第4話 魔力測定

「お、終わった……………………。」



 学校に着いた時はまだ眠たそうだった太陽が、空のてっぺんで光り輝くころ、ようやく入学式が終わった。


(校長とか上級生とかからの話が、合計3時間あるとか聞いてないぞ…………。)


 校長の話は長いというのは、全世界共通だったとでもいうのか。いやむしろ、貴族という立場がある分、見栄とか様式美とかのせいで余計長かった気がする。あまりにも退屈なものだから、もう今すぐにでも自殺してやろうかと思った。

 おかげで腰はもうバッキバキで、下手に動けばボキィィッッと盛大な音を鳴らしそうである。だというのに、なぜ他の生徒たちはそんな涼しい顔をしているのか。訳が分からない。麻酔でも打ってきているんじゃなかろうか。



「皆様、入学式お疲れ様でございました。この後は、5人ずつ前に出てきてもらい、魔力測定をいたします。測定を終えた生徒から、自身の寮に向かってください。」


 噓だろ。また待たされるのか?


 まさかまた地獄の退屈☆おすわりタイムが待ち受けているというのか。新入生が何人いるのか知らないが、5人ずつとなれば自分の番まで長時間かかるというのは目に見えていた。なぜならわたしの名前のつづりは『Olivia』……つまり名前順に呼ばれるのであれば確実に後半になるからだ!!

 くそう。ふざけるなよ、こんなんなら『アリス』とか『アデル』とかイニシャルが『A』の名前に生まれておくんだった!!!



 ………と思ったが、呼ばれる順番は爵位と名前順なので、公爵家出身のわたしは案外早く呼ばれた。爵位制度ばんざい!!!!!(他の生徒には申し訳ないが)

 バッキバキになった腰をどうにか動かして講堂の前に行くと、人数分の水晶と、その前には一人ずつ担当の先生が控えていた。


 魔力測定は、専用の水晶に自身の魔力を流し込んで行われる。この世界に生まれてからは魔力など使ったことはないが、魔法少女時代の感覚を思い出せばいけるだろう。前の人達を見る限り、そんなに難しくなさそうだったし。


 というわけで、レッツゴー☆測定!!



(……ふむ、結果はまずまずといったところかな。)


 魔力を流し込み、黄金色に光る水晶を見て頷いた。

 測定では、光の強さが魔力量を、色が一番適した属性を示す。わたしは魔力量は平均ぐらい、属性は光だった。


(そういえば、先に測定していたあの縦ロールのご令嬢の魔力量はなかなかだったなあ。離れていても分かるくらい強かったし、小さく歓声もあがってた。ちょっぴり悔しいが、技術で勝負すればいいだけの話よ。なんせわたしは、魔法少女だからね!)



 そんな考えにふけっていたからだろうか。わたしは、担当の先生が「ひッ」という小さな悲鳴をあげるまで、水晶の異変に気がつかなかった。



「なに、これ……………。」


 見れば、さっきまで黄金色に輝いていた水晶は、中心部からじわりじわりと黒く染まっている。まるでこちらに迫ってきているように。



 まずい。


 そうわたしの直感が告げる。早く魔力の注入を止めなければ。このままだと、確実に何かまずいことが起きる。



 あれ、


 でも、



 魔力ってどうやって止めるんだ…………?

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