11. 名探偵
「それにしても、綺麗な鳥だったね」
ミークがナックに解説を促すように語りかけた。ナックも興奮しながら応じる。
「あれは、幻の鳥、シャーダだ。渡り鳥で芽吹きの季節にどこからかニザの国にやってくると言われている。群れはつくらない。淡水の魚を好むと言われているけれど生息地、生態はよくわかっていない謎の鳥だ。愛鳥家の間でも目撃情報が少ない貴重な鳥だよ。幸運を呼ぶ鳥として
「すごいの見ちゃったね、私たち」
「ララは、ロールからいい贈り物をもらったね」
ノハはララの方を見ながら言うと、ララは思わず左胸の上を両手で抑え、生つばを飲み込んだ。
「ノハ、どういうこと?」
ロールとララ以外は、意味がわからない顔になる。
「ララがつけているブローチの鳥、シャーダっていうのね。みーせーてー!」
ノハは
「いいわ。ロールからもらったものみんなに見せてあげる」
上着のボタンを外して、中からブローチを取り出した。先ほど遠くから見えたシャーダがララの手の平で輝いていた。
「そっくり」
「綺麗」
口々に
「ノハはどうして、私がロールからもらったものが鳥のブローチで、そのブローチを付けてきたってわかったの? 私、今日つけてくること誰にも言っていなかったのよ」
「さっきの鳥さん、ララのこと見ていたでしょ。それに鳥さん見たときララとロールすごく驚いていたよね。初めて見たというより、似ていてびっくりした顔だったよ。それに、慌ててつけている場所押さえたよね。その場所にあるって、ララが教えたんだよ。ここにつけるとすると、ブローチかなって思ったの」
「すごいな。名探偵ノハだな」
ミークが感心している。
「でも、ララ姉さんこんな綺麗なブローチもらったのなら、なんで隠すの? これ本物の宝石と見分けがつかない位よく出来ている」
ナックがさらによく見ようとすると、ララは手で隠してバックの中へ仕舞ってしまった。
「これは、ナックがじろじろ見るものではないの」
「ケチ」
「トオサン、カアサンニ コノ ブローチ ノコト ゼッタイニ イッテハ ダメヨ」
ララとナックが外国語で姉弟
ロールもミークも
「わあ、こっちは真似っこしているよ」
ミークの右肩には、身体がエメラルド、口に細長く青いラインが入った片手に乗るぐらいの大きさの爬虫類が乗っかっていた。
「
ナックはララとの喧嘩も忘れ、興奮気味に身を乗り出して叫ぶ。ミークは、顔を真横に向け、驚いている。
「何―、鳥なの、爬虫類なの、どっち?」
ロールもララもナミもメレオを見て、目を丸くしている。いつからそこに乗っていたのだろう。目を閉じてじっとしていたけれど、みんなに注目されているのが分かったのか、目をパチッと開いた。シャーダとそっくりの黒光りした瞳が辺りを見回し忙しく動く。そしてもう一度目をぱちくりさせると、口で前足の付け根を触り始めた。
「このメレオ、さっき湖でみたシャーダのしぐさを真似している!」
「うん、毛づくろいしているみたいに見えるよ」
メレオから視線をそらすことが出来ない位、見入っているロールとナミの発言に続き、ナックが解説を始めた。
「メレオの擬態は色だけではないんだ。声や動きまで似せることが出来るといわれているよ。これは、シャーダの
メレオは前足を横に広げ、羽ばたく仕草をすると肩から腕の方へ降りはじめ、そのまま草藪の中へ入って行った。
ピュルッ、ピュルッ、ピュルッ
鳴き声はメレオが去った草藪からのようにも、一つ目の湖の方から聞こえたようにも感じた。
「ものまね大会で優勝できるね」
ミークは、幻の爬虫類が自分の肩に乗っかった喜びで、右肩をぐりぐり回している。メレオのお蔭で喧嘩していたことも忘れ、そのころには並べられたごちそうもすっかりみんなのお腹に収まっていた。
「まだ、湖一つしか見ていないよ。食べ終わったから次の湖へ行こう」
ロールがさっと立ち上がって片づけを始めるとみなもそれに従った。
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