第十三場。

  居住区。

  紙を手にエラムとアウローラが立っている。


エラム:この近くだと思うんだけどなぁ。

アウローラ:貸して。これ、たぶんあっちです。

エラム:え、そう? おかしいな。

アウローラ:ああ、ここです。でも、鍵が掛かっています。

エラム:そりゃ鍵は掛かってると思うけど、ちょっと、今開けようとした?

アウローラ:はい、この型の鍵なら、少しコツがいりますが、開きます。

エラム:開けちゃ駄目! 留守なんだよ。

アウローラ:なら、今のうちに入れば良いのではありませんか?

エラム:空き巣じゃ無いよ!

アウローラ:でも、エラムは生活に困った子どもで、働く能力も無いからここに来たんじゃ?

エラム:そうだけど、今困ってるのは君の扱いだよ。

アウローラ:私の処遇に悩んでいると?

エラム:どうにか家に帰してあげたいけど、手がかりが無いとどうしようも無いんだよなぁ。

アウローラ:あの、エラム。

エラム:どうしたの、アウローラ?

アウローラ:私は別に帰りたくありません。

エラム:え? どうして?

アウローラ:お父さんは帰ってこいと言いませんでした。

エラム:そりゃ、言わなくても帰ってくると思ってるからだよ。あんまり遅いと心配するよ。

アウローラ:それは、いつですか?

エラム:暗くなったら、じゃないかな。

アウローラ:暗くなったらどうして心配するんですか?

エラム:そりゃ、暗くなったら昼間見えてたものが見えなかったりして危ないでしょ?

アウローラ:それなら私、明かりが無くても本が読めるくらい目が良いですから大丈夫。

エラム:そ、それだけじゃ無いよ! 人の目が届かないから、怖い人が出てきたり、危険なことだってあるかも知れない。もしアウローラに何かあったらって思うと、心配するでしょ?

アウローラ:だったら、大丈夫です。

エラム:どうして?

アウローラ:エラムが一緒にいるからです。

エラム:……っく。

アウローラ:どうしました?

エラム:いや、何でも無い。

アウローラ:そう?

エラム:……僕、決めたよ。

アウローラ:何を?

エラム:君がちゃんと家に帰れるように、一緒に探すよ。

アウローラ:でも、夜が来たらどうするの? 怖い人が来て、危険なことがあったら?

エラム:僕が守る。

アウローラ:守る? エラムが?

エラム:ああ。何があっても君を守るよ。

アウローラ:生活に困っていて、働く力もなさそうな、エラムが?

エラム:うるさいな、それでも守るよ!

アウローラ:……それは、私がエラムのものだから?

エラム:違うよ。守りたいって思ったから。

アウローラ:エラム。

エラム:さぁ、行こう。のんびりしてたら夜になっちゃう。

アウローラ:私は夜が来ても平気です。

エラム:暗いところも見えるから?

アウローラ:エラムがいるからです。

エラム:うん!


  二人、歩き出す。


アウローラ:それで、どうするんです?

エラム:まずはうちに帰る。

アウローラ:エラムのお家ですか?

エラム:父さんが残してくれた物がまだあるから、しばらくは暮らしていける。その間に、アウローラのうちを探して、僕の仕事も探して……。


  二人、去る。

  マーチが走り込んでくる。


マーチ:ついたぞ、ここだ!


  カウアドリを担いだスレングが追って現れる。


スレング:おい、しっかりしろカウアドリ! お前に死なれちゃ仕事に張り合いが無くなっちまう!

カウアドリ:旦那、傷に響くからでかい声は、うっ!

スレング:す、すまない……。

マーチ:今、ヴィオラが医者呼びに行ってる、それまで耐えろよ。

カウアドリ:あいよ……。


  ヴィオラ、駆け込んでくる。


ヴィオラ:連れてきたわよ。


  ディクライン、入ってくる。


ディクライン:急患というのはここかね?

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