10. 森探索に行こう
ナックとララがニザの国に来て早一年。ロール、ミーク、ナミ、ノハも一緒に六人で探検を兼ねて森のお主様へ報告にいくことになった。ノハはナミとララが一緒だというのでかなり興奮気味。特にララが来ると聞いて、ジョーやルーにララと森にいくことを盛んに自慢していた。
集合場所はノハの家の前。みんな集合時間よりずっと前に集合、さあ出発だ。森に入る道を歩きながら、ナックはロールとララともめている。
「ねえ、ロール、ララ姉さんに何あげたの?」
ロールもララもだんまりを決め込んでいる様子にナックが
「どうしたの? ナック」
「この間さ、ロールがララ姉さんにニザに引っ越してきて一年たったお祝いだって、プレゼント渡したんだよ。姉さんに見せてって言っても見せてくれないし、ロールに聞いてもララが言わないのに言えないって言うんだ」
ミークとナミは、最近ロールとララがお互いを意識しだしていることを薄々感づいていた。ナックはニザに引っ越してきたのはララだけじゃないのに、ロールはどうしてララにだけ贈り物をするのかがわからない様子。
「なあナック、このミークさまがナックの引っ越し一年祝い贈るから機嫌直せよ」
「私からもナックにプレゼントあげる」
ミークとナミが間を取り持ちその場を丸く収めようと
ノハは、ララが来た時から、ララの左胸のちょっと上に何かを感じ取っていた。森に入ると何かがすっと空にあがっていった。つられて見上げると何かが森の奥に飛んでいくのが見えた。
「ねえ、ロール。この先に行くと何があるの?」
ノハは何かが飛んで行った方を指さした。
「ああ、二つの小さい湖があるよ。行ってみようか」
早く話題を切り替えたいロールは湖を目指すことを提案する。
「ララ、私たちも湖見てみたいよね」
ナミも湖行きの提案に乗っかった。
「ナックはノハと一緒に後ろついて来て」
ミークはロールとララを先に行かせ、次にナミ、ミークが歩き、ナックを二人から遠ざける。
ノハが「この石、綺麗だね」と落ちている石をナックに見せると『歩く図鑑』と言われる彼はすぐに興味を石に移したようで、嬉々としてノハに解説をし始めた。
ナイス、ノハ!
「ララ、ここから足元がぬかるむから気を付けて」
「うん、キャアー」
ロールが振り向いて声をかけたそばからララは足を滑らせた。咄嗟にロールが手を伸ばすとララがその手に飛び込んでいった。
ミークはナミに小声で、話しかける。
「なんかいい感じだね、あの二人」
「うん、うん、ララ頑張れー」
二人はこっそりロールとララにエールを送った。
湖はとても幻想的だった。光の反射で水の表面が青から緑、藍から金色へと様々な色に変化する。水鳥が進むと水面の
また、ノハは何かを感じた。気配を追うと湖の水面まで伸ばしている枝に向かっていった。よく目を凝らすと一羽の鳥が葉と葉の間から静かにララを見つめていた。
ノハは人指し指を口に当て、口に出さないでの合図をしながら、小声で伝える。
「ララ、これから私が指で指す方をみて」
ララだけでなく、みんながノハに注目。口に当てた指をそっと水面上の枝の方に伸ばしていった。
「枝の先の方、よーく見て」
みんなが前かがみになり顔を枝の方に向けた。ララは真っ先に気が付いたようで、驚いた様子で手を口に当てた。ロールも鳥に気がついて口が開いたままになる。ミーク、ナミ、ナックも鳥を探し当てたようで口々に綺麗だと感激している。ナックは「幻の鳥だ。とつぶやいたきり言葉を失っていた。
エメラルドのラメがちりばめられたような羽を持ち、細長く青く光るくちばし、黒光りする目。鳥はしばらくその場所にいて、くちばしで羽を毛づくろいした後、大きく翼を広げ「ピュルッ、ピュルッ、ピュルッ」と鳴くと、湖の奥の方に飛んでいった。
みな息をするのを忘れていたのか、鳥が飛び立つと大きく肩を揺らして深呼吸を繰り返した。集中力が切れたかのように、足が重くなるのを感じる。ノハは、しゃがみ込み疲れましたアピール。
「あっちでお昼にしよう」
ロールが少し行ったところに平らな場所があることを伝え、みんなを先導していった。
シートを敷き、早速ララとナミ・ノハ家が用意した昼食を広げた。食べやすいサイズに切られたソーセージとポテトの串刺し、スモークサーモンのサラダ、ラズベリー入りソーダブレッド、アップルパイ、レモンティー。
ニザの国のノハのいる地区には海がない。そのため、ノハやミークの家では魚料理の頻度は低い。ララとナック以外はスモークサーモンを口にして、魚ってこんな味なのかと初めての味を楽しんでいる。お腹が満たされると先ほどの鳥の話題に移った。
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