て、重要なデータは大切に保管する。道具は所定の位置に戻し、壊れたものは捨てる。欲しいものをノートに書き、重要度で分類する。


 今までの知識をリセットし、「無」の状態にする。新しい情報を取り入れ、新しいことに挑戦する。

 これにより、専門バカにならず、柔軟な思考が可能になる。守はこれまで、この方法で、思考を柔軟に保ってきた。常に考え続けることが、守の真骨頂だ。


 最後には根拠はないが、寝る前に「明日はうまくいく」と信じて眠る。

 朝になり、守が目覚めると、新しい一日が始まる。


 守の一日は誘惑との戦いだ。誘惑を退け、現在の生活にしがみつく。やがて、誘惑を退ける理由がわからなくなり、我慢の限界が近づく。


 そんな時、どうすればいいのか? 誰も守に納得いく答えを与えない。自分の考えで全てを決める権限もない。

 守はこの現実に何か方法があるはずだと信じ、悲しい運命に抗う。必死にもがく。守は頑張っている。でも、誰もそれを認めてはくれない。


 守は誰か自分を認めてくれる人を求め、新しい幸せを探しながら新津を彷徨う。

 それは6月の終わりが、近づいていた頃の話だった。。

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